ささえるひと #16

早坂 真貴子&武田 友紀&佐藤 安代

いざというとき、頼りになります。
意外と知らない保健管理センターの役割

2024.05.30

いざというとき、頼りになります。意外と知らない保健管理センターの役割

 けがをしたり心身の調子が悪くなったりしたとき、困ったときに頼りになる学内施設が「保健管理センター」。その存在は知っていても「高校時代の保健室のような場所?」と思っている山大生もいるかもしれない。いざというとき役に立つ活用の仕方や多岐にわたるその役割を看護師の早坂真貴子さん、武田友紀さん、佐藤安代さんに伺った。

心身の悩みは何でも相談を!
医師、看護師、カウンセラーが常駐。

 「保健管理センター」は健康診断から健康相談、それらに付随する必要な検査(心電図・尿・抗体価等)、健康教育、情報発信まで幅広い業務を担い、山大生、教職員らの健康を多方面から支えている。
 高校までの「保健室」と大きく異なるのが、その専門性の高さだ。小白川の他に、飯田、米沢、鶴岡の各キャンパスにも設置され、小白川には医師と看護師、カウンセラーが、他のキャンパスには看護師とカウンセラーが常駐し、常に連携が図られている。健康や心身に関するあらゆる悩みを相談でき、状況によって休養はもちろん、医師による診察や面談、応急処置、医療機関の紹介も受けられる。

風邪症状や腹痛、生理痛、学内でのけがに限らず、蚊やハチなどの虫刺されから自炊中の切傷やけど、ストレス等から生じる諸症状、メンタルヘルス分野まで、寄せられる相談内容は多種多様。「山大生には“頑張り屋さん”が多い。寝る時間も惜しんで学業に、バイトに、サークルにと頑張り過ぎて、体調を崩してしまう学生もいます」と看護師の早坂真貴子さん。

 山形大学医学部附属病院の専門医も「学校医」として相談にあたり、中でも婦人科、整形外科は人気。生理不順やひどい生理痛があってもなかなか自分から受診せずに放置している学生もいる。「胸が苦しい」と相談に訪れてメンタルの不調が判明するようなケースもある。
 「親御さんにも、友達にも言えなかったことをここで話してくれる学生さんもいます」と打ち明けるのは、看護師の武田友紀さん。「持病のない、元気に毎日を送っている学生さんが急に具合が悪くなってしまう原因の一つが、無理をしすぎてしまうこと。相談に来て、話をしているうちに学生さんたちの緊張やこわばりが解け、表情が徐々に緩んでいくのを見ると、ほっとします」と話す。

感染症拡大防止の隔離機能を備えた「陰圧室」を含む3床の休養室、けがや急病に対応する「処置室」などがある

「SOS」に駆けつけ、リモート対応も。
学生、教職員の健康を強力サポート。

 学内で動けなくなった学生の元に駆けつけてくれるのも、保健管理センターの看護師たち。バイタルを取り、問題がなければ水分補給をしながらその場で様子を見て、状況によって車椅子等で保健管理センターへ搬送。
 「生活が一変し緊張感の高まる年度初めは、倒れてしまう学生が多く、原因は寝不足や食生活の乱れ等で生じる体調不良。ストレスや生理痛等による過呼吸、脳貧血、熱中症などさまざまです。現場にいったん出向き、ようやく落ち着いて戻ってきてすぐにまた『SOS』が来て…と学内を何度も往復する日もあります」と早坂さん。

 

保健管理センターオリジナルのリクライニング機能付き車椅子が看護師たちの「仕事の相棒」。手すりを下げられる特注品でベッドに移乗しやすい。背もたれ部分には担架も収納している。

