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平成29年年頭のごあいさつ

あけましておめでとうございます。短い正月休暇でありましたが、教職員のみなさんはすばらしい新年を迎えられたことと存じます。
平成29年の年頭にあたり、一言、ご挨拶申し上げます。
配布資料はこちらをご覧ください。(PDF:277KB)

1、はじめに

 まず、「社会情勢」を振り返ります。昨年のイギリスの国民投票とアメリカでの大統領選挙の結果は、それまでのグローバル化の進行に「ノー」を出し、それぞれの国は「国家主義」の方向に舵をきることになりました。いま世界各地で、新たな潮流が生まれつつあると感じます。
 金融や情報、特にIT、AIなどの科学技術のグローバル化は、これらの動きとは無関係に進行しています。ただ、今までとは異なった状態で、グローバル化は進展するでしょう。
 アメリカ大統領選挙でもう一つ注目すべき点は、マスコミによる世論と実際の国民の選択が異なったことです。これはマスコミによる世論形成のあり方が大きく変わる可能性を秘めています。この多様性を追求する社会で、潜在的な世論をいかに捉えるかが、大きな課題です。

 さて、昨年の山形大学について振り返りますと、大きなところでは、学部改革と大学院改革、第三期中期目標期間のスタートが挙げられます。特に、教育組織の改組では、改革案の作成と文部科学省への説明と申請、そして高校生や関係機関への説明など、教職員のみなさんには多大なご苦労をおかけしました。この場をお借りして、改めて感謝申し上げます。

 昨年末には、平成29年度の政府予算案が決まりました。総額で、97兆円です。国立大学の運営費交付金は20億円減少の1兆925億円でした。山形大学に配分された予算は112億円で、今年度より3億円程度増えています。ただ、退職金など使途が確定されているものが増えており、人件費や日常の活動費となる基盤運営費交付金は95億円と、7千万円程度減っています。大学間での差別化が求められる中で、引き続き厳しい状況にあります。

2、平成29年の方向性

 次に、平成29年の山形大学としての方向性について述べます。

 1つ目は、「教育改革の着実な実施」です。
 これまで2年間以上にわたり、基盤教育を含めた本学の教育改革を進めてきました。今年の4月には、5学部と2研究科で新たな教育が始まります。これは、学生に将来、社会で活躍してもらうために、今、学んでほしい教育カリキュラムです。これらの教育カリキュラムを大切にして、より良い教育を実践しなければなりません。
 学部教育においては、新1年生は新しいカリキュラムで、2年生以上は今までのカリキュラムで履修することとなります。とはいえ、一人ひとりの学生にとっては、自分のカリキュラムであり、新旧の区別はありません。これからの3年間は新と旧との2つのカリキュラムを着実に実施しなければなりません。その上で、山形大学で学んで本当に良かったと思ってもらうことが必須です。みなさんには、この山形大学の教育改革を成功させるようご尽力をよろしくお願いします。

 2つ目は、「学術研究院の定着」です。
 学術研究院が発足して、2年を過ぎようとしています。これまでは、過渡期とも言えます。学術研究院の存在を教職員のみなさんに認識してもらうと同時に、その存在により発生するであろう課題の抽出時期でもありました。
 今年は、この学術研究院の定着を目指します。具体的には、学術研究院の特徴を活かして、研究組織や教員評価のあり方を検討します。それらによって、山形大学の教員組織としての学術研究院を実質化でき、特徴を出せるものと考えています。

 3つ目は、「キャンパスの自立化」です。
 教育活動や学生支援は、可能な限り、学生の近くで企画し、実施することが効果的です。山形大学の4つのキャンパスでは、それを意識し、それぞれ独自の特色ある教育を実施しています。この特徴をさらに推進するには、4つのキャンパスの自立化が必要となります。
 これまで、大学の運営に関する各キャンパスと法人本部の役割を整理してきており、各キャンパスのことは、できるだけ各キャンパスで実施できるように、そして法人本部は全学の調整役を果たす方向で進んできています。
 昨年の4月に法人部局と大学部局を整理し、経営組織と教学組織を明確化しました。
 教学に関しましては、教育担当副学長を全学の責任者とし、統括教育ディレクターとともに全学のカリキュラム編成と調整にあたってもらっています。
 一方、経営の面では、各キャンパスの自立化と法人本部の調整とのバランスをとれるようにしていきます。昨年から、収入と支出の点での自立化の試みを始めています。今年は、さらに各キャンパスにおける収入と支出の予算と決算管理が進むようにしていきます。
 既に述べましたように、大学全体の基盤運営費交付金は年々減少しています。そのような中で、外部資金などによる収入源の多様化と収入の増加を考えていかなければなりません。法人本部はもちろん収入源の多様化と収入増に関する仕掛けをしていきますが、各キャンパスにおいても、キャンパス特有の収入の道を探っていただきたいのです。

 4つ目は、「研究環境の整備」です。
 良い教育の根底には、しっかりした研究が必要です。研究は、教員個人の興味と意欲がなければ進みません。組織の役割は、教員の研究環境整備です。
 具体的には、時間、空間、お金、活動、広報などがあります。限られた資源の中で、多くの研究者が恩恵を受ける仕組みを考えていきます。みなさんも、良い支援策がありましたら、是非ご提案ください。

3、仕事にあたって

 次に働き方についてお話します。

 まずは、「楽しい職場づくり」です。
 近年、教職員の数が減少し、業務量が増えています。そんな中でも、仕事をする上で必要なのは、楽しい職場であることです。私たちは、人生の多くの時間を職場で過ごします。その時間を如何に有意義に、楽しく過ごすかが、教職員のみなさんにとって重要です。
 業務が増え、仕事に余裕が無くなると、とかく楽しい職場にはなりません。知恵をしぼり、仕事の仕方を工夫することによって、仕事に時間的余裕を作ることです。具体的には、業務の流れの整理と業務自体の整理が必要になります。業務の流れの中で、必要性が低いところを削ることによって時間的余裕を作れます。教職員のみなさん一人ひとりが必要性の低い業務自体を無くすことによって、余裕を作れます。時間を意識して仕事をしましょう。削減によってできた余裕の時間を休暇にあてたり、じっくり考える時間にあてたりしましょう。
 楽しい職場づくりは、周りに期待してもできるものではありません。教職員のみなさん一人ひとりがその気になり、取り組まなければなりません。自分自身の労働生産性を向上させ、余裕を作り、楽しい職場を作りましょう。

 そして、「挑戦と失敗」です。
 楽しい職場を作った上で、新たなことに挑戦しましょう。昨年度までと同じかどうか、他の大学ではどうかなどを気にせず、目の前のことに真っ直ぐに向かいましょう。ときには、この業務はなぜ必要なのか、何のためにこの仕事をするのかを考えましょう。
 新たなことに挑戦すれば、失敗はつきものです。まずは、失敗を恐れずに行動しましょう。そして、余裕があれば、失敗したときの対処法も考えましょう。この失敗したときの対処方法を準備することは主に年長者の役割です。失敗を前提とした業務の仕組みを考えていきましょう。

4、おわりに

 今日のレジメの裏側に、山形大学の使命と基本理念を挙げています。使命は、短い3つのキーワード「地域創生」、「次世代形成」、「多文化共生」です。今年もこれを常に心がけながら、仕事を進めて下さい。
 これからの1年間、より良い山形大学を目指して、みなさんひとりひとりが健康で、余裕を持ちながら、楽しく仕事ができることを祈念しまして私の年頭の挨拶とします。