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令和4年度 新入生に対する告辞

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。また、みなさんをこれまで支えてこられたご家族のみなさまにも、心からお祝い申し上げます。本日、新入生のみなさんと一堂に会し、一人一人のお顔を見ながら、令和4年度入学式を挙行できますことは、山形大学にとって大きな喜びであります。山形大学の教職員とみなさんの先輩となる在学生一同は、みなさんを同じ学びの場に集う新たな仲間として、心から歓迎します。

 新型コロナウイルス感染症によって、多くの社会的活動が制限されるなかで、みなさんは様々な困難を乗り越えて、山形大学に入学するという目標を達成されました。いま、新しい生活を始めることに対して、大きな期待とともに戸惑いや不安もあるかもしれません。しかし、これまでみなさんが努力して成し遂げたことに自信を持って、コロナ禍の下でも臆することなく、自分が思い描く新たな目標に挑戦してください。

 さて、これからみなさんの学びの場となる山形大学についてお話しします。山形大学の起源は、いまから144年前の明治11年に開校した山形県師範学校まで遡ります。この年は、西南戦争が終わった翌年で、日本が明治維新の動乱期から近代的な国家へと歩み始めた時代でした。その後、山形県師範学校の流れを汲む山形師範学校を含めて明治から昭和の時代にかけて山形県内で設置された5つの高等教育機関を母体として、山形大学はいまから73年前の昭和24年に開学しました。これは第二次世界大戦が終わって4年が過ぎ、日本が戦争の惨禍からようやく復興を始めた時代です。
それから、山形大学は6学部、6研究科を擁する東日本有数の総合大学として大きく発展し、いまでは10万人を超える卒業生が社会の様々な場で活躍しています。そして、令和の時代になり、山形大学は、地域創生、次世代形成、多文化共生を大学の使命として掲げ、持続可能な幸福社会を実現することを基本目標として、教育と研究、そして社会と共により良い未来を創り上げる、社会共創に全学を挙げて取り組んでいます。

 いまお話ししたように、山形大学とその母体となった学校は、世界が大きく変わる時代に創設されました。その時代に匹敵するような大きな変化が、いま起こりつつあると、私は思います。社会システムのデジタル化が急速に進み、近い将来、現実空間と仮想空間が融合した世界で生活することが当たり前の社会が実現すると言われています。Society5.0と呼ばれるその未来社会では、人工知能(AI)、ロボットなどの先端技術によって、様々な社会の課題が克服され、一人一人が幸せになる社会が訪れることが期待されています。一方で、新型コロナウイルス感染症の世界的流行やウクライナで起こっている戦争は、人々の孤立や社会の分断を引き起こし、世界を一層不安定なものにしています。私たちはいま、Society5.0のような未来社会へ向かうのか、あるいは疫病や戦争で混乱が続くディストピアに向かうのか、その分かれ目に立っていると言えるでしょう。

 このような変化の時代に、大学に入学するみなさんに伝えたいメッセージが二つあります。

 一つ目のメッセージは、みなさんは社会を動かすプレイヤーであるということです。大学はみなさんにとって社会に出るための通過点ではありません。大学での何年間かの勉強のあとで、社会に出て活躍する、という考え方は既に過去のものとなっています。今年4月から成人年齢が18歳に引き下げられ、社会的にもみなさんは独立した個人として認められました。自分がやりたいと思うことを、大学卒業まで待つ必要はありません。みなさんは自分が思い描く未来社会を実現するために、学生であっても、社会においては自立したプレイヤーとして行動できるのです。

 みなさんは、これからそれぞれの学部や大学院のカリキュラムに従って高度の専門性を身につける学習を行います。その中で、自分が求める幸せな未来とはどのようなものか、その中で、自分はどのようなプレイヤーとなるのか、そしてそのために自分は何を学ぶべきなのかについて、深く考えてほしいと思います。

 みなさんの先輩である在学生は、研究に参加して、社会を変える新たな知を生み出すプレイヤーとして大きな力を発揮しています。また、授業で学んだことを出発点として地域での事業を自ら起こしてプレイヤーとして活躍している先輩もいます。このように、大学では様々なプレイヤーになるチャンスがたくさんあります。授業に留まらず、これまで興味を持っていなかったこと、別の世界だと思っていたことにも積極的に挑戦して、自分が活動する世界を大きく広げてください。

 二つ目のメッセージは、人と人のつながりを大切にしてほしいということです。山形大学には、日本各地、世界各国から、様々なバックグラウンドを持つ人たちが集っています。みなさんが様々な活動に積極的に取り組むほど、年齢や価値観、言葉や文化などが自分と違う多くの人たちとの関係が生まれ、みなさん自身に新たな可能性をもたらします。そして、大学で知り合った仲間との友情や地域での活動で出会った人たちとのつながりは、その後の生涯にわたっての財産となります。

 そのために、コロナ禍の下でも、山形大学では、キャンパスでの対面での学びを重視しています。例えば、この入学式で私がお話ししたことを、ウェブ配信で聞いても、みなさんが受けとる情報量は変わりません。しかし、これから学びを共にする仲間と、同じ場所で同じ時間に入学式に参加することは、心の在り方に大きな違いをもたらします。みなさんも感じているように、自分の存在を認識している他者が傍らにいる、というつながりの感覚が、私たちの心にとって極めて重要なのです。これから始まる対面での学びを大切にするために、皆さん一人一人が感染防止において自分が何をすべきかを考えて、キャンパスライフを過ごされるようお願いします。

 大学の中で、みなさんは一人ではありません。必ず、自分の存在を気にかけてくれる他の人が傍らにいます。これから多くのことを経験する中で、時には自分一人では解決できないことや、苦しいこと、つらいことに直面するかもしれません。そんな時は、友人や、私たち教職員に相談してください。私たちはみなさんとのつながりを何よりも大切に考え、みなさんの支えになりたいと思っています。コロナ禍の下でも、みなさんが安心して大学生活を過ごせるように、山形大学の教職員一同、全力でサポートしていきます。

 みなさんが、山形大学で充実した日々を過ごされることを心より願い、私の歓迎の言葉といたします。

令和4年4月8日 山形大学長 玉手英利