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大崎教授の海外駐在記「ジョモ・ケニヤッタ農工大学駐在記2(2)」

 昨年の5月より、駐在校の日本語クラスの上級者を対象に、日本語作文の添削を始めました。最初は、山形大学の大学院の入学試験を、日本語で受験したい、というベトナム国家農業大学の女子学生に対し、その学生の日本語学習の一助として、テーマを出して日本語作文を課し、添削して返していました。

 この添削は予想以上の効果があり、件のベトナム人学生は、N6からN1までの6段階ある日本語能力のN5(英検3級相当)が、半年でN2(英検準1級相当)まで向上し、昨年12月にあった大学院農学研究科の入学試験を、日本語で受験して、合格しました。

 この添削作業は、添削する方にとっても、楽しい経験をさせてくれます。平素の交流ではなかなか知りえない、その国の諸々の制度や習慣、文化や考え方を、20歳前後の若い感性を通して、知りえる面白さです。文化人類学的な知的な面白さを提供してくれます。現在、少しずつ手を広げ、山形大学内に添削の協力者を増やしながら(5人)、ベトナム、インドネシア、ラトビアで行っています。今回、ケニアでも、上級者に声を掛けてみました。

 ケニアは、大学は3期制で、2期続けて出席すると、3期目はロングバケーションとなります。つまり、1月、5月、9月に入学式があり、多くの学生は、大学構内の学生寮に住んでいますが、2期を過ごすと、ロングバケーションのため、退寮して学外に去る必要があります。この4カ月の休暇は、持続的な日本語学習の意欲を削ぐようです。

 したがって、毎年やって来る4カ月の断絶を乗り越えて、日本語学習の上級者となっている学生に、私は敬意を感じます。今年は10人の学生が、上級者として残っていました。

 日本語クラスで添削の件を切り出した時、学生達は、皆、戸惑いました。私は、パソコンの内臓プログラムのワードを用いて日本語作文を書き、イーメイルの添付書類で送るようにと言いました。皆は、自分たちのパソコンは日本製ではないから、日本語を書くのは無理だ、と応えました。

 私もどうしたら良いか分からずに、その時は引き下がり、学内にオフィスを構えている、山形大学OBで、元東京JICA所長の大竹祐二さんに問い合わせてみました。大竹さんは日本に帰省中でしたが、すぐに、日本語の書き込みは可能だ、と連絡してきました。

 そこで、翌日のクラスで、日本語の書き込みは可能だそうだ、と伝えると、そのまた翌日のクラスで、昨年の山形での国際サマープログラムに参加したキマニ君が、パソコンで日本語を書くことができた、と報告しました。

 彼はパソコンを出して、皆の前で、日本語の書き込みを実演して見せたのですが、彼を取り巻く上級者たちの興奮は異様でした。ローマ字で日本語を打ち込むと、平仮名や片仮名だけではなく、漢字にも変換されることを知り、歓声を上げ、「素晴らしい」「凄い」「驚いた」と異口同音に叫びました。居合わせた30人ばかりの初級者も集まって来て、文明の利器に初めて接したような騒ぎになりました。

 最初のテーマは「母について」でした。キマニ君は、「私の母は世界一素晴らしい母です。」と書き、二人目のホープさんは、「母は私の手本です。」と締めくくっていました。

日本語の上級クラス。の画像
日本語の上級クラス。

上を向いて歩こう、を歌っているところ。の画像
上を向いて歩こう、を歌っているところ。