INTEGRATED REPORT 2022 山形大学 統合報告書2022

T O P I C S鶴岡キャンパス

庄内スマート・テロワール
~庄内を持続可能な農村経済圏のモデル地域へ~

食べ物を支える農業は、従事者人口の減少や高齢化によって農地の荒廃や耕作放棄地が増加し、多面的機能を持つ農業・農村の存続が危ぶまれています。そこで、山形大学農学部では、2016年度から寄附講座(食料自給圏「スマート・テロワール*」形成講座)を設立し、農学部附属高坂農場を中心として、庄内地域に食料自給圏を構築するためのプロジェクトに取り組んできました。本プロジェクトが目指している構想は、家畜堆肥の他に、下水道資源、加工残渣などの地域肥料資源もフル活用して土壌の質を改善し、小麦や大豆などの穀物の生産性を向上させるとともに、その規格外品や飼料用トウモロコシ、小麦製粉副産物などを地域飼料資源として有効活用して畜産物を生産し、それらの地域産農畜産物を原料として地域内で加工食品を製造し、地域内の消費者に提供することにより、輸入食料に依存した大量生産・大量消費の経済システムから脱却し、ステークホルダー(農業者、加工メーカー、小売店、消費者等)の協働活動によって、食と農に関する経済を地域内で循環・完結させ、地域住民の消費をベースとした持続可能な循環型農村経済圏(スマート・テロワール)を山形県庄内地域に構築することを目指したプロジェクトです。

【クラウドファンディングや外部資金の活用】
この構想の基幹となる穀物生産に必要なハーベスタ(普通型コンバイン)は高額なため、2021年度までは農機具メーカーからデモ機を借用して穀物を収穫していましたが、加工食品を安定して提供するためには、その原料となる穀物を収穫するためのハーベスタを購入する必要がありました。そこで、クラウドファンディングを活用して、この構想にご賛同、応援していただける皆さまからご寄付をいただき、目標金額を達成することができました。また、日本中央競馬会(JRA)などの外部資金を獲得し、構想の実現に向けて取組みを加速化させています。

*スマート・テロワール
株式会社カルビー元会長・社長の故 松尾雅彦氏が提唱した構想で、地域の風土を活かした強靭で持続可能な循環型農村経済圏を指す。

◯庄内スマート・テロワール HP
https://shonai-smartterroir.com/


山形大学農学部公開シンポジウム
「食料 · 生命 · 環境とSDGs」を開催

2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は17のゴールと169のターゲットから構成されています。山形大学農学部では、これらのゴールやターゲットの実現を目指したさまざまな研究やプロジェクトが展開されています。
2021年10月17日、鶴岡市のグランドエル・サンを会場に、公開シンポジウムを開催しました。一般参加者のほか、農学部地域産学官連携協議会会員にもご参加いただき、特別講演として、人材育成アカデミーローズレーン代表黒田三佳氏による講演が行われました。引き続き、本学部で行われているSDGsに関する3つの取り組み事例の発表および「SDGsと農学-山形大学農学部の挑戦-」をテーマに座談会を行いました。


山形大学オリジナル純米大吟醸
「山形大学燦樹(きらめき)2022」

山形大学オリジナル純米大吟醸酒が完成し、2022年2月1日より販売を開始しました。農学部附属やまがたフィールド科学センターエコ農業部門(高坂農場)で栽培された米を原料に使用した山形大学オリジナル純米大吟醸酒は、2007年から山形大学生協で販売しています。2021年はコロナ禍の影響を受け、醸造を見送りましたが、2022年は酒蔵を奥羽自慢株式会社へ変え、新酒を販売しました。原料米には、高坂農場で栽培された酒造好適米「出羽燦々」を100%使用しており、特別栽培の認証を受け、農薬・化学肥料を慣行より50%以下で栽培しました。
2022年は、1,800本(約356万円)の販売を予定しており、売り上げの一部は、学生への支援として活用されます。