ささえるひと #20

伊藤眞知子

新理事が語る 山形大学の未来。
学生や教職員の生活をサポート。

2024.10.30

新理事が語る 山形大学の未来。学生や教職員の生活をサポート。

 本学は2024年、創立75周年を迎えた。将来ビジョンに「つなぐちから。山形大学」を掲げ、さらなる発展に向けて理事・副学長といった経営陣の働きに注目が集まる。宮内健二理事(2024年9月15日に本サイトで公開)からスタートした4人の新理事・新副学長へのインタビュー企画。本企画の締めくくりを担っていただく伊藤眞知子理事に、担当する学生支援について展望などを伺った。

就任早々に学生らの気概を実感。
多様性を「尊重したい」。

 2022年4月に民法の定める成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。携帯電話を契約する、クレジットカードを作成するなど、親の同意を得ずにできることが増えた今、本学でも学生の主体的な活動の支援に力を入れる。
 2024年4月に就任した伊藤理事は副学長も兼任し、学生支援を担当。「学生支援」と一口に言っても、その業務は多岐にわたる。代表的な業務の一つは、本学が実施している「学生チャレンジプロジェクト」だ。学生から、大学や地域との関わりを深めるプロジェクトを募集するもので、伊藤理事は「国際交流、地域でのフィールドラーニングなど、学生からさまざまなアイデアが寄せられ、『大学生活を楽しみたい』『大学をもっと盛り上げていこう』という気概を感じました」と話す。

2024年4月入学式後のオリエンテーションでは、新入生に学生チャレンジプロジェクトを紹介し、「主体的に動きましょう」とメッセージを送った。

 伊藤理事は「多様性」を意味するダイバーシティの推進にも取り組む。学生や教職員一人ひとりが自分らしく生き生きと生活できるよう、大学がすべきことを考え対応していく。その一つが「山大JOIN」だ。現在は女性の大学院生だけのネットワークで、研究について語り合ったり、発表会や報告会をしたりと、キャンパスを超えて交流を深めている。「特に理系大学院への進学を希望する女性を増やせれば」と意気込む。
 本学での女性教員や女子学生の割合は高まり、留学生も少しずつ増えている。性別、国籍、障がいの有無等を問わない多様性への理解を浸透させていく。「カミングアウトする、しないは本人が決めることです。LGBTQ(性的マイノリティ)への理解を広げていけたら」とも語る。

好調続く就職率。山形に貢献する
人材の育成にも取り組む。

 学生とのやり取りに関して、伊藤理事はいくつかの課題を挙げる。例えば、学生への安否確認システムの強化だ。災害などの非常時は全学生にメールを送信し安否確認をしているが「すぐに安否の返答を得られないこともあります。パソコン、スマートフォン、タブレットなど複数の端末から応答できる便利なシステムなので、学生から迅速に返答してもらえる仕組みづくりができれば。一人暮らしをしている学生が体調を崩して自宅で倒れていたら大変。健康状態を確認するためにもシステムを活用していきたいです」と考えている。
 本学の近年の就職率は好調で、2023年度、2024年度と2年連続100%を達成している。しかし伊藤理事は、山形県内に就職を希望する学生が限られている点を危惧する。「山形県内の企業が求める人材と、学生をマッチングできるように大学がサポートし、地域に貢献してくれる学生を増やしたいです。キャリアサポートセンターなどで就職活動の悩みに応じていますので、多いに活用してください」と勧める。
 学生はもちろん、教職員の支援も大切だ。ワークライフバランスが重視されている現代、教職員の妊娠、出産、子育て、介護のサポートを充実させ、育児あるいは介護休業を経て職場復帰できる環境も整えていく。「リモートワークの推奨、研究者の事務的な仕事をサポートするスタッフの導入など、できることはまだまだあります」と強調する。

「地域貢献」が浸透している時代。「本学もすでに地域貢献の学びや活動を続けているので、これまで蓄積してきたことを活かして、さらに先に進みたいですね」と話す。

開学75年の歴史を大切に、
新たな道を切り開く。

 「青天の霹靂」と自身も驚く新理事の任命。「就任してから刺激的な日々で、冒険をしているようです」と表情は明るい。本学の学生の印象を尋ねると「のびのびと生活し、一生懸命で真面目。私自身、学生と話して楽しいです」と言う。
 学生の声を直接聞こうと、就任間もなく他の理事や副学長らとともに学生と懇談。学生からは「体育館のあそこが壊れているので見てほしい」「(学生チャレンジプロジェクト以外に)学生に対する研究の支援はないのか」「同じ学部の先輩や他学部の人ともっと交流したい」など多彩な意見が寄せられた。今後も懇談の機会を定期的に設ける考えだ。
 本学のキャンパスは山形、米沢、鶴岡の3市に分散している。「キャンパスを集約した方が効率的という意見もありますが、本学の場合、それぞれのキャンパスに成り立ちや意味があります。遠隔でもオンラインで情報共有や意思疎通がスムーズにできるようになり、昔より分散キャンパスのデメリットは減っているのでは」と考える。
 2025年4月に、本学は新たな学部に相当する「社会共創デジタル学環」を開設。理系と文系の両方の要素を備え、総合的なことを学べる。「さまざまな分野の学部がそろう総合大学ならではの強みを生かせるはず。地域の課題解決につながる学びができます」とPRする。
 「大学は新しいことや尖ったことに挑戦でき、はっきりと発言できるところ。学生には自分の考えを主張してほしいです。社会は変えていいし、変えられます。そういう志を持っている人には面白い大学。新しいことをひらめいたり、発想力を磨いたりできると思います」。

伊藤理事の趣味の一つが読書。中でも、主人公も作者も翻訳者も読者ターゲットも女性の「フェミニストの視点が入っている海外ミステリー小説が面白くて気に入っています」と教えてくれた。

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いとうまちこ

いとうまちこ●理事・副学長(学生支援担当)。上智大学大学院文学研究科社会学専攻後期博士課程中途退学。東北公益文科大学の助教授、教授を経て、2021年4月、名誉教授の称号授与。同年月、山形県男女共同参画センターチェリア館長に就任。2024年4月より現職。東京都出身、山形県鶴岡市在住。

※内容や所属等は2024年7月当時のものです。

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