ささえるひと #05

佐野周平

大好きな野球と英語力で叶えた夢、
今は、学生たちの夢探しを応援中。

2020.01.15

大好きな野球と英語力で叶えた夢、今は、学生たちの夢探しを応援中。

本学人文社会科学部では、楽天野球団の協力を得て、ビジネスへの理解・関心を深めることを目的とした「企業課題解決型実践演習a(楽天)」を開講している。2018年・2019年には、山形市で開催される楽天一軍戦の観客を増やす、という課題にチャレンジ。以前は球団で通訳を務めていた佐野周平さんが、講師として球団経営や企画、イベント運営等に関して実践的で興味深い授業を展開し、人気講座となっている。

日本一の感動を共有した通訳から
球団を経営面で支える営業職へ。

 「企業課題解決型実践演習a(楽天)」は2016年度から実施されている講座で、2年間は楽天の二軍戦を題材にして授業が構成されていた。それが、2018年に山形市で一軍の試合が開催されたことをきっかけに、一軍戦を対象としたプログラムにスケールアップ。そのタイミングで担当を引き継ぎ、2018・19シーズンの演習でお世話になっているのが佐野周平さんだ。
 佐野さんは、もともと楽天イーグルスの本拠地である宮城県出身。父親の仕事の関係で小学2年生から6年生までは米国アラバマ州で育った帰国子女で、日本の中学・高校を卒業すると再び大学進学のために渡米し、ミズーリ州で6年間を過ごしている。長年のアメリカ暮らしで身につけた英語力を大好きな野球の世界で生かしたいと、いつしかプロ野球団の通訳になることが夢になった。帰国から約2年後の2012年に、念願叶って楽天野球団に通訳として入社。外国人選手が安心して野球に集中できる環境をつくるために、サポートは公私にわたった。2013年には、東北楽天ゴールデンイーグルスが日本一に輝いた感動の瞬間も、監督や選手たちとともに経験した。2015・16年シーズンは通訳と国際部業務を兼任し、2017年シーズンから現職専任となり、本演習の担当として本学にも何度も足を運んでいただいている。

球場の年間シートについて説明する佐野さん

営業本部チケットセールス部のスタッフとして、球場の年間シートの営業を主に担当している佐野さん。契約を検討中のお客様に対して座席の位置や料金等を丁寧に説明。

お客様の座席を案内する佐野さん

東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地「楽天生命パーク宮城」の収容人数は最大2万8,000人。「お客様のお席はこちらです」と、試合当日には座席までご案内することも。

2018年から本学の演習に協力
実践的で感動的な体験を提供。

 当初の二軍戦を対象とした演習は、比較的ハードルが低く自由度も高かったため、学生たちが企画した内容を概ねそのまま実施することができていた。しかし、佐野さんが担当となった1年目の2018年の演習では、山形市の新球場「きらやかスタジアム」で開催される一軍戦が対象となった。スケールの大きさにやりがいや醍醐味が増した分、さまざまな制約などが生まれ、難しさも増した。演習に課せられた課題は、7月に開催される東北楽天ゴールデンイーグルス一軍戦への観客動員を増やすこと。球団とは、楽天とは、観客動員のためのプロモーションとは等、楽天野球団の方々からレクチャーを受けた後に、スポンサー企業に対して電話でチケット販売の営業をかけたり、学内の学生向けにチラシを作成したり、試合当日に企画運営を担当したり、それぞれのチームで課題に取り組んだ。
 結果としては、スポンサー企業向けのプロモーションは、楽天スタッフの皆さんのフォローもあってそれなりの成果を上げることができたが、学生に球場へと足を運んでもらう企画は成功とはいかなかった。この反省を踏まえて、プロ野球の一軍戦に関われる醍醐味とチャレンジを次の学年にも提供したい、という担当教員の熱い思いもあって、2019年シーズンも引き続き一軍戦の観客動員数を増やすという演習が実現することになった。

楽天生命パーク宮城を訪れた学生たちの様子

楽天野球団より招待を受け、演習の一環として学生たちが楽天生命パーク宮城を訪れた際の様子。本拠地ならではのスケール、活気、興奮、華やかさを体感。

広報チームの学生の様子

演習では営業、広報、試合当日のイベントなど、いくつかのグループに分かれて調査、企画の立案と運営などに挑戦。広報チームが効果的なSNS等の活用方法について検討している様子。

楽天イーグルス一軍戦の告知用チラシ

2019年の演習で広報チームの学生たちが作成した楽天イーグルス一軍戦の告知用チラシ。お得なチケット料金、大学〜球場間のシャトルバス運行など、さまざまな魅力や特典をPR。

学生対象のプロモーションに限定
夢探しや就活につなげてほしい。

 2・3年生を対象としたこの演習は、2年次に受講した同級生の勧めで受講を希望する3年生がいたことなどもあって、2019年は前年より定員を増やしての開講となった。今回の演習では、取り組む内容を学生向けのプロモーションに限定。前回学生が集まらなかった原因の洗い出しからスタートし、自由な発想で企画を出し合い、佐野さんを交えて実現可能かどうかを検討して判断。最終的には、佐野さんの尽力と楽天の方々の協力により、大学と球場間のシャトルバス運行や楽天選手のサイン入りグッズが当たる山大生限定の抽選会、先着ユニフォームプレゼントなどが実現した。また、事前に教員の許可を得て授業の冒頭でチラシを配って告知をしたり、学内のさまざまな場所にポスターを掲示したりと、地道な活動も展開。
 特に、シャトルバス運行の効果は絶大で、結果前年比大幅アップとなる約350名を動員。この数字に満足する学生、もっとできたはずと悔しがる学生、反応はさまざまでもそのプロセスにおいて素晴らしい経験ができたことは確か。「この経験が、夢を見つけるきっかけになったり、就活の役に立ってくれたら嬉しい」と佐野さん。アメリカで大学生活を送った佐野さんの知識や経験談はとても興味深く刺激的だ。人生のよき先輩として、学生たちを末永く見守っていただけたら有り難い。

試合当日のイベントブースの様子

試合当日のイベントブースで対応に追われる学生たち。シャトルバス効果で学生の観客が大幅に増加。シャトルバスが到着するたびに山大生用の特設ブースには長蛇の列ができた。

先着プレゼントの楽天ビジターユニフォーム

楽天球団のご厚意により提供を受け、山大生限定で先着プレゼントされた楽天ビジターユニフォーム。その他にも、選手の直筆サイン入りグッズが当たる抽選会などで盛り上がった。

きらやかスタジアムでの試合の様子

きらやかスタジアムで繰り広げられた試合の様子。プロ野球の一軍戦が観戦できる希少な機会とあってスタジアムはほぼ満席。交通手段という課題をクリアし、観客増に貢献。

さのしゅうへい

さのしゅうへい●宮城県出身。株式会社楽天野球団勤務。小学2年生〜6年生まで米国育ち。中・高校卒業後、大学進学で再び米国へ。2012年に同球団に通訳として入社し、2013年に日本一の感動を体験。2017年より現職。

※内容や所属等は2019年当時のものです。

他の記事も読む