ささえるひと #10
高橋政幸
日々積み上げたノウハウと人脈で
地域と企業を元気にする請負人。
2021.02.28
ささえるひと #10
高橋政幸
2021.02.28
2002年にスタートした高橋政幸さんのコーディネーター人生は、今や19年目。メーカー勤務からの転身で、コーディネーターとしての知識やスキルは日々の業務の中で自ら蓄積し、人脈も築いていった。最上地域の企業や行政にとっての高橋さんは、困った時や更なる飛躍を目指す時に、必ず相談に行く地域に欠かせない人物。企業と本学の共同研究の実現に、高校生の地元定着支援に、超多忙な毎日を送っている。
高橋さんの第一印象は、明るく雄弁でバイタリティあふれる人。当時、メーカー勤務だった高橋さんに「あなたはコーディネーターに向いていると思う」と、現在につながる仕事を紹介した人物の眼力は確かだったようだ。コーディネーターとしてのキャリアは19年目、公的立場でのコーディネーター歴としては全国的に見てもトップクラス。しかし、その所属先は山形県や文部科学省等、様々な変遷をたどり、2013年から本学に着任し、産学連携研究員・コーディネーターとして現在に至っている。コーディネーターとしてスタートした時から、最上地域全域をテリトリーとして地元企業をくまなく訪問し、ニーズや課題を拾い上げ、課題解決や成長戦略の支援に向けて日々奮闘中だ。
一方で、大学にも足繁く通い、産学連携のプラットフォームとして、大学の研究と企業のニーズとのマッチングにも力を入れている。さらに、2003年から開催している「最上夜学」では、毎回、本学の教授等が最新の研究シーズの発表を行っており、これをきっかけに企業と大学の共同研究が始まるなど、様々な交流が生まれている。これらの取り組みが高く評価され、2014年には独立行政法人科学技術振興機構より「イノベーションコーディネーター賞」を受賞している。
素晴らしい技術やアイデアを持ちながらも、製品化やビジネスに至るまでの資金に乏しいのが中小企業。そこで着目されるのが、外部資金(補助金)の獲得だ。高橋さんが今もっとも得意としていることが、この補助金獲得のためのサポートである。「確実に取れる外部資金申請書の書き方」というタイトルで、金融機関を対象に講義を行うほどの実績の持ち主なのだ。これまでに補助金申請のサポートを行なってきた企業は、製造業から建設業、薬局やクリーニング店まで、業種も規模もさまざま。金融機関からの紹介を受けて、相談にのることが多いのだという。相談の内容によって、該当する制度の選択から申請書や報告書の書き方指導を行う。常時4〜5本の案件に同時進行で取り組んでおり、多いときには13件も抱えていたこともあるという。このコロナ禍の影響で補助金制度が増えたことで、相談件数もさらに増え、高橋さんの忙しさにも拍車がかかっている。
もちろん、企業からの相談内容によっては大学の専門の先生方に相談し、そこから共同研究に発展するケースもあれば、すでに共同研究を行なっている企業の補助金獲得に協力してほしい、と先生から相談を受ける場合もある。地域における山形大学の総合力の見せ所というわけだ。
地元企業の支援に忙しい高橋さんではあるが、企業の方ばかりを向いているわけではない。若者の人口流出も最上地域が抱える深刻な問題として、若者の定着支援にも積極的に取り組んでいる。最上エリアは、県内で唯一大学等の高等教育機関がない地域であるため、大学や専門学校への進学となると、必ず一度は地元を離れることになる。それでもいずれは最上地域に帰ってきて、地域の担い手になってほしい。そんな希望を込めた高校生向けのプログラムである「ジモト大学」にも協力している。大学で学ぶということや地元で働くということをイメージしやすくするためのプログラムで、大学生とフリートークをしたり、地元の企業で働く先輩の話を聞いたりなど、高校卒業前に学んでほしいことがたくさん詰まっている。
しっかり地元の魅力を知った上で旅立てば、きっといつかは地元に帰り、地域の未来を引き継いでくれることだろう。その旅立つ先が山形大学となることも高橋さんの狙いのひとつ。ここでも山形大学パワーのアピールに余念がない。しかし、いざ若者たちが成長して帰って来た時、その能力を発揮できる受け皿である地元企業がなかったら…。つまり、高橋さんの取り組みは全て見事につながっている。「最上地域全体を元気にしたい」。その一心で、今日も最上地域を東奔西走していることだろう。
たかはしまさゆき●産学連携研究員・コーディネーター/山形県出身。包装容器メーカー、山形県企業振興公社等を経て2013年より現職。最上地域の活性化に尽力中。2014年イノベーションコーディネーター賞を受賞。
※内容や所属等は2020年12月当時のものです。