INTEGRATED REPORT 2022 山形大学 統合報告書2022

地域とつながる山形大学 #03

県内施設に導入した
「有機ELを活かした高臨場感リモート診察システム」

Research研究の取り組み

独創的な研究を推進し、幸福社会の実現を目指すイノベーションを創出

 総合大学ならではの幅広い分野においてさまざまな独創的研究が行われている山形大学では、研究活動の自主性・自律性を大切にし、地域・社会に変革をもたらす研究成果の創出や真理の探究を推進。幸福社会を実現するための幸せの要素となる知を、あらゆる角度から総合的に創出しています。

 近年コロナ禍や医師不足から急務とされる医療現場で、本学の研究成果が活かされている例です。本学の城戸淳二教授が「有機ELを活かした高臨場感リモート診察システム」を開発。山形県酒田市の3つの医療機関で設置・運用を開始しました。このシステムは、現在実用化されている会話のみのリモート診察システムに有機ELを組み合わせ進化させたもので、これまで画質の低さにより難しかった顔色・舌の色・爪の色などの診療を可能にしました。この新システムは、コロナ禍そして無医島でのへき地医療においても住民の安心・安全な生活に不可欠なものです。今後も機能の見直しや充実を図り、医師不足の地域でも安心して暮らすことのできる社会の実現を目指していきます。

飯豊町での豪雨災害調査の様子

オンラインセミナー「山形で考える災害と防災」の様子

果樹農家がつながり支え合う果樹栽培支援「かるほくアプリ」

 次に紹介する研究テーマは防災です。全国各地で災害が多発する昨今、大学の知見を活かし、山形の災害や防災について考える場づくりとして、特別公開オンラインセミナー「山形で考える災害と防災」を開催しました。山形大学災害環境科学研究センターと山形地方気象台から講師を迎え、約150名が参加。学術的観点から災害を紐解き、防災の意識と理解を深める有意義な場を創出しました。2022年度には火山の魅力と災害をテーマにした市民向け公開講座を予定しています。今後もアカデミックな視点から防災を解析し、セミナーや報告会を通じ発信していきます。また、自治体や団体との協力連携を図りながら、県民への普及啓発活動を行うとともに、地域で活躍する防災人材の育成に取り組んでいきます。

 「かるほく未来創造ラボ」は、深刻な状況にある農業従事者の高齢化と減少の課題に対し、山形の子供たちがイキイキと農業で活躍できる未来を描ける社会・教育の仕組みづくりを目指し、自治体と生産者と連携して果樹栽培支援「かるほくアプリ」を開発しました。これは定点カメラで撮影した果実画像や気象データなど農作物の栽培情報を共有するアプリケーションで、霜害や病虫への対策や収穫適期をサポートし、果樹農家がつながり支え合う画期的な仕組みとして活用されています。今後も大学と自治体が継続的に課題に立ち向かい共に解決を目指す体制を強化し、研究とアウトプットを続けていきます。

 山形大学はこうした研究の取り組みを通じ、コモンズでつながる膨大な知から、夢に満ちた研究を長期的視野で醸成し、その研究の発展からイノベーションを創出するシステムを構築しています。