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令和3年度卒業生に対する告辞

 本日、学位記を授与されたみなさん、卒業ならびに修了、おめでとうございます。

 新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行が始まってから、2年が過ぎました。このコロナ禍がいつ終息するのか、先が見えないなかで、みなさんが長い間、大学生活を過ごされたことは、周囲が思う以上に大きな不安やストレスがあったことでしょう。

 社会全体で様々な行動が制限されるなかで、みなさんも、サークル活動をはじめ会食や旅行などを自由に行うことができず、周囲の人達と分断され、時には孤立しているように感じたことが多くあったと思います。それでも、みなさんが挫けることなく着実に勉学や研究を進めて、こうして卒業、修了を迎えられたことは本当に素晴らしいことです。みなさんのこれまでのご努力を心から讃えたいと思います。

 みなさんは、責任ある市民の一員として感染防止に努めながら、卒業や修了という目標に向かって誠実に努力を重ね、見事にそれを成し遂げられました。そのようなみなさんを、私は大変に誇らしく思います。そして、山形大学生として、私たち教職員が胸を張って送り出すことができる方々だと確信しています。みなさんもどうか山形大学で過ごしたこと、ここで成し遂げたことに自信を持って、それぞれの道に進んでください。

 日本人の平均寿命が男女ともに80歳を越え、さらに年々延びていることを鑑みると、みなさんはこれから、21世紀で起こるほとんどの出来事を経験する長い人生を歩むことになるでしょう。そのなかで、テクノロジーの急速な進歩や地球規模の環境変化は続き、私たちがいま、あることが当たり前だと思っているものが無くなったり、予想もつかないもので置き換えられることが、数多く起こるだろうと思います。そのような変化は、私たちの生活の基盤となっている産業や社会制度のようなものから、人間自身の身体的な機能、そして倫理や道徳といった規範意識にまで及ぶかもしれません。

 そのような変化の激しい時代にあって、私がみなさんに期待するのは、これから起こる世界の大きな変化に対して受け身になるのではなく、自分が思い描く幸せな未来を実現するために、様々な人々と共に社会を変えていく主役となってほしいということです。

 社会を変える主役になる、ということは、それほど難しいことではなく、日常のなにげない行為から始まります。それは、社会で起こっていることに関心を持ち、それを自分自身の問題として考えるという行為です。

 私たちの生活は、全てが世界規模の相互作用のなかで成り立っています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、国や地域を越えた人々の活動が、人類史上でこれまでにない規模と速度で行われていることをまざまざと示しました。そして、いま、ウクライナで起こっている戦争は、世界の平和と安全を根底から揺るがす行為であり、人々の間での不和や不信を助長し、分断や対立を一層深めるとともに、世界規模の経済活動やエネルギー供給などにも深刻な問題を引き起こしています。日本で暮らす私たちの生活にも、それは大きな影響を与えています。このように、21世紀を生きる私たちは、世界で起こっていることと無関係で生きることはできません。

 私たちは、自分の生活圏の外でおこっていること、世界各地で起こっていることについて、無関心であってはならないのです。みなさんは、これから新しい環境のもとで、忙しい日々を過ごすことになるでしょう。しばらくは、自分自身のことで精一杯になるかもしれません。しかし、自分が思い描く幸せな未来を実現するために、毎日の生活のなかでも、日本の社会で、そして世界で何が起こっているのか、常に関心を持ってください。そして、地球という運命共同体で暮らす市民の一人として、自分が何を為すべきかを考えて、行動してください。それが、社会を変える主役となるみなさんへの私からのメッセージです。

 最後になりましたが、社会に出てからも、みなさんの大学生活を支えたご家族や友人のみなさまへの感謝とともに、様々な社会からの支援に対する感謝の気持ちを持ち続けるようにお願いします。このコロナ禍のもとで、ふすま同窓会や地域教育文化学部同窓会をはじめとする同窓生の方々、地域の方々や企業各社、そして教職員など大変多くのみなさまから様々な形でのご支援をいただきました。これほど、たくさんの方からご支援をいただいたことで、学生のみなさんにいかに多くの期待が寄せられているのかを、強く感じました。

 この期待に応えて、すべての卒業生・修了生のみなさん一人一人が、明るい未来、より良い社会の実現を目指して、社会の様々な場で活躍することを心から願っております。
 以上で、私の告辞とします。

令和4年3月25日 山形大学長 玉手英利