いつでも持ち出せるように救護バッグとAEDが常備されている。

 身体の不調に生活習慣の乱れが影響しているケースが多く、一人暮らしを始めたばかりの学生らに簡単な料理のレシピを教えたり、睡眠時間を指導したりと改善に向けてアドバイスすることも。海外からやってきて気候の違いから具合が悪くなった留学生らにも、ゆっくり話したり、アプリやジェスチャーを使ったり、丁寧なコミュニケーションで的確な対応に努めている。
 健康相談は電話、メールでも受け付け、コロナ禍の3年間には電話相談が殺到。呼び出し音が鳴り止まない状況下で症状を聞き、病院の紹介から受診後の結果を踏まえた指導まで、リモートサポートし続けた。練習方法や大会参加の可否など、学内サークルからの相談も相次ぎ、競技の特性や場所といった感染リスクを見極めながら、きめ細かく助言。親元を離れ一人暮らしの学生が感染した際には食事など生活のフォローにも気を配った。「親御さんも駆けつけられない状況でした。高熱で辛く不安いっぱいで連絡をくれる学生さんたちへは、できるだけ事細かにお聴きするように努めました」と武田さんは振り返る。

保健管理センターが最も忙しくなるのが新年度始まりの4月から6月にかけての期間。新入生向け、実習生向け、一般学生向け、留学生向け、教職員向け等と対象者ごとに健康診断の時期をずらして行われ、その準備は半年前から始まる。本学の全学生・全教職員の健康診断結果全てが保健管理センターへ集約される。二次検査の通知からその受診結果等も含めた全てのデータを管理しており、それを基に健康支援を行っている。他にも養護教諭を目指す学生の講義や演習、実習指導等看護師の仕事は多岐にわたる。

健康管理は自分の体を知ることから。
意識すれば、卒業後の人生も変わる。

 保健管理センターのエントランスを入り、真っ先に目に入るのが視力や血圧、身長体重、体組成計など、ずらりと並んだ測定・検査機器だ。健康診断の時期のみならず学生や教職員が定期的に利用できるように常設している。
 「自分自身の心身の状態に関心を持つことが、健康づくりの第一歩。時間のある時にぜひ測定して健康管理に努めてほしいと思います」と早坂さんは力を込める。体重や筋肉量、体脂肪率など体の組成を分析できる体組成計を使ってデータを記録し、選手たちの体づくり、トレーニング効果の確認などに役立てるサークルも多く「筋肉量を増やすために、どんな食事をとればいいか」といった相談も寄せられるという。

視力測定機器や、視力検査、血圧、身長体重、体組成計などの機器はいつでも利用可能だ。

 コロナ禍が落ち着いた今、保健管理センターでは学生・教職員共にそれぞれの年代に応じた健康支援、そして将来を見据えた新たな健康支援を模索する。「学生時代、若い頃のダイエットや不摂生な生活は後の人生の健康に大きな影響を与えます。例えば「骨」に着眼した時、40歳台頃から次第に骨密度が低下し骨折しやすくなります。健康で生き生きと元気に過ごすためにも若いうちからの食生活や適度な運動、日光浴等に大事になります。こうした卒業後の人生も見越した啓発や知識の発信も目指していきます」と早坂さん。「充実した学生生活・人生は健康な体があってこそ。自分の心身の健康を大切にしてほしいです」と呼びかけている。

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はやさか まきこ

はやさか まきこ●病院看護師、小学校養護教諭を経て保健管理センターに看護師として常勤。「仕事の中で大切にしているのは、笑顔と優しさ。季節を感じながら学生皆さんの元気な姿や成長を見守ることができるこの仕事が大好きです」

たけだ ゆき

たけだ ゆき●病院看護師、山形大学保健管理センター非常勤看護師を経て常勤。「押しつけではなく、学生さんたちの背中をそっと押してあげられるように話をよく聴きながら一緒に考えるように心がけています」

さとうやすよ

さとうやすよ●大学病院などで経験を積み、2020年から保健管理センターで非常勤看護師として勤務。「チームワークとコミュニケーションを大切に日々学び、技術向上に励んでいます。私自身、学生さんたちに元気をもらっています」

※内容や所属等は2024年3月当時のものです。

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