ささえるひと #13

伊藤洋子

学生・教職員の心と体の健康を
専門スタッフが手厚くサポート。

2021.09.15

学生・教職員の心と体の健康を専門スタッフが手厚くサポート。

学生・教職員11,000人以上が集う山形大学。学び、働く全ての人々の心と体の健康を守る「保健管理センター」では、医師、看護師、公認心理師が勤務し、健康相談、心の悩みの相談、ケガや急病の応急処置等を担っている。伊藤洋子先生は、カウンセラーとして悩める人々に寄り添うとともに、教職研究総合センター客員准教授として公認心理師や臨床心理士を目指す学生の臨床実習の指導も担当している。

春の健康診断の結果をもとに
心と体のケアがスタート。

 小白川キャンパスにある保健管理センターには、医師2名、カウンセラー4名、看護師4名が勤務。また、飯田、米沢、鶴岡の各キャンパスにも保健管理室や保健室があり、カウンセラーや看護師による保健管理センター同様のサービスを提供している。体の健康面では、新入生を迎える4月から6月にかけて学生定期健康診断および教職員を対象とする定期健康診断が行われ、全キャンパスの診断結果が保健管理センターに集められる。一人ひとりの診断結果を精査し、健康診断証明書を発行。異常所見が出た学生や教職員に対しては、二次検診を勧める、経過観察をするなどのフォローを行なっていく。
 通常業務としては、日常的な健康上の問題について、医師や看護師が毎日相談に応じるほか、風邪や腹痛症状などに対する医師による診察、医療機関紹介も行なっている。また、医学部附属病院の各科医師が学校医として相談に応じる「学校医による健康相談」もあり、第一外科・整形外科・婦人科・泌尿器科・耳鼻咽喉科・眼科・皮膚科の医師による、より専門的な相談も行われている。もちろん、キャンパス内で負ったケガやその他急病の応急処置、場合によっては薬の処方、具合が悪くなった時の休養スペースも提供されている。

保健管理センター

小白川キャンパスの図書館に隣接する「保健管理センター」。健康相談や体調不良時の休養、応急処置などで気軽に利用でき、学生・教職員の健康管理をサポートしている。

各種相談や応急処置等の受付窓口となるナース室

各種相談や応急処置等の受付窓口となるナース室。風邪や食生活、睡眠などの一般的なことから生理不順等に関することまで、看護師による健康相談は毎日行われている。

急に具合が悪くなった時などに休養することができる部屋

急に具合が悪くなった時などに休養することができる部屋も用意されている。基本、若くて元気な学生が多いため、ここでゆっくり休養をとって元気を取り戻す学生がほとんどだという。

コロナ禍で大学生活に大きな変化
カウンセリングで不安を改善。

 親元を離れて初めての一人暮らしや就職活動への不安など、大学生もさまざまな悩みを抱えている。そんな学生たちの心のケアにあたっているのが伊藤洋子先生をはじめとするカウンセラーで、相談の受付は完全予約制。学生定期健康診断やオリエンテーションで大学にもカウンセラーがおり、困り事はなんでも相談できることを周知している。今の学生たちは中学や高校にスクールカウンセラーがいる環境で育ってきた世代ということもあり、抵抗なく気軽に相談に訪れるという。学生たちが抱える相談内容はさまざまだが、やはり環境の変化が著しい1年生と4年生に利用者が多い傾向にあるようだ。
 加えて、コロナ禍によりリモート授業やオンライン面接が増え、部活やサークルの活動も制限されるなど、思い描いていたキャンパスライフとのギャップに不安や混乱を感じている学生も少なくない。「大学生はもうほぼ大人ですから、アドバイスするというよりは本人がどう思っているかを引き出し、自ら答えを導き出すお手伝いをするという感じです。そのためには信頼関係を築くことが大切。学生が心を開いて話ができるように、何を話しても受け入れてくれる存在と思ってもらえるように心掛けています」と話す伊藤先生の口調はとても穏やかで安心感がある。

対面式でのカウンセリングの様子

対面式でのカウンセリングの様子。相談に訪れた学生ににこやかに話しかける伊藤先生。学生が心を開いてなんでも話せるような雰囲気づくり、信頼関係づくりを大切にしている。

電話やオンライン、メール等での相談にも親身になって対応している

コロナ禍の影響で対面式でのカウンセリングが難しい時期や相談者本人が希望する場合には、電話やオンライン、メール等での相談にも親身になって対応している。

大学院生を臨床の場で指導し、
公認心理師・臨床心理士を育成。

 伊藤先生は、山形県公認心理師・臨床心理士協会の会長を務めるスペシャリスト。スクールカウンセラーや産業カウンセラー等、多方面で活躍されている。本学においては、保健管理センターでカウンセラーとして学生・教職員の心の健康管理をサポートすると同時に、客員准教授として教職研究総合センターにも所属。教職研究総合センターとは、本学の教職課程の整備充実と地域の教育力の向上への貢献を目的に設置された教育研究支援施設の一つ。その心理臨床研究部門で地域の人々への心理教育相談や公認心理師や臨床心理士を目指す大学院生に対する臨床実習の指導などを担っている。大学院生は、心理教育相談室の相談員として伊藤先生等の指導のもとで相談者に対するカウンセリングを経験するなど、実践的に学ぶ機会を得ている。
 「コロナが収束しても新たな危機やリスクは訪れるでしょう。私たちは、ゼロストレスはあり得ないという想定のもとで、その状況に合った支え方を考えています。悩んでいた学生が、自信を取り戻し、自己肯定感を増していく姿を見ることがやりがいでもありますね」と伊藤先生。さまざまなリスクやストレスにさらされている現代社会。公認心理師や臨床心理士は、ますます社会に求められる存在になっていくことだろう。

臨床実習の指導風景

公認心理師・臨床心理士を目指す大学院生に対する臨床実習の指導風景。伊藤先生が行うカウンセリングに陪席した後、そのケースについてポイントや注意点を話し合っている。

いとうようこ

いとうようこ●保健管理センターカウンセラー、教職研究総合センター客員准教授/山形県公認心理師・臨床心理士協会会長。学生や教職員の心のケアにあたるとともに、大学院生に対する臨床実習の指導なども担当している。

※内容や所属等は2021年9月当時のものです。

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