ささえるひと #18

村山秀樹

新副学長が語る 山形大学の未来。
国際交流を推進、可能性広げる。

2024.09.30

新副学長が語る 山形大学の未来。国際交流を推進、可能性広げる。

 本学は2024年、創立75周年を迎える。将来ビジョンに「つなぐちから。山形大学」を掲げ、さらなる発展に向けて理事・副学長といった経営陣の働きに注目が集まる。宮内健二理事(2024年9月15日に本サイトで公開)からスタートした4人の新理事・新副学長へのインタビュー企画。2人目は村山秀樹副学長が登場。副学長としての担当業務の他、研究者として長年取り組んできたこと、4年間学部長を務めた農学部の今とこれから、最後にはプライベートについても、熱く語って下さった。

日本人学生の留学を後押し、
留学生の受け入れも強化。

 本学農学部の教授でもある村山副学長は、2024年4月に国際交流担当の副学長に就任。任期は2年。まずは外国人留学生の受け入れ環境を向上させる。目指すは「国籍に縛られない交流が日常化しているキャンパス」だ。18歳以下の人口が減り、全国的に大学の志願倍率は下がっている。外国人留学生に本学を選んでもらうことは、こうした問題の対策にもなる。
 「最先端の研究で功績を挙げている工学部、すでに多くの外国人留学生を受け入れている農学部など、海外にアピールしたい部分はたくさんあります」
 外国人留学生はアフリカを中心に、ヨーロッパや中南米からも訪れている。JICA(ジャイカ)のサポートを受けている留学生も少なくない。イスラム圏の留学生が増え、本学の学食にはハラール食を用意。彼らが孤立しないように、交流の機会を増やす考えだ。
 2024年7月現在、村山副学長の研究室には日本人学生4人の他、インドネシア人3人、タイ人1人の留学生が在籍している。「日本人学生も日本にいながら国際感覚を磨ける良い環境」と紹介する。

村山副学長の研究室に在籍する留学生が、副学長就任を祝ってくれた際の記念撮影。日本人には馴染みが薄い各国の料理でサプライズ。留学生と日本人学生は英語などでコミュニケーションを取っている。

 留学生の受け入れ強化のため、「ダブル・ディグリー・プログラム」の推進が急務だ。日本と海外、両方の大学の学位(修士)を取得できる制度だが、本学では2024年現在、大学院農学研究科のみで対応。他の学部にも導入する準備を進めている。
 一方で、海外へ留学を希望する日本人学生も後押しする。現在、人文社会科学部や地域教育文化学部の学生は台湾の台湾師範大学へ、理学部や農学部の学生はインドネシアのガジャマダ大学への留学が活発だ。
 本学の学生大使派遣プログラムも、留学をサポートするもの。インドネシア、中国、モンゴル、ラトビア、ベトナム、ケニア、ペルーの世界7カ所に拠点を設け、学生が2週間ずつ滞在する。同プログラムを活用した学生は、2018年度は年間105人だったが、コロナ禍で激減。コロナ禍が明けた2023年度は45人、2024年度前期は円安の影響もあってか15人にとどまる。

学生大使派遣プログラムを活用した2週間の留学で、日本人学生は異文化に触れ、貴重な経験ができる。コロナ禍や円安の影響もあってか、留学を希望する日本人学生は減少傾向にあるが、村山副学長は「留学の魅力を伝えたい」と話す。

 村山副学長自身も学生時代はイタリアへ留学し、果物の研究に励んだ。「海外では学生が自発的に行動するのが当たり前。異なる文化や考えの人と交流を深め、興味関心を広げられます」と自身の体験からも、海外で経験を積む重要性を説く。

