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2019年度 新入生に対する告辞

 本日、山形大学に入学されたみなさん、入学おめでとうございます。みなさんは今日から我々の仲間です。山形大学を代表しまして、みなさんを心から歓迎します。

 ここに、ご列席のご家族のみなさん、本日のこの佳き日を迎えられましたこと、誠におめでとうございます。大学では、新入生のみなさんの立場が、「生徒」から、「学生」に変わります。我々は「学生」をひとりの責任ある人間、「大人」として接します。ご家族のみなさんにおかれましても、これまでより少し距離を置いて、学生の大人としての判断と行動を温かく見守っていただければと思います。

 さて、山形大学は、1878年、山形県師範学校の創立が出発点です。今から141年も前です。今日では、6学部、7研究科からなる東日本有数の総合大学です。学生数は9000名、教職員は3000名です。卒業生は10万人を超え、先輩たちは各方面で活躍しています。
 このような山形大学で、みなさんの学びが始まります。本日は、学長として、この学びについて、3つの視点からお話しします。「学ぶきっかけ」、「学べる幸せ」、「大学での学び」の3つです。

 まずは、「学ぶきっかけ」についてです。みなさん1人ひとりにとって、大学で学ぼうとしたきっかけは様々であろうと思います。
 私自身の話をさせていただきます。今から51年前に、今日のみなさんのように、私もこの山形大学に入学しました。工学部繊維工学科でした。実は当初、繊維工学は自分にとってそれほど興味がある分野ではありませんでした。したがって、3年生までの成績は自慢できるものではありません。その後、卒業研究で取り組んだテーマは、繊維を作る原理を探求するものでした。研究を始めると、次第に面白くなり、気がつくとすっかり夢中になっていました。以来、研究者人生40年「どのようにして液体が流れるか」「どのようにして固まるか」に没頭しました。幸せでした。そしていつの間にか、山形大学の学長になっているわけです。自分でも予想もしない人生になりました。
 私の経験から言えることは、きっかけの如何にかかわらず、夢中になれることを見つけられたら、そしてそれに没頭し探求し続ければ、たとえ小さな山でも頂上に立てる。するとそれが自信になり、より高い山の頂きを目指す新たな挑戦につながっていきます。きっかけをチャンスに変えるのは、自分の気持ちと行動です。厳しい受験を乗り越えた強さを持つみなさんには、自信を持って前に進んで欲しいと思います。

 2つ目は、「学べる幸せ」です。今、みなさんがここにいるのは、色々なひとの支えがあってのことです。これまでお世話になった先生、家族、友人などです。そして、山形大学を創設した先人たちもそうです。
 今日は、米沢キャンパスを例に紹介します。今から110年以上前、米沢で国立の高等工業学校の誘致活動が行われました。設置に必要な経費の約1/3が、山形県、置賜地域の市町村、そして個人の方々からの寄付で準備されたそうです。
 キャンパスの敷地に関しては、もとは武士の子孫が住む住宅地でした。そこに住んでいた人々は、自分たちで話しあって、国の学校を誘致するためにと、土地をまとめて空き地にして市に差し出したのです。そして、自分たちは米沢市内の別の場所に、それぞれ引っ越して行きました。当時の人々のすばらしい「志(こころざし)」と、自己犠牲の精神がなければ、今の米沢のキャンパスはありません。
 米沢キャンパスについてお話ししましたが、山形大学の4つのキャンパスいずれにも、同様のヒストリーがあります。新入生のみなさんは、地元の人の献身的なご尽力により創立されたキャンパスで、学生生活を送るということを、意識していただきたいと思います。
 このように、みなさんは、時代を越えた、多くの人の想いの上に、学ぶことができています。これが「学べる幸せ」です。

 3つ目は、「大学での学び」です。
 みなさんのこれまでの「勉強」は、先生から教えてもらうということが中心であったと思います。大学では、これまでとは異なり、自ら学ぶ「学習」へと学びの姿が変わります。
 大学での学びは、そのスタイルを自分で考え、自分で決めることにより成立します。そのときに鍵になるのは、情熱です。みなさんのような若者がいったん情熱をもって学び始めると、自分が考えているよりも、さらに高い能力を発揮します。
 我々山形大学の教職員は、みなさんの情熱を引き出すため、多種多様なチャンスを作り、みなさんの心に火をつけようとします。みなさんも、これまでの自分にとらわれず、いろんなことに挑戦し、ここでしかできない学びに出会ってください。

 以上、学びについて3つの視点から話をしました。1つ目は「学ぶきっかけ」です。きっかけはどのようなものであっても、夢中になれることを見つけ、それに熱中してください。2つ目は「学ぶ幸せ」です。みなさんの学びは多くの方々の想いと歴史の上にたっています。3つ目は「大学での学び」です。学びの立ち位置を自分で考え、自分で決めて、行動しましょう。

 大学院に入学されたみなさん。みなさんは、学生生活の多くの時間を研究に費やすこととなります。研究は狭い分野をより深く掘り下げます。「自分で新しい分野を開拓する」という自負をもって研究にあたってください。研究にひたすら情熱を傾けることによって、みなさんの能力はみなさんが考えているより、はるかに高くなります。まずは、自分の能力に自ら限界を設けないでください。
 大学院修了後のことに視点をおきますと、社会に出て重要となることは、研究成果そのものよりは、むしろ研究のプロセスの中で培った、手法や考え方、さらに学び続ける習慣です。それらは、研究に没頭するなかで身につくものです。山形大学の大学院で是非その力を身につけてください。

 さて、新入生のみなさん。今日から、山形大学の学生としての生活がスタートします。どのような物語を描くかは、みなさんの「志(こころざし)」次第です。山形大学で、何を学び、何を感じ、誰と出会うかによって、みなさんの人生は大きく変わっていきます。どうか、みなさんの目線を、前へ、外へ、上へ、向けて下さい。
 結びに、みなさんの山形大学での学生生活が、真に豊かで、充実したものとなることを心から祈念しまして、私の歓迎の言葉といたします。

平成31年(2019年)4月3日 山形大学長 小山清人