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大崎教授の海外駐在記「ペルー駐在記(6)」

 ラモリーナ農業大学での最初のセミナーは、120分間を用意されていました。この長時間をこなすために、詳細を極めたパワーポイントを英語で用意して臨みましたが、大きな思惑違いがありました。英語がほとんど通じないからと、スペイン語の通訳がついたのです。実質2倍の時間がかかるので、どう内容をはしょるか、苦労しました。

 延辺大学でも、同様の事がありました。ポワーポイントを英語で用意したセミナーだったのですが、「日本語でやってくれ、中国語に訳すから」と言われました。ハノイ農業大学でも、ベトナム語で要約と解説が入りました。したがって、こちらが積極的に売り込まない限り、セミナーの依頼はなかなかやってきません。一方、英語が公用語のケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大学では、こちらが断りたいほど、セミナーの依頼がありました。

 国際交流は言葉が通じないと、通り一遍のセレモニーで終わってしまいます。私も英語は得意ではありません。主要な論文誌は英語だけ、という分野を専攻してしまったので、否応なく英語世界に組み込まれ、後悔先に立たずの思いのまま、今に至っています。

 ところが、カトリカ大学は、スペイン語世界なのに。良く英語が通じます。不思議に思い、聞いてみました。大学の方針として、英語のできる国際人を養成する、ということで、入学試験に英語力を重視するのと、3年次への進級試験に、リポートを英語で書けるかどうかを問うそうで、その英語力がないと、進級を認めないそうです。

 ペルーには大学は約100校ありますが、カトリカ大学はその頂点にあり、皆の憧れだそうです。ペルーの学制は、小学校が6年、中等学校が5年、そして大学が5年です。したがって、カトリカ大学への進学率を競う私立の小中一貫校は英語教育に重点を置き、鉄は熱いうちに打てと、小学校の授業は英語だけで行い、中等学校の高学年で次第にスペイン語での授業を増やしているそうです。

 カトリカ大学の、山形大学提供日本語クラスのルイス君は、公立学校からの入学生で、中等学校時代に、カトリカ大学が経営する有料の英語学校に2年間通い、入学後も2年間通って3年に進学できたそうです。その外国語学校は大学に隣接した5階建てのビルで、夜遅くまで沢山の学生が出入りしています。カトリカ大学はリマ市の中心部にも外国語学校を持っています。さらに大学構内の隅にある3階建てのビルは、カトリカ大学が経営する予備校で、入学希望者は、この予備校と語学学校に通って、受験準備をするそうです。

 一方のラモリーナ農業大学の難易度は全国4位だそうで、やはり秀才たちを集めています。にもかかわらず、セミナーを英語ですれば、分かる人は、先生をも含めてあまりいないのではないかと、アメリカの大学を経て、ラモリーナの大学院で薬草学を学んでいる日本人女子学生が言っていました。授業では英語の文献が頻繁に渡されるが、学生たちはグーグルで翻訳した変なスペイン語で勉強していますよ、と笑っていました。

 しかし、英語の得意なカトリカ大生も、英語を話す実践の機会はほとんどないそうで、山形大学が提供する日本語クラスの魅力は、英語の実践の場でもあるからだそうです。この状況は、ハノイ農業大学の日本語クラスによく似ています。

カトリカ大学経営の語学学校の画像
カトリカ大学経営の語学学校

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カトリカ大学経営の予備校