ささえるひと #02

江口順子&山田志津子

野菜不足の心配から恋愛相談まで
愛情豊かな山形のお母さんたち。

2018.08.15

野菜不足の心配から恋愛相談まで愛情豊かな山形のお母さんたち。

小白川キャンパスの大学会館1階と3階には生協の学食があり、昼食時ともなると学生や教職員で大変に混み合う。1階食堂「テール」でレジを担当する江口順子さんと、3階食堂「ポム」で調理を担当する山田志津子さんは、学生たちの“山形のお母さん”的存在。栄養面のサポートから恋愛相談まで、何でもおまかせの2人に注目した。

よく学び、よく遊び、よく食べて
大学生活を食と笑顔で支える。

 1階食堂「テール」は、ご飯やみそ汁、肉や野菜などの主菜、副菜、丼もの、デザート、飲み物など、豊富なメニューの中からカウンターで注文し、その場で受け取ってレジで精算するシステム。そのレジを超スピーディに操作しているのが、勤続26年目に入った大ベテランの江口順子さん。お昼休みが限られている学生たちに少しでも早く、一人でも多く昼食を提供したいとの思いからどんどんレジ捌きがスピードアップしていったという。「ほんとうは、もっと丁寧に接客したいし、会話を交わしたりしたいんですよ。でも、学生さんの昼休みは短いのでどうしてもスピード重視。学生さんにいやな感じを与えているのではないかと不安になる時があります」と、優しい人柄をのぞかせる。
 一方、3階にある食堂「ポム」は、ラーメンやうどんなどの麺類と、好きな惣菜を好きなだけとって重さ分の料金を支払うビュッフェ形式。量を自分で調整できるビュッフェは、少食の女子からモリモリ食べたい体育会系男子まで、どんな胃袋にもちょうどいい。11:30〜13:30の2時間だけの営業ながらこちらもピーク時には大盛況となる。ここで主に麺類を担当しているのが山田志津子さん。麺を茹でるために常にお湯が沸騰している厨房は、特に夏場は暑く大変な環境。それでも笑顔で学生の注文に応え、手際よくラーメンやうどんを仕上げて提供している。

江口さんのレジ捌き

昼休み、少しでも早く食事を提供したい一心で、江口さんのレジ捌きは驚くほどスピーディ。でも、ピークが過ぎて少し落ち着くと、こんな風に学生と笑顔で言葉を交わす余裕も。

大学会館1階「テール」

「テール」の入り口にはメニューディスプレイが常設。定番メニューに加え、野菜の日や還元セール、フェアなど企画メニューも充実。毎日でも飽きずにおいしく食べられる。

大学会館1階「テール」注文カウンター

汁物や丼ものなど温かい料理は、その場で注文し、目の前で盛り付けてもらって受け取る。サラダや小鉢などは自由に選んでトレイに載せて、そのまま江口さんの待つレジへ。

理想の働き方できた子育て時代、
今では学生みんなの親の心持ち。

 25年前の春に江口さんが入協し、同じ年の秋に山田さんが入協。ほぼ同期の2人は、それまではともに専業主婦で、子どもが小学校、あるいは保育園に入るタイミングで仕事をはじめた。大学が自宅から近かったこと、そして、大学の長期休暇中は仕事も休みになるため、まだ子育て中だった2人にとっては夏休みや冬休みを子どもたちと一緒に過ごせるという点でも理想の職場だった。当初は、自分の子どもよりもずっと大きい学生たちに「おばさん」と呼ばれることに抵抗があったという山田さんも、今では自分の子どもたちも成長し、学生たちと我が子がオーバーラップ。親元を離れて暮らす子どもの栄養状態を心配する親心は痛いほどわかるから「今は、山形のお母さんになれたらいいなぁと思っています」と、山田さん。まったく同じ気持ちなのだろう、この言葉に大きく頷く江口さん。
 25年間、学食で学生たちと接してきた2人の目に、学生たちの変化はどう映っているのだろうか。「基本、変わっていないと思います。山大生は、本当に優しく正直な子が多いです。変わったと言えば、女の子がきれいになって、大学全体が華やかになりましたね」と、2人とも同意見。

麺を茹でる山田さん

お客様から注文を受けて、麺を茹ではじめる山田さん。夏場の厨房は想像以上に暑く、昼時はまさに目が回る忙しさ。それでも学生の前では満面の笑み。

大学会館3階「ポム」

昼間の2時間だけの営業、しかも3階という立地もあり、ちょっと穴場感のある「ポム」だが、座席数が少ないため12時前後はこちらも満席に。少し時間をずらしての利用がおすすめ。

ビュッフェスタイルの「ポム」

ビュッフェスタイルの「ポム」は、食欲旺盛な体育会系男子学生の利用も多い。気さくな山田さんの言葉に学生も表情を緩める。写真右は、夏限定の人気メニュー、冷やし担々麺。

栄養も交流もバランスよく、
学生の気持ちも満たす生協食堂。

 山形の母たちが心配するのは、やはり、親元を離れて暮らす学生たちの栄養状態。おかずは揚げ物だけ、カレーだけ、そんな学生にはついつい「3食どこかで野菜を食べてね」と声をかけてしまうという。コンビニもファミレスもあり、食べることには不自由しない時代ではあるが、栄養のバランスまで気遣ってくれるのは学食ならでは。特に、1階のテールは手軽に野菜が摂れる小鉢が充実しており、“カルシウム不足にはこの小鉢”そんな一言メモもありがたい。さらに、「朝ごはん、ちゃんと食べてね」と、10年ほど前から朝食のサービスも行っている。授業がない日も朝ごはんを食べるためだけに大学に来る学生もいるほど、おいしさ、栄養、価格、アットホームな雰囲気、さまざまな点で学生たちの胃袋とハートをがっちり掴んでいる。
 学食は、もちろん胃袋を満たす場ではあるが、プラスαの要素として、交流の場でもある。学生同士、または学生と教員、そして時には学食のおばちゃんと、「食」を真ん中に、さまざまな世代、立場の人とコミュニケーションを図ることで仲良くなれたり、人間力が磨かれたりする機会がある。そんな学食は、身体の栄養面はもとより、心の栄養にもいいこといろいろ。最初は一人で黙々と食事をしていた学生が、友達と一緒に来るようになって笑顔になった、そんな学生たちの明るい変化を我が子のことのように喜ぶ江口さんと山田さんのいる学食。離れて暮らす我が子の心と体の栄養を気遣う親御さんにも、安心してもらえる環境が整っている。

生協学食スタッフからの
メッセージ

えぐちじゅんこ

えぐちじゅんこ●山形県出身。生協学食1階「テール」のレジを担当して25年の大ベテラン。昼食時間をよりスムーズにとの思いから超高速レジ打ちで学生たちをサポートする。

やまだしづこ

やまだしづこ●山形県出身。生協学食3階、麺類&ビュッフェ「ポム」で調理等を担当。勤続25年目、同じ大学生の子をもつ母として学生たちの栄養面を気づかい声掛けを行っている。

※内容や所属等は2018年当時のものです。

他の記事も読む