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平成30年度(2018年度) 新入生に対する告辞

 本日、山形大学に入学された新入生のみなさん、入学おめでとうございます。山形大学の教職員一同は、今日から、ともに学ぶ仲間として、みなさんを、心から歓迎します。
 また、ここにご列席のご家族のみなさん、本日のこの佳き日を迎えられましたこと、誠におめでとうございます。大学では、これまでの高校生活とは異なり、我々は学生を1人の大人として接します。ご家族のみなさんにおかれましても、これまでより少し距離を置いて、彼らの大人としての判断と行動を温かく見守っていただきますようお願いします。 

 さて、これからみなさんが学ぶ山形大学について紹介します。創立は、明治11年の山形県師範学校までさかのぼります。140年前です。今では、6学部、7研究科からなる東日本有数の総合大学です。小白川、飯田、米沢、鶴岡の4つのキャンパスを有し、山形県全域が学びの場となっています。山形大学は、大学の使命として、「地域創生」、「次世代形成」、「多文化共生」の3つを掲げており、その使命を基盤として、学問に励み、自分自身を磨くひとびとが集う場所です。学生数は9000名、教職員は3000名です。卒業生は10万人を超え、先輩たちは国内外で活躍しています。 
 このような山形大学で、みなさんの学びが始まります。本日は、学びについて、3つの視点からお話しします。「学びの動機」、「学べる幸せ」、「大学での学び」の3つです。 

 まずは、「学びの動機」についてです。みなさん1人ひとりにとって、大学での学びの動機は一様ではないでしょう。目的を持って入学した人、何となく入学した人、大学で目的を探そうとしている人など、様々であろうと思います。
 私自身の話をさせていただきます。昭和43年、今から50年前に、今日のみなさんと同じように、この山形大学工学部繊維工学科に入学しました。当初、繊維工学は自分にとってそれほど興味がある分野ではありませんでした。したがって、3年生までの成績は自慢できるものではありませんでした。その後、卒業研究で、指導教員から与えられたテーマは、繊維を作るプロセスの原理を探求するものでした。研究を始めると、次第に面白くなり、気がつくとすっかり夢中になっていました。以来、研究者人生40年「どのようにして液体が流れるか」「どのようにして固まるか」に没頭しました。幸せでした。そしていつの間にか、山形大学の学長になっているわけです。自分でも予想もしない人生になりました。
 私の経験から言えることは、きっかけは偶然でも、夢中になれることを見つけられたら、そしてそれに没頭し探求し続ければ、いつかは頂上に立てる。それが自信になり、また新たな挑戦につながっていく。そのきっかけをチャンスに変えるのは、自分の気持ちと行動です。厳しい受験を乗り越えた強さを持つみなさんには、自信を持って前に進んで欲しいと思います。

 2つ目は、「学べる幸せ」です。今、みなさんがここにいるのは、色々な支えがあってのことです。これまでお世話になった先生、家族、友人などです。そして、山形大学を創設した先人たちもそうです。
 今日は、みなさんがこれから学ぶ小白川キャンパスの成り立ちを紹介します。小白川キャンパスの前身は旧制山形高校です。大正の中期、いまから100年ほど前に、山形高校の設立運動がはじまりました。まもなく山形高校の設立を、国が決定しました。土地、建物、設備などの経費を山形県と山形市で予算化したのですが、必要な経費には届かず、県内の資産家に寄付をお願いしました。しかし、それでもなお、資金が足りず、残りの必要なお金を県民特別税として徴収しています。この県民特別税は、県内に住む各世帯に割り当てたものです。まさに、山形高校設立はすべての県民の悲願だったのです。山形県民の支援がなければ、今の小白川キャンパスは存在していません。
 小白川キャンパスについてお話ししましたが、山形大学の4つのキャンパスいずれにも、同様のヒストリーがあります。入学生のみなさんは、地元の人の献身的なご尽力により創立されたキャンパスで、学生生活を送るということを、意識していただきたいと思います。
 さらに、みなさんがこれから学ぶ知識は、先人がいろいろなことに疑問を持ち、ひとつずつ解決し、真理となり、知識として、代々、我々に引き継がれてきているものです。長い年月、多くの努力のもとに、新たな学びが成り立っています。
 このように、みなさんは、時代を越えた、多くの人の想いの上に、学ぶことができています。
 これが「学べる幸せ」です。 