卒業生とのつながりを強固に。
ドネーション文化にも着目。

 村山副学長は特命事項として校友会、山形大学基金も担当している。校友会は現役の学生、卒業生、退職者を含む役員・教職員らが会員となり、本学の運営を支える組織。「大学から卒業生にOB訪問などの受け入れを呼び掛け、現役生の就職活動をサポートできれば」と話し、卒業生とのつながりを強固にしたいと考えている。
 2016年に創設された「山形大学基金」は、経済的に修学困難な学生や課外活動の支援、キャンパス環境の改善などに活用する寄付金制度。コロナ禍は学費の支払いが困難になった学生を助けた。
 村山副学長が着目しているのが、アメリカで根付いているドネーション(寄付)文化だ。事業で利益を出した経営者などが、母校に儲け分を寄付する仕組みで、「これからの時代、国公立大学にとっても、寄付金は重要な収入源」と強調する。「山形県内外で活躍している卒業生の皆さまに、学校運営への支援や協力をしていただけたら」と呼び掛ける。
 寄付金は国際交流にも役立てたいと考えている。2023年度は本学から170人の日本人学生が海外留学し、27カ国から計148人の外国人留学生を受け入れた。こうした留学の支援のためにも寄付金を増やしたい。

6学部を有する本学は、キャンパスが4つ(小白川、飯田、米沢、鶴岡)に分散している。村山副学長は教授として鶴岡に、副学長として小白川に勤務している。

青果保蔵の研究で実績残す。
農山村の再生にも取り組む。

 村山副学長は、研究者としては、本学でサクランボとラ・フランスの青果保蔵の研究に取り組んでいる。青果保蔵とは、農産物の鮮度保持技術など。長期貯蔵を可能にする特殊なフィルムを開発し、今ではサクランボに限らず実用化されている。
 ラ・フランスに関しては、食味向上のメカニズムを解明。ペクチンの含有量などを調査し、追熟してとろけるような口当たりになる過程を明らかにした。

海外を訪問した際は「現地のマーケットに立ち寄るのが好き」という村山副学長。やはり研究テーマでもあるサクランボには自然と目が留まる。写真はルーマニアのマーケットで撮影したサクランボ。

村山副学長は山形県の特産品でもあるラ・フランスをはじめ、セイヨウナシも研究している。写真左の赤いセイヨウナシは上山市とブランド化に取り組んでいる品種だ。

 村山副学長は2023年度まで農学部長として、本学アグリフードシステム先端研究センター「YAAS(ヤース)」で「食の10次産業化」の推進にも関わってきた。2016年に始まったスマート・テロワールプロジェクトで、農作物を地場で消費しようというもの。1次産業(生産)に2次産業(加工)、3次産業(販売)を掛け合わせた「食の6次産業化」に、4次産業(知識集約)を足して10次産業化を図るのが大きな目的だ。
 本学農学部は当面、このYAASと、2024年度に鶴岡キャンパスに開設した農山村の再生を目指す「農山村リジェネレーション共創研究センター」を二枚看板に研究を進める。新たな視点からの土地利用・活用方法を検討し、森林資源の最大活用や野生動物管理の革新による農山村の再生に取り組む。YAASも農山村リジェネレーション共創研究センターも、現在はバーチャルの組織。2つのプロジェクトを合わせ、将来的にはリアルなセンターの開設を視野に入れる。
 「学部の壁にとらわれず、幅広い研究をできるのが本学の強み。個々で世界と渡り合える優秀な先生がそろっていますが、山形大学という団体で世界に勝負していきたいと考えています」

村山副学長の休日の過ごし方は? 「神社仏閣が好きで、御朱印帳を持っています。四国八十八ヶ所は4年かけて巡っています」と笑顔を見せる。写真は四国八十八ヶ所の際に撮影したもの。

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むらやまひでき

むらやまひでき●副学長(国際交流担当)/京都大学大学院農学研究科修了。専門は農産物生理化学。研究テーマは農産物の鮮度保持技術の開発、農産物の収穫後生理に関する研究。2009年4月より本学農学部教授、2020年4月より農学部長、2024年4月より現職。山形県天童市出身。

※内容や所属等は2024年7月当時のものです。

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