ささえるひと #15

YU★STEAM

地域の共創拠点として
子どもたちに多様な「知」を直に届ける
「YU★STEAM」が始動

2023.07.30

地域の共創拠点として子どもたちに多様な「知」を直に届ける「YU★STEAM」が始動

技術革新が急速に進み、世の中がめまぐるしく変化する現代社会。新時代を生きる子どもたちへ向け、時代に即した新たな教育方針の推進が進む中、山形大学では地域の子どもたちに多様な知を直に届ける開かれた大学をミッションとした「地域共創STEAM教育推進センター(YU★STEAM)」を令和4年に新設した。主要メンバーの2人に初年度の活動や今後の展開について話を伺った。

STEAM教育を軸とした
「やまだいキッズラボ」が大反響

 STEAM教育とは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・芸術(Art)・数学(Mathematics)の頭文字を合わせたもので、実社会での問題発見・課題解決に活かしていくための分野横断的な教育として、令和元年から文科省が推進している。全国で導入が進む一方で、授業方法が確立されていない、文理融合であるがゆえに高いスキルや専門知識を持った人材が必要、地域的ハンディキャップが生まれやすいなどの課題が立ちはだかる。
 「地域共創STEAM教育推進センター(以下YU★STEAM)」は、まさにそういった課題に立ち向かうべく、山形大学の知や設備を地域にひらき、地域とともに未来を育む拠点として誕生した。新たな世代が得るべき、拡散的思考、課題発見・新価値創造を実践する力。その入り口として、子どもたちの興味の開拓から深化へとつながるプログラムを提供して、山形県全体が地域的ハンディキャップなく発展し、地域の活力につなげることを狙う。  
 初年度は、小中学生向けにSTEAM教育の面白さを体感できる「やまだいキッズラボ2022」をメインに活動を展開。山形大学の多彩な研究テーマを教員から直接学べる計8回のイベントは、予約受付からすぐに定員が埋まる人気で、中には120人ものキャンセル待ちが出るものも。  
 「講義は短く実践重視。実験や体験を通じて、少人数制だからこそできる子ども一人ひとりのアイデアや課題解決力を大切にした」と言うのは、当学博士課程に所属しながらYU★STEAMの運営に携わる安達さん。恩師である栗山教授とともに、学部時代からYU★STEAMの前身となる活動に携わってきた。「なによりも子どもたちの楽しそうな姿を見ると自分も楽しいです。さらに楽しくするにはどうしたらよいか? 来年に活かせることを考えながら取り組みました」と初年度の活動を振り返る。

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確固たる土台の上に
新たな歴史を紡ぎ出す

 イベントのひとつである『どの形がいいだろう?ブリッジコンテスト!』では、ネットを調べれば答えがすぐに分かる時代に、一人の小学生がオリジナルの発想で誰よりも強い構造を作り、その場にいた全員を驚かせた。「正解は一つではないということを知るきっかけになったのでは」と言う栗山教授は、YU★STEAMの前身となる土台を築き上げてきた中核メンバーの一人だ。2008年に誕生した体験型オープンラボ「山形大学SCITAセンター」では責任者に就任し、小中学生の理科教育に貢献する「やまがた未来科学プロジェクト」に邁進。今年で15年目を迎える県内中学校への出張実験は、計133回を超えた。また、9年目となる「ヤマガタステムアカデミー」は、小学高学年から中学生を対象にした中長期の連続講座として定着。これまで多くの卒業生を輩出してきた。  山形大学では、理学部だけでなく工学部や農学部でも、多くの地域連携の活動が堅実に続けられてきた経緯がある。この土台をもとに、YU★STEAMが今後さらに、多くの学部が共創する大学全体のエンジンとして機能していくことにも期待が高まる。

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つながり広がる
2年目の展開に期待

 2023年度は、地元企業との連携事業を強化し、子どもたちが自発的に考え新たな価値を創造する場を産学協働で提供していく。メイン事業は引き続き「キッズラボ」を展開。企画にはよりSTEAM教育の要素を強く取り入れ、学ぶだけでは終わらせない内容を目指していく。さらにイベントは2部制とし回数を増やすことでより多くの子どもたちが参加できるようになる。後半では、教員を目指す山形大学の学生が、企画・運営に参加する計画も進行中だ。
 また、もうひとつのメイン事業となるのが、義務教育における探究型学習との連携だ。市や自治体・教育委員会と連携を強め、探究型学習のサポートや出前授業・講演会・教育研修なども積極的に行なっていく。
 地域連携の強力なエンジンとして、産学連携、そして学内の活動をつなげるYU★STEAM。今後も山形大学の強みを活かした活動に、大いに期待したい。YU★STEAMでは、ホームページにて活動の様子や今後の予定を発信しているので、ぜひチェックしてほしい。

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くりやまやすなお

くりやまやすなお●山形大学学術研究院教授。専門分野は有機化学・科学教育。YU-SDGs推進室副室長。着任以来、理科離れ対策として多くの小中学校であるいは大学訪問で実験教室を実施している。大学提供「Be★らぼ~山大サイエンスカー~」は15年目133校の中学校を訪問。

あだち(いいだ)あかね

あだち(いいだ)あかね●プロジェクト教員(講師)。専門分野は物理化学・STEAM教育。2022年
11月に地域共創STEAM教育推進センター(YU★STEAM)専属の講師に着任。博士後期課程に在籍しながら、講師として子ども向けイベントを企画・運営中。

※内容や所属等は2023年2月当時のものです。

みどり樹

この内容は
山形大学広報誌
「みどり樹」Vol.83
(2023年4月発行)にも
掲載されています。

[PDF/4MB]

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