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2020年 年頭のごあいさつ


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1. はじめに

 新年明けましておめでとうございます。教職員のみなさんは健やかな新年を迎えられたことと存じます。
 世界に目を向けますと、昨年、多くの国で発生した大規模デモに代表されるように、世界各地で社会情勢の不安定な状況が続いています。国内の政治体制は安定していますが、長期政権の弊害も目立つようになっています。社会の大きな転換期現象が地球全体で起こっているようにも思えます。

 大学教育も、学ぶ手法や考えをまとめる手法の点で大きな転換期を迎えています。学ぶ手法の点では、グーテンベルクによる印刷革命に次ぐ、大きな変化の最中にあります。印刷革命以前の学問の伝授は口伝によって行われていましたが、印刷革命以後は教科書を使った形へと大きく変化しました。私も教科書を使って学んできた世代です。それが、今、紙の教科書による学問の伝授が少なくなりつつあります。
 また、考えをまとめる手法に関しても、古くは筆やペンによって考えをまとめていました。しかし、私の世代からペンがキーボードにかわり、パソコンの画面を見ることによって考えをまとめるようになりました。そして、今、大学一年生を見ていると、キーボードと画面で考えをまとめる手法とは異なる手法で考えをまとめているように見えます。きっと、デジタルネイティブ特有の新しい手法による考えのまとめ方に変化しているのだと思います。
 大学入試においては、中教審、国大協、文科省等で長く、多くの議論をしてきた入試改革は、実施直前になって延期になりました。入試そのものの是非が問われる時期にきています。

 これらのことを考えると、社会も、教育界も、大きな転換期にあります。新しい社会、新しい教育のあり方に大いに期待したいところです。

 ところで、来年度の政府予算案が決まりました。評価による配分はまだ公表されていませんが、来年度の山形大学への運営費交付金は今年度と較べて大きな変化はないと予測しています。ただ、国立大学に対する「評価」を使った予算配分へのシフトが加速しています。

 

2.山形大学のこれまでとこれから

 さて、平成26年に学長に就任して以来、大学経営の基本方針として「学生目線の大学創り」「調和の取れた大学創り」「存在感のある大学創り」の3つを掲げ、「自立分散調和型の一歩先をゆく大学経営」を目指してきました。みなさんのご努力により、各分野で成果を上げてきています。改めてみなさんに感謝を申し上げます。私たち現執行部の任期は、3ヶ月を残すばかりとなりましたが、最後の仕上げに力を注いでまいります。次期執行部へのスムーズな引き継ぎとなるよう、私たちが重視して実施してきたことと残された課題などについて簡単にまとめます。

 教育の点では、安田理事を中心にして大きな変化を実現させています。学籍番号のランダム化、基盤力テスト、それに学部改組に伴う対応、大学院改革への道筋など多くの実績を上げてきています。学生支援の点では、事件や事故などがありましたが、広く学生の声を拾う仕組みを構築し、学生の声を詳細に分析して学生のケアに役立てています。学生目線による山形大学づくりも実現しつつあります。今後は、社会の変化をリードする新しい教育方法を開発することが課題になります。

 研究の点では、久保田理事を中心に様々な取り組みを推進しています。研究ディレクター制度は山形大学の研究力アップに貢献しています。科研費の伸びについては、難しい状況にありますが、研究拠点の整備などにより、優れた研究論文が増えています。近い将来における科研費の伸びに向けた地固めができつつあります。研究成果の発信をとおして、存在感のある山形大学づくりが実現されつつあります。
 病院経営は順調に進んでいますし、重粒子線がん治療装置の運用開始に向けての準備も進んでいます。

 社会連携は大場理事を中心にして成果を挙げています。共同研究などの外部資金は大きく増加しております。EM・IRは順調に整備されてきており、他大学に良い見本を示せています。入試は本年からインターネット出願を採用します。新しい入試についての文科省の方針がめまぐるしく変わる中、本学では慎重に対応策を考えています。入試は大学の重要事業なので、教職員のみなさんが一致して業務にあたって下さい。 

