ささえるひと #11

山形大学SDGsタスクフォース

世界を考え、地域を思い、
SDGs活動にempowerする。

2021.04.15

世界を考え、地域を思い、SDGs活動にempowerする。

社会全体がSDGsへの取り組みを本格化させている今、大学が果たすべき役割は大きく、その行動を加速させることが求められている。本学においてもSDGsの実践をempower(力づける、力を与える)するタスクフォース(TF)を設置し、学内及び地域におけるSDGsの取り組みと普及への支援を強化している。本特集では、TFリーダー林田副学長への取材をもとに、山形大学SDGs(YU-SDGs)のこれまでの歩みと現状、そして今後の展望を紹介する。

タスクフォースの設置で本格化
山形大学におけるSDGs活動。

 2015年9月に国連サミットで採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標SDGs(持続可能な開発目標)」への取り組みが近年急加速している。本学においても、2020年4月に玉手英利学長が就任するとすぐに、今後の重点ポイントのひとつとして「社会の持続的発展に貢献する」と表明。その発言を受けて翌5月には林田光祐副学長をリーダーとする「山形大学SDGs(YU-SDGs)タスクフォース(TF)」を設置し、本学におけるSDGsへの基本方針等を取りまとめた。
 YU-SDGs TFが作成した企画書では、SDGsの大学への期待と大学が受けるメリット、SDGsに貢献する本学の研究プロジェクト事例、学生が行なっているSDGs活動事例、さらに、SDGsの枠組みを最大限に活かした大学ブランディングなど、今後の課題と行動計画等を示すと共に、「empower!」をコンセプトキーワードとして、大学が地域のSDGs活動を積極支援する「YU-Empowering with SDGs」事業を推進することなどが示された。また、学内の学生、教員、職員を対象にSDGsの認知度についてインターネット上でアンケート調査を実施したところ、下の円グラフが示す通り、「用語だけは知っている」までを含めると、学生の認知度は69%で教職員よりも高く、さらに、全国の大学生の認知度52.1%をも大きく上回っていることがわかった。「学生たちの関心が非常に高いというこの現象は、17のゴールとそれを細分化した169のターゲット、項目が多岐に渡り、誰もがどれかしらに当てはまり、自分事としてとらえやすいことや目標の2030年といえば、まさに今の学生たちが経済社会の第一線で活躍している頃。自分たちの将来に関わってくることだから危機感があるのではないでしょうか」と林田先生。

SDGsとは

「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された国際目標。2030年までに持続可能でより良い世界を目指し、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っている。

本学のSDGsの認知率

2020年7月にインターネット上で学内の学生および教職員を対象にSDGsの認知度についてアンケート調査を実施。その結果、学生の認知度は69%と教職員よりも高く、しかも、全国の大学生の52.1%を大きく上回っている。本学学生の関心の高さがうかがえる。

オール山形のパートナーシップで
活動のさらなる加速にempower!

 YU-SDGs TFの企画書の内容を受けて、7月16日の学長定例記者会見で玉手学長は、学内及び地域のSDGs活動を積極的に支援する「YU-Empowering with SDGs」事業を推進していくことを公表。具体的には、①学生へのSDGs教育の充実化 ②SDGsに貢献する研究推進 ③一般市民に向けたSDGs啓発活動 ④山形県や市町村、メディア、企業等地域団体との連携と取り組みの強化 ⑤SDGs対応の大学経営等を行い、持続可能な社会の構築に貢献するとしている。また、同日Webページを開設し、玉手学長が「山形大学は、これまでも社会の持続可能な発展の在り方を探求し、社会の多くの皆様とともに、その実現に向け活動してきました。今後は国連によるSDGsの枠組みを最大限に活用して、それらの活動を一層加速させることとし、その姿勢を“empower!”という言葉に込めて取り組んでいきます」とメッセージを発信した。
 その第一歩、山形県や市町村、メディア、企業等地域団体との連携と取り組みの強化として、早速8月6日に「山形県、山形大学及び山形新聞社によるSDGsの推進に向けた共同宣言」を発表。これは、山形県におけるSDGsの理念の普及と実践を拡大し、“オール山形”のパートナーシップで、県民誰もが真の豊かさと幸せを実感できる山形県づくりを目指すスタートとするもの。吉村美栄子山形県知事、寒河江浩二株式会社山形新聞社代表取締役社長、そして本学の玉手学長がそれぞれ共同宣言について挨拶を行い、三者で共同宣言文を読み上げ、署名を行った。そして、この共同宣言に基づき、9月27日には情報発信・交流の場となるプラットフォーム「やまがたSDGs推進ネットワーク(YES-Net)」をFacebook上に開設し、本学と山形新聞が合同で運営している。メンバーに登録すると、ネットワークが運営するメーリングリストに登録されるとともに、ネットワークが運営するSNSやSlackに参加でき、Slack内ではSDGsの17目標、組織・団体カテゴリーごとに様々な情報を交換することもできる。SDGsに関心のある人や、SDGsについてもっと知りたい人、SDGsに関するイベントや講演会などを企画している人がYES-Netでつながって広がっていく、まさにプラットフォーム的役割を担っていく。また、“オール山形”のパートナーシップでSDGsを推進するための連携を構築するツールとして、企業や自治体、教育機関等の登録も相次いでいる。

