ささえるひと #12

矢口敦則

大学時代が人生のバックボーン。
母校と後輩を思い、理事に就任。

2021.07.30

大学時代が人生のバックボーン。母校と後輩を思い、理事に就任。

2021年度に「山形大学校友会」の新理事に就任した矢口敦則さんは、父親が山形青年師範学校卒業で、ご本人は工学部を卒業。そして今春、娘さんが理学部に入学したことで親子三代山形大生となり、卒業生兼保護者として、現在在住の首都圏での活動を中心に母校を盛り上げていく。自身の楽しかった大学時代を振り返り、後輩たちにも充実した大学生活をと、さまざまな形で支援を行なっている。

大学での学びを生かし研究職へ
卒業後も恩師との絆は途絶えず。

 高校生になって理系科目に興味を持ち始めた矢口さんは、本学工学部を卒業した叔父の影響もあって同じ工学部に進学。1年次には小白川キャンパスで教養科目を意欲的に学び、2年次からは米沢キャンパスで高分子化学科の物性を研究する講座を専攻。恩師増子先生の薦めもあって修士課程では無機高分子材料の研究に取り組み、合成、物性、構造解析と幅広い実験を行う機会に恵まれた。卒業後は、研究職として企業に就職し、新規化学物質の開発を担当することになり、大学での経験が大いに役に立ったという。研究で悩んだり行き詰まったりすると増子先生や他の先生方にアドバイスを求めるなど、本学との縁が途切れることはなかった。工学部の同窓会である米沢工業会の首都圏での集まりには積極的に参加し、数年前からは運営のサポートも行なっている。
 「山形大学校友会」は、大学の発展に寄与することを目的に2006年12月に設立された組織で、会員は学生や卒業生をはじめ、役員・教職員および山形大学の趣旨に賛同してくださる方々。会長である玉手英利学長を中心に、学生の修学や課外活動支援、大学と保護者の連携支援、大学の運営支援など、さまざまな事業を展開している。これまでもOBとして母校の発展に貢献してきた矢口さんは、理事としてまさに適任と言えよう。

写真右が矢口さん。

高分子化学科の物性を研究する講座に入り、その後、恩師である増子先生の薦めにより無機の高分子材料の研究に邁進。1984年頃、研究室で実験中のひとコマ。写真右が矢口さん。

矢口さんの在学中に米国から帰国された増子先生。

矢口さんの在学中に米国から帰国された増子先生。1984年頃、工学部米沢キャンパスを訪れた米国の研究者を囲んで。増子先生そして研究室のメンバーとともに。

鮮明に甦るかずかずの思い出、
自然に親しむ会の活動と仲間。

 矢口さんが理事を引き受けた背景には、自身の充実した大学生活がある。今でも交流が続く恩師との出会い、専攻した無機高分子について昼夜を問わず実験に没頭できた日々、そして「自然に親しむ会」でのサークル活動。とりわけ、大学時代の前半は、自然に親しむ会抜きには語れないというほど楽しい記憶に満ち溢れている。周りを山に囲まれた山形で生まれ育ち、四季の変化を愛し、父親の影響もあって以前から山登りに憧れていた矢口さんは、部室を訪れてすぐに入会を決めた。血気盛んな若者たちはかなりハードな山行にも挑んだようだが、圧巻は2年次の富山県での夏合宿。早月尾根から剣岳を登り、白馬岳を経て糸魚川まで登行するコースで、3,000m級の岩場を登った後600mまで下り、さらに3,000m級を登り返し、そのまま日本海まで下り泳ぐという強行軍の計画だった。
 その後は、授業が忙しくなり、サークル行事への参加は難しくなったが、単独あるいは数名で吾妻連峰をはじめ、朝日連峰、早池峰、谷川岳などには通い続けた。さらに、就職してからもひとりで東京や山梨の低山を巡ったり、社内旅行で富士登山を企画したり、職場の先輩・後輩や同業他社の人たちと尾瀬や八ヶ岳、アルプスに登るなど、相変わらず自然に親しむことが矢口さんの大切な一部になっていたのだった。

「自然に親しむ会」のサークル活動

「自然に親しむ会」のサークル活動

「自然に親しむ会」のサークル活動では、山での生活、料理、仲間や自然との関わり、会の運営など様々なことを経験。山形県をホームグラウンドに東北6県のほか、群馬、長野等にも足をのばし、夏合宿や沢登りなどを楽しんだ。どのシーンも大切な思い出だ。

大学生活を楽しんで欲しいと
OBと保護者の立場で全力支援。

 「今、振り返ると本当に充実した大学生活を送っていたなぁと改めて思います。もちろん、社会人生活も充実していましたが、それも大学時代というバックボーンがあったからだと感じています」と矢口さん。現在、山形大学で学ぶ学生たちにも、卒業後に「懐かしいな、楽しかったな」「久しぶりにキャンパスや恩師を訪ねてみようかな」と思えるような大学生活を送って欲しい、その力になりたい、と切に願っていたという。さらに、今春娘さんが本学理学部に入学し、親子三代山形大生という喜ばしい話題も重なり、理事就任の依頼を快諾。卒業生、そして保護者として、愛校心は人一倍。今後は、首都圏のまとめ役として本学を接点とする絆を深め、広げる活動に一層尽力してくれることだろう。
 コロナ禍によってイメージとはかけ離れたキャンパスライフを余儀なくされている学生の皆さんを応援したいと「山形大学基金」と「自然に親しむ会」への寄付もしていただいている。「将来、もしかなうのであれば、現役の自然に親しむ会の学生の皆さんと一緒に、山形県の名峰に若返り登山をしてみたい」と目を輝かせる矢口さん。コロナが終息し、かつて矢口さんたちが謳歌したような大学生らしい毎日を送れる日が一日も早く訪れることを願うばかりだ。

恩師の増子名誉教授と先生所縁の神奈川県横須賀市を訪れ旧交を深める矢口さん。

2017年、恩師の増子名誉教授と先生所縁の神奈川県横須賀市を訪れ旧交を深める矢口さん。先生とは、卒業後も何度も会っており、豊かな知識と経験を持つ恩師と出会えたことも学生時代の財産のひとつ。

「第31回山形大学校友会理事会」の様子。

2021年6月、矢口さんが出席した「第31回山形大学校友会理事会」の様子。写真奥、左から2番目が矢口さん。会長を務める玉手学長のあいさつに続き、議事は円滑に進行された。

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やぐちあつのり

やぐちあつのり●山形大学校友会理事/山形県出身。1985年工学研究科高分子化学専攻修了。埼玉県在住。卒業後は首都圏の企業で研究職、営業、法務等で活躍。コロナ禍で困窮する後輩を支援したいと山形大学基金にも寄付。

※内容や所属等は2021年7月当時のものです。

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