 財務・施設・リスク管理は小島理事を中心に着実に進展しています。特に、目的積立金を作れる財務体質ができてきています。会計規則の改正も進み、国の時代からの脱皮の第一段階をクリアしました。さらに業務の改善を進めていくためには、支出に偏りすぎている規則や慣習を収入重視の思考・業務に転換することが必要です。それと同時に、納品書や出張命令書などの紙ベースの古い仕組みも変える必要があります。
 施設の面ではかなり整備が進みましたが、設備の更新が残された課題となっています。

 総務・広報は阿部理事を中心として精力的に取り組んでいます。働き方改革は、勤務時間の柔軟化やリモートワークなどが進みつつあります。今後は、より多様な働き方の整備も必要となります。また、総務関係の業務において、紙を使う作業がまだまだ多いのが現状で、大学全体で昨年度使用した紙を積み重ねると、2000mの厚さにもなり、蔵王山の高さにも匹敵するほどです。デジタル化の推進などによる業務の削減が喫緊の課題です。紙の削減に向けて、「蔵王から千歳山に」のキャッチフレーズで、ぜひそれを実現してください。
 広報の点では、新聞やテレビを媒体とする広報活動は十分に充実しています。さらに、学内誌「ぱれっと」による学内広報活動の点でも大きく進展しています。今後はグローバル化とネット社会を先取りした形の広報をさらに強化することです。

 経営に関しましては、「学術研究院」、「法人部局と大学部局の分離」の仕組み作りに重点を置いてきましたが、大学のガバナンスの点で成果が現れ始めています。特に、教員の採用、昇任、配置、評価などは学術研究院とキャンパス長との連携で順調に進んでいます。「キャンパスの自立化」に向けた取り組みは、経営に関する裁量権をできるだけ教育の現場の近いところに置き、4キャンパスそれぞれの特徴を十分に発揮できるようにとの思いで進めてきました。具体的には、学長権限のキャンパス長への委譲、授業料をキャンパスの収入に、そして教員人件費をキャンパスの支出にすることなどです。
 これら「学術研究院」、「法人部局と大学部局の分離」、「キャンパスの自立化」の3つをキャンパス長の協力の下に進めることができました。これによって、調和のとれた大学経営の形が整ってきています。
 今後は、これら3つの仕組みを、より良い山形大学の経営に活用する段階に移ります。

3. 仕事の仕方

 「新しい挑戦をしましょう。それには、失敗はつきものです。また、挑戦をするには業務の削減が不可欠です」と、これまでの年頭の挨拶などでみなさんにお願いしてきました。今年も、これを改めて、みなさんにお願いします。
 「挑戦、失敗、業務の削減」。これらを実現するには、みなさんが、習慣やマインドの点において、公務員気質からの脱却をはたさなければなりません。「例年やってきたことだから、当たり前のごとく今年もやる」という、いわゆる前例主義を改めましょう。書類を作るにも、目の前の仕事をするにも、ちょっと立ち止まり、なぜこれをやるのかを考えてみましょう。そして、必要性が少ないと思ったら、思い切ってその業務をやめましょう。
 新しい業務がどんどん増えてきます。増える量以上に減らしていかないと、大変なことになりますし、現状はその大変な状態にあると思います。

 

4. おわりに

 「地域創生」、「次世代形成」、「多文化共生」。この三つが山形大学の使命です。この三つの使命を合い言葉に、今年も楽しく仕事をしましょう。

 私自身は学長として残りの3ヶ月を全力で務める所存です。社会全体が大きな転換期を迎えている今だからこそ、その先を見越して、変化を続けなければなりません。教職員のみなさん一人ひとりが、その原動力です。より良い山形大学を目指して、一緒に頑張っていきましょう。4月には玉手新学長が就任します。新体制のもとで、さらに山形大学が大きく飛躍し、発展していくことを願っています。みなさん全員が健康で、楽しい1年でありますことを祈念しまして、私の年頭の挨拶といたします。