山形大学2020年度アニュアルレポート
SDGs03

TOPICS 02

世界に誇る最先端の重粒子線がん治療を開始

-山形が誇る地域医療のシンボルとして-

東北・北海道で初となる

重粒子線によるがん治療施設の開設

 令和3年2月25日、山形大学医学部東日本重粒子センターで重粒子線(炭素イオン線)による治療を開始しました。重粒子線治療は放射線治療の一つで、粒子線治療に分類されます。東北・北海道には粒子線治療施設が4施設ありますが、いずれも陽子線による治療施設であり、重粒子線による治療は東北・北海道地区では東日本重粒子センターが初めてとなります。

山形大学医学部東日本重粒子センター
山形大学医学部東日本重粒子センター
回転ガントリー照射室
固定照射室
加速器室

 東日本重粒子センターの特長の一つは、「重粒子治療装置のある治療棟をコンパクトにしたことにより、総合病院と接続した」ことです。「省エネルギー、省スペース・小型化、運転管理の容易化、廃棄物ゼロ」を目標として掲げ、特に省スペースについては、地下に加速器、上階に治療スペースを配置したキューブ型の建物にすることで、建屋45m四方という設置面積を達成しました。従来、重粒子線の治療施設はサッカー場ほどの面積を必要としましたが、東日本重粒子センターは世界最小を実現し、「山形モデル」と言われるほど治療施設をコンパクトにしたことで、敷地内での治療棟の建設が可能となり、世界で唯一、総合病院と接続しています。
 二つ目の特長は、世界で3台目となる回転ガントリーの導入です。東日本重粒子センターには「固定照射室」と「回転ガントリー照射室」の2室があります。固定照射は水平方向からの照射ですが、回転ガントリーは360度あらゆる角度からビーム照射ができるため、患者さんは治療台の上で仰向けのまま、向きを変えることなく楽な姿勢で治療を受けられます。また、照射方法も世界最高性能の「3Dペンシルビームスキャニング法」を採用し、安全で効果的な治療と省エネルギー性能を実現しました。
 三つ目の特長は、医療ITネットワークを用いて、国内初となる広域連携システムを構築したことです。東北6県のほか、新潟県、千葉県など60以上の基幹病院と連携したことにより、遠方の患者さんも最寄りの病院で治療相談ができることになりました。
 本学医学部における重粒子線治療については、地元山形県や山形市をはじめとする35市町村、東北経済連合会、地元企業や個人の方々など多くの支援や声援をいただき、構想から15年の歳月を経て実現しました。患者さんの治療はもとより、教育、研究、地域振興など常に使命感を持って治療に当たってまいります。

当該活動に関する2020年度事業費

山形大学医学部
東日本重粒子センターHP

https://www.id.yamagata-u.ac.jp/nhpb
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