 3つ目は、「大学での学び」です。
 みなさんはこれまで小中高で勉強してきました。その勉強の中心は先生から教えてもらうことにあったと思います。大学ではこれまでとは異なり、自ら学ぶことになります。1つの分野に熱中し、その分野で世界のトップにまで自分を高めてから、他の分野の学びに手をつけるような人もいます。また、広く学び、多くを理解してから探求する分野を決めて、その分野に邁進する人もいます。あるいはこれらの両方のスタンスをとりながら学びを進める人もいることでしょう。いずれにしても、大学での学びは、学びのスタイルを自分で考え、自分で決めることにより成立します。そのときに鍵になるのは、情熱です。みなさんのような若者がいったん情熱をもって学び始めると、自分が考えているよりも、高い能力を発揮します。周りの人の想像も、はるかに越えることができるのです。
 我々山形大学の教職員は、みなさんの情熱を引き出すため、多種多様なチャンスを作り、みなさんの心に火をつけようとします。みなさんも、これまでの自分にとらわれず、いろんなことに挑戦し、ここでしかできない学びに出会ってください。
 大学の教員達は世界一流の研究者達です。教員はそれぞれ、研究の専門分野を持っていて、日夜、研究に邁進しています。ただ、必ずしも教えることの専門家というわけではありません。したがいまして、講義には、教員と対等意識をもって参加して欲しいのです。みなさんが講義を受ける時には、あらかじめ自分の考えをもって教室に向かいましょう。教員の話と自分の考えとを比較しながら講義に参加することが大切です。そして、疑問を持ったときにはその気持ちをぶつけ、教員の話に感動したときは、拍手するなどして、素直にその気持ちを表してください。そうすれば、教員達も講義にさらに磨きをかけるでしょう。

 以上、学びについて3つの視点から話をしました。1つ目は「学ぶ動機」です。学ぶきっかけは偶然でも、夢中になれることを見つけ、それに熱中してください。2つ目は「学ぶ幸せ」です。みなさんの学びは多くの方々の想いと歴史の上にたっています。3つ目は「大学での学び」です。学びの立ち位置を自分で考え、自分で決めて、行動しましょう。 

 大学院に入学されたみなさん。みなさんは、学生生活の多くの時間を研究に費やすこととなります。研究は狭い分野をより深く掘り下げます。「自分で新しい分野を開拓する」という自負をもって研究にあたってください。若者はとかく自分の能力を過小評価しがちです。しかし、研究にひたすら情熱をかたむけることによって、みなさんの能力はみなさんが考えているより、はるかに高くなります。まずは、自分の能力に自ら限界を設けないでください。

 大学院修了後のことに視点をおきますと、社会に出て重要となることは、研究成果そのものよりは、その研究のプロセスの中で培った、手法や考え方、さらに学び続ける習慣です。それらは、研究に没頭するなかで身につくものです。また、自分の研究分野だけでなく、幅広い分野に関心を持つことも、人間としての成長と深化には大切なことです。山形大学の大学院で是非その力を身につけてください。 

 さて、新入生のみなさん。今日から、山形大学の学生としての生活がスタートします。どのような物語を描くかは、みなさんの「こころざし」次第です。山形大学で、何を学び、何を感じ、誰と出会うかによって、みなさんの人生は大きく変わっていきます。どうか、みなさんの目線を、前へ、外へ、上へ、向けて下さい。 
 結びに、みなさんの山形大学での学生生活が、真に豊かで、充実したものとなることを心から祈念しまして、私の歓迎の言葉といたします。  

平成30年(2018年)4月3日 山形大学長 小山清人