ホーム > 大学紹介 > 学長室だより > 令和6年10月入学者向け学長メッセージ
このたび、山形大学大学院に入学された皆さん、誠におめでとうございます。山形大学の教職員そして皆さんの先輩となる在学生一同、皆さんの入学を心より歓迎いたします。
皆さんは、学部時代の研究テーマを引き続き突き詰め、いまだに解明されていない新たな知見を発見したい、もしくは、これまで誰もが取り組んでいないテーマを一から研究し、新しい結果を出したいという大きな期待のもと、一人一人が大学院に入学したことと思います。私は大学で遺伝学を学び、皆さんと同じように大学院に進学しました。そこで学ぶうちに、新型コロナウイルスの検査で今当たり前に使われているPCRが、最新の分析技術として導入されました。これは全く新たな分析法だったので、それについての基礎的な知識を改めて勉強し、自分の研究テーマにどのように応用できるかを精一杯考えたことが思い出されます。しかし、私が学生時代に行ってきた研究は、同じ分野の方であるならば、今では誰もが普通に知っていることになりました。
このようにその時は周りから注目される事象であっても、時間が経てばそれが当たり前になります。このたび大学院に入学された皆さんも、ご自身の専門分野において、世界の最先端の研究を学んだあとで、さらにその先を切り拓く研究を進めてほしいと思います。新たな研究課題に挑戦するなかで、時には思うようにデータが出なかったり、自分の仮説は正しかったのか、今のやり方で研究を続けていいのかと悩む時もあるかもしれません。その時は、焦ることなく一呼吸おき、多方面から物事や事象を見てください。熱心な時ほど一方向ばかりが見えてしまうものですが、大学院での学びは、専門知識や技術の習得だけでなく、多面的なアプローチで課題に挑戦し、さまざまな手法を学び、身に着ける場でもあります。
自らに与えられた時間を、自分の研究に割くことができる大学院時代は、人生の中でも最も楽しい時間になるかもしれません。早く結果を出さなくてはならないと気負いすることなく、是非大学院生活を謳歌していただきたいと思います。一方、論文作成や就職活動などでストレスを感じることがあったら、自分一人で抱え込まずに、指導教員や友人、私たち教職員に相談してください。また、皆さんの悩みを解決する手助けとして、各キャンパスに相談窓口やカウンセラーを設けているので、何か困ったときはぜひ活用してください。私たちは皆さんとのつながりを何よりも大切に考え、皆さんの支えになりたいと思っています。
いま、私たちを取り巻く世界はVUCAの時代と呼ばれ、予測不可能で複雑な時代となっています。温暖化に起因したゲリラ豪雨は、いまだに事前の予測も困難で、我々の生活を大きく脅かしております。また、新型コロナウイルスやウクライナ、パレスチナ戦争による物価高騰や水道光熱費高騰は、経済的な影響を与えたばかりでなく、我々の生活そのものを大きく変えました。このような人類社会の存続に関わる問題に我々は正面から向き合い、研究を通じてよりよい社会の実現に貢献していかなければなりません。皆さんがもたらす新たな「知」によって、1つでも多くの社会的課題が解決されることを大いに期待しております。
大学院での生活は、学部時代に比べれば短く感じられるかもしれませんが、自分のことに多くの時間を費やすことができる貴重な期間です。研究のみならず、是非仲間との時間も大切にしてください。同じ境遇を過ごした仲間は、一生の繋がりとなるかもしれません。その繋がりを大切にしてください。
皆さんが、この山形大学で充実した日々を過ごし、自分の可能性を大きく広げることを心より願い、私からの歓迎の言葉といたします。
令和6年10月1日 山形大学長 玉手英利