山形県、山形大学及び山形新聞社によるSDGsの推進に向けた共同宣言

2020年8月、三者は山形県におけるSDGsの理念の普及と実践を拡大し、県民誰もが真の豊かさと幸せを実感できる山形県づくりを目指して連携していくことを宣言した。

やまがたSDGs推進ネットワーク

山形県、山形大学及び山形新聞社の共同宣言に基づき、オール山形体制構築の第一歩となるプラットフォームとしてFacebook上に情報発信・交流の場が開設された。

SDGsの17目標を駅に見立てた
親しみやすいポータルサイト。

 地域のSDGs活動を積極支援する「YU-Empowering with SDGs」事業の一環として、SDGsの普及啓発のために開設したポータルサイト「YU-SDGs Empower Station」はとてもカラフルでユニークだ。SDGsの17目標を総合大学である本学の研究プロジェクトや教育活動等と関連づけて紹介している。小中学生も親しめるよう遊び心のあるデザインで、子どもたちの質問に大学の先生や専門家が回答するコーナーもあり、将来を担う世代へのアピールも強く意識している。
 SDGsの17目標を17の到着駅に見立て、それぞれの目標に向かうための中央駅EmpowerStationを起点に、色分けされた路線(人間線、平和線、地球線、豊かさ線、パートナーシップ線)を選んで目標地を目指すと、その沿線上に関連する研究プロジェクトや教育、学生サークル活動などが紹介されている。また、目標駅別、路線別、学部別のプロジェクト検索も可能で、目的に合わせて様々な活用術がある。例えば、高校生が進路を決めるにあたって漠然と「健康」に関わる分野に進みたいと考えているとしよう。その場合、「目標3:すべての人に健康と福祉を」は路線の人間線上にあり、同じ路線を辿っていくと、健康に関する学びは医学部だけではなく、理学部や工学部でも学べることがわかる、そんな逆引きも可能なサイトデザインになっている。さらに、駅前の掲示板ではSDGsに関連するお知らせやセミナー、公開講座、学生主催イベントなどを紹介すると共に、山形大学と連携して活動しているパートナー企業や団体、自治体等の紹介も行なっている。また、本ポータルサイトには季節感を持たせており、冬は雪景色、秋は紅葉になるなど、リピーターも楽しめるようにと遊び心も徹底している。

山形大学SDGsポータルサイト YU-SDGs EmpowerStation

SDGsの17の目標をそれぞれに対応する大学の研究や教育活動等と結びつけて紹介するポータルサイト。鉄道路線に模した遊び心のあるサイトデザインで幅広い年齢層にアピール。 https://sdgs.yamagata-u.ac.jp/

セミナーやSDGsカフェ開催で
「誰一人取り残さない」活動。

 YU-SDGs TF設置から約7カ月後の2020年12月11日には、学内向け「YU-SDGsオンラインセミナー『山大はSDGsにどう向き合い、どのように行動していくのか?』を開催。師走の多忙な時期にもかかわらず多くの参加があり、関心の高さが感じられた。冒頭、玉手学長から山形大学がSDGsに取り組む意義について話があり、引き続き、林田副学長をはじめYU-SDGs TFメンバーから学内アンケートの結果やこれまでの活動実績と今後の予定などについて説明が行われた。質疑応答の時間には、活発な意見交換が行われ、今後山形大学がSDGsに取り組んでいく上で大変有意義な時間となった。
 そこで、SDGsに関心のある方々、大学教職員、学生、一般市民、高校生、誰もがお茶を飲みながら、より気軽に対話したり、知識を深めたりすることができる場としてZoomミーティング「YU-SDGsカフェ」を開催。第1回は3月9日に開催され、今後もコロナ禍の状況によりオンラインの開催を基本として隔月のペースで定期開催を予定している。

学生シンポジウム

1月28日にオンラインで開催され、約40名の学生が参加。玉手学長のあいさつ、講演、パネルディスカッションという内容で様々な活動報告や活発な意見交換が行われた。

SDGsカフェ

去る3月9日に開催されたZoomミーティング「第1回YU-SDGsカフェ」の様子。SDGsに関心のある人ならだれでも気軽に参加できる場として企画されている。

学生シンポジウムを開催して

マイクロスケール実験キットの開発

地域社会のSDGsとは
“やまがたモデル”をイメージ。

 YU-SDGs TFを中心に活動を活発化させている山形大学のSDGsだが、今後の計画についてもオンラインセミナーでは詳しく紹介された。「学内及び地域における学生活動、研究プロジェクトをSDGs視点でアピールすることでファンディングの拡大、大学ランキングによるブランディング効果等がスパイラル的に期待できます。SDGsは、言わば共通言語。本学の3つの使命、地域創生、次世代形成、多文化共生のもとで行っている多様な教育や研究もSDGsの17目標に落とし込むと、非常にわかりやすく、説得力を持ちます」と、SDGs活動が大学にとっても非常に有意義であると語る林田先生。今後のSDGsへの対応指針として、レジリエント(柔軟な、弾力ある)、サスティナブル(持続可能な)、エンパシー(共感、人を思いやる)という3つのキーワードのもと、山形らしいSDGs、地域社会のゴールとして上図のような“やまがたモデル”をイメージして進めていくとしている。そのため、地域の特色を生かした教育・研究をさらに強化するとともに基盤共通教育にSDGs関連講義を取り入れるなど、教育体制も整備された。SDGsを通して世界のことをしっかり考えながら、地域で安全に幸せに暮らしていける仕組みをつくること、それが、山形大学が目指すべきローカルゴールズと考えられている。

山形大学がコミットしてつくる地域社会のゴール やまがたモデル

地域とつながり活動するTeam道草

マイクロスケール実験キットの開発

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はやしだみつひろ

はやしだみつひろ●副学長(SDGs特命担当)/博士(農学)、専門は生態・環境、森林科学。2020年5月に設置された山形大学SDGsタスクフォースのリーダー。学内及び地域のSDGs活動を積極的に支援する各種事業を担っている。

※内容や所属等は2021年3月当時のものです。

みどり樹

この内容は
山形大学広報誌「みどり樹」
Vol.79(2021年3月発行)にも
掲載されています。

[PDF/5MB]

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