ささえるひと #04

松坂暢浩&山本美奈子

就職支援につながるキャリア教育、
職業体験プログラムが全国モデルに。

2019.08.15

就職支援につながるキャリア教育、職業体験プログラムが全国モデルに。

3・4年生からの就職活動に自信を持って臨めるようにと、松坂暢浩准教授と山本美奈子准教授が1年生向けに行っているキャリア教育が成果を上げている。主なプログラムは、全学部1年生の約7割が履修する人気講座「キャリアデザイン」。地元中小企業に絞った「プレインターンシップ」。特に、低学年・地域連携型のプレインターンシップは、文部科学省から高く評価され、第1回「大学等におけるインターンシップ表彰」で最優秀賞を受賞した。

1年生からのキャリア教育は、
充実した大学生活のきっかけに。

 2011年に着任した松坂先生の専門は、経営学やキャリア開発。株式会社リクルートで就職支援に携わってきた経歴も生かしつつ、学生たちの就職活動を強力にサポートしている。その中で、就職活動を控えた3・4年生のタイミングで就職支援を始めるのでは遅いと感じていた。より早い時期から、働くとはどういうことかを考え、どこにどんな企業があるのかを知る機会があれば、幅広い視点に立って進路選択ができるのではないだろうかと考えたのだ。そこから逆算すると、1年生からのキャリア教育が望ましいため、2013年度からキャリアデザインの授業をスタートさせた。開講当初は履修生50人程度と少なかったが、先輩から後輩への口コミもあり年々増加。今や全学部1年生の約7割、前期・後期併せると2,000人以上が履修する人気授業となっている。
 200〜300人収容の大教室での授業は座学になりがちだが、学生の関心のあるテーマを設定し、学生一人ひとりが自分で考え、グループワークを通して共有することで、コミュニケーションスキルがアップし、自信が持てるようになる。また、大学に入学し、生活環境が変化して戸惑うことの多い1年生が大学生活に適応していく上でも有効に作用している。

キャリアデザインの授業風景

キャリアデザインの授業風景キャリアデザインの授業は、1年生の約7割の学生が履修する人気授業。200〜300人の学生を対象に授業をする山本先生と、グループワーク中にアドバイスをする松坂先生。松坂先生は、本学で基盤共通教育「ベストティーチャー賞」を4回受賞している。

1年生向けプレインターンシップ

1年生向けプレインターンシップ1年生の時に“働く”を実体験。働くことをイメージしやすくするとともに、山形の中小企業の魅力を知ることで進路の選択肢を増やし、3・4年生での就職活動の充実につなげる。

進路・就職ガイダンスの様子

進路・就職ガイダンス3年生が対象の進路・就職ガイダンスは、学生が求める必要な情報と親身な支援が好評で、参加者は年々増加。その多くが1年生でキャリアデザインの授業を履修している。

キャリアデザインの授業履修の効果を示した円グラフ

キャリアデザインの授業履修の効果アンケート調査では、ほとんどの学生が自身の成長を実感していると回答。「自分の長所が見つかった」「自分をポジティブに捉えられるようになった」などの声も多く聞かれた。

インターンシップで全国最優秀賞
「山形モデル」の確立を目指す。

 本学キャリア教育のもう一つの大きな特徴が、2014年度から実施している1年生向けのプレインターンシップ。山形県中小企業家同友会との連携により、早い時期から地域の中小企業を知る機会を提供し、将来どのように働くかを考え、今後どのように学んでいくかに結びつけることを狙いとしている。本プログラムは、早期にキャリア意識を高めていることや、受け入れ先を地元中小企業に絞り、中小企業の理解促進につなげていること、また、参加学生のキャリア意識等の変化を追跡調査し、効果を検証している点が評価され、文部科学省がインターンシップの充実に向けて2017年度に創設した表彰制度で最優秀賞に選出され、全国1位となった。
 授業の取り組みを追跡調査し、効果の検証に関しては、2017年に着任したキャリア心理学が専門の山本先生が大きな役割を担っている。松坂先生は、インタビューベースで学生の満足度をヒアリングした結果を効果と捉えていたが、山本先生は科学的な検証が必要だと提案。調査・分析・研究を行い、論文として発表して評価を受けて、その結果を授業にフィードバックしている。将来的には、大学と企業の連携によるキャリア教育を他大学でも再現可能な「山形モデル」として確立できれば、と研究を進めている。そんな中、松坂先生は全国の大学や企業、行政などから多くの講演依頼が相次いでいる。

表彰式にて受賞の喜びを分かち合う、松坂先生と松岡理事

低学年・地域連携型のインターンシップが文部科学省から高く評価され、最優秀賞(全国1位)を獲得。表彰式にて受賞の喜びを分かち合う松坂先生と山形県中小企業家同友会松岡理事。

学生が納得できる進路選択を。
地元に優秀な人材を多く残す。

 本学では、より良い就職支援へと橋渡しをするために1年生からキャリア教育に力を入れていることを紹介してきたが、他大学との最も大きな違いは、キャリア教育から就職支援まで、一貫して同じ教員が担当していること。松坂先生と山本先生が1年生から関わり続けることで、就職活動の時期を迎えた3・4年生には安心感がある。1年生の時にキャリアデザインやプレインターンシップを履修した学生は、3年生でインターンシップに参加し、就職ガイダンスや説明会への参加率が非常に高い。先生方は年間30〜40社の企業訪問を行い、山形には技術力が高く、世界に誇る会社や熱い想いを持った経営者が多いことも知っている。こうした地道な努力が学生たちに伝わり、山形県外出身の学生が県内の企業への就職を希望するケースも増えており、地元に優秀な人材を輩出するという地方国立大学の使命を果たしている。

やりたいこと・知っていること・知らないことの関係性の図

自分がやりたいことを見つけるために知っていることが増えないとやりたいことは見つからない。インターンシップや企業研究で知らなかったことを知り、選択肢を増やすことがキャリア教育の狙いの一つ。

まつざかのぶひろ

まつざかのぶひろ●准教授/専門は経営学やキャリア開発。東北大学経済学研究科修士課程修了。株式会社リクルートを経て2011年本学着任。担当する「キャリアデザイン」は人気授業。ベストティーチャー賞を4回受賞。

やまもとみなこ

やまもとみなこ●准教授/専門はキャリア心理学。筑波大学人間総合科学研究科博士課程修了。2017年本学着任。キャリア教育の授業を担当すると共に、その効果を分析・検証し、プログラムの充実を図っている。

※内容や所属等は2019年当時のものです。

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