ささえるひと #19

副学長 コーエンズ久美子

新副学長が語る 山形大学の未来。
地域・キャンパス・教職員間の連携に 尽力。

2024.10.15

新副学長が語る 山形大学の未来。地域・キャンパス・教職員間の連携に 尽力。

 理事・副学長シリーズの第3弾を飾るのは、コーエンズ久美子副学長。先ごろ創立75周年を迎えた山形大学の今後の大学運営や展望、業務の中で大切にしていることなど、ユーモアも交えながら語ってくれた。

それぞれの事情・状況を把握し、
キャンパス・学部間連携に向け橋渡し。

 コーエンズ副学長が山形大学に在籍し、21年目を迎えた。
 玉手英利学長から副学長就任の打診を受けたのは2023年11月、勤続期間20年以上の教職員をたたえる永年勤続者表彰の代表スピーチの直後だったという。「正直にいうと『未知との遭遇』でした」と、冗談めかして打ち明ける。
 新たに担うことになった業務の一つが、国立大学法人が6年ごとに策定する中期目標・中期計画の進捗管理。国立大学は、この目標・計画を基に業務を進めて実績を報告し、文部科学省の「国立大学法人評価委員会」の評価を受ける。
 2019年から5年間にわたって人文社会科学部の学科長を務めてきたコーエンズ副学長にとっても、キャンパスや学部の枠を超えた組織の全般にわたる認定評価や目標・計画を自ら扱うのは初めての経験。「引き継いだ大量の資料を読み込んで、猛勉強しました」と率直に語り「一生、学習と実感。業務遂行上必要なことを含めて、新しい知識を吸収していくことで、自分が豊かになっていく気がします」と話す。
 新しい業務を進めていく中で意識してきたのが「謙虚に学ぼうという姿勢」と「互いに意見を言い合える雰囲気づくり」。
 「自分がわかってないところを『わからない』ときちんと認め、教えてもらって、自分でも努力し吸収して前に進むこと。より効率的な進め方など自由に意見を交換できる場を提供し、自分でも言えるようにすること。業務を共に進めていく教職員の皆さんに“笑顔になってもらえる=創造的な雰囲気”をつくりたいな、といつも思っています」。
就任後、「今後この業務を進めていく上で、自分にとって意義が非常に大きかった」と振り返るのが5月に実施した、各担当理事や副学長への中期目標・中期計画の進捗確認のヒアリングや役員会だったという。
 「各キャンパスや学部の事情や置かれている状況、それぞれの分野の担当理事、副学長たちが抱える課題も非常に理解できるようになりました。キャンパス間・学部間の枠を超えて連携できることがあるのではないかとも感じました。今後、そうした橋渡しなどでも貢献していきたいと考えています」。

「就任直後、かつて人文社会科学部で仕事をされていた事務の方や、理事補佐をしていたときにお世話になった本部の事務の方など多くの方々に『慣れましたか』『体調はいいですか』といった声をかけていただけて、ありがたいなと感じています」

大学の教育・研究の情報を発信し、
地域の「産学官金」の連携を強化。

 開学75周年を迎え、より一層地域に愛され、信頼される大学を目指し「聴く姿勢と好奇心を持ち続け、未来に向けて一緒に考え、行動していきたい」と語るコーエンズ副学長。産学官金連携の強化と、それに向けての大学の教育・研究に関する地域に向けた積極的な情報発信は、社会共創推進室や企画・戦略室とともに実現を目指す取り組みの一つだ。
 山形県行政支出点検・行政改革推進委員会委員長、山形地方最低賃金審議会公益代表委員など県内を中心に、外部委員としても積極的に活動しており「自治体、産業界ともに地域課題の認識は共通しています。『社会共創』に向けて、情報提供、意見交換を行っていきます。委員会等では機会があるごとに、ぜひ山形大学の資源を使ってもらいたい、と発言して議事録に残してもらうなど“地味で小さなセールス”にも努めています」。
 一方で、副学長就任後も従来通りゼミを運営し、基盤教育の「共生を考える」の授業を担当するなど学生たちと密に関わる日々は変わらない。特にさまざまな学部の1年生が履修している授業では学生のエネルギーと“ストレートな言動”に刺激を受けている、と笑う。
 「それでも会議や授業、学外活動等で忙しい日が続くと、つい『ここまでかな』という低い限界を設定しがちなことに気づきました。その意味で『限界を設定しない』ように心がけています」と言い、忙しい業務の中で研究時間の確保にも心を砕いている。

 

自身の専門である「商法」「会社法」といった法律は、大学経営にも役立つ分野だと感じているそう。「法律全般にいえることですが『なぜこのようなルールになっているのか』という背景を知ることで、問題が生じたときの解決方法の指針、妥当な解決へと導くことにもつながります。最も精緻な組織の法律である会社法の内部統制や情報開示の考え方なども、利害関係者は異なりますが同じく組織である大学の運営にも共通する部分だと思います」。 写真は、コーエンズゼミ(商法)が、毎年参加している他大学との合同ゼミの様子(コロナ禍以降、オンラインによる実施)。 裁判例を取り上げ、判旨賛成・判旨反対に分かれディベートを行っている。

ハラスメント担当の経験を活かし、
「心身ともに健康」でいられる環境を追求。

 担当理事補佐として15年にわたって向き合ってきたのが、キャンパス・ハラスメントの問題だ。「教職員の皆さんには、心身共に健康であってほしい」と語り「教職員自身が自分の仕事にプライドとやりがいをもつこと、充実していることが大切です。それぞれがやりたいこと、やるべきことを考え、さまざま提案してほしい」と呼びかける。
 「今は『公益通報者保護』のように情報を提供してくれた人を守る学内ルールもできています。当事者としてではなく、周囲で見聞きしたことであっても『自分事』としてとらえ、職場環境の中でおかしいと思うことがあれば、しかるべき担当者に情報を伝えてほしい。その情報を基に、できるだけ早く職場環境改善につなげていくことが大切です。特に将来を背負っていく若い人たちには、自分たちの周りの環境を良くするために工夫し考えてもらいたいなと、思っています」。
 さらに「より一層、考えたい」と指摘するのが、教員と学生との関わり方だ。
 「生活指導や授業の仕方、ゼミ運営など関わり方によって大きく伸びる学生もいます。メンタルヘルス上の問題を抱えて授業に出られなくなっている学生がいれば、保健管理センターや専門家につなぐこともできるでしょう。学生指導におけるさまざまな工夫は教員間で共有することで全体のレベルアップにつながると思います」。

気分転換法の一つが休日に「愛ネコとまったり過ごすこと」。週1〜2回、健康維持のためにスポーツジムにも通っており、ここで愛用しているグッズにもネコがデザインされている。「ジムのインストラクターさんがよく『頑張りました、よくやりました』と誉めてくれるのですが、単純にうれしくてやる気になります。もっと周りの人たちを誉めよう、と学ぶことが結構あります」と笑う。

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コーエンズ久美子

コーエンズ・くみこ●副学長 (評価、IR 担当)/人文社会科学部総合法律コース教授。専門は商法。地方公共団体の外部委員としても活動し、山形県行政支出点検・行政改革推進委員会委員長、山形地方最低賃金審議会公益代表委員などを務める。2019年4月より人文社会科学部学科長、2024年4月より現職。徳島県出身。

※内容や所属等は2024年9月当時のものです。

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