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令和5年3月卒業者・修了者向け学長メッセージ

本日、学位記を授与されたみなさん、卒業ならびに修了、誠におめでとうございます。すべての卒業生・修了生のみなさんに、心よりお祝いを申し上げます。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行が始まってからの3年間、みなさんは、大学生活で夢をもって取り組もうとしたことができなくなり、不安や焦りのなかで過ごした日々も多かったことと思います。また、対面での活動が制限されるなかでの勉学や研究では、時には思うようにことが進まず、挫けそうになったこともあったかと思います。

それでもみなさんが多くの困難を乗り越えて、着実に自分の目標に向かって努力を積み重ね、こうして卒業、修了を迎えられたことは本当に素晴らしいことです。私たち教職員一同、みなさんのこれまでの努力を心から讃え、胸をはって社会に送りだしたいと思います。みなさんもどうか山形大学で過ごしたこと、ここで成し遂げたことに自信を持って、それぞれの道を歩んでください。

さて、みなさんがこれからの人生で、周囲の人から、必ず何度かは聞かれると思う質問があります。それは「あなたは大学で何を学びましたか?」という質問です。そのときにみなさんはどのように答えるでしょうか?

一人ひとりの答えは様々で、経済学を学んだという人もいれば、デジタルスキルを身に付けたと答える人もいるでしょう。この問いに対する正解はありませんが、私はこれまで、大学で学んだのは学ぶことです、と答えてきました。

私は大学で遺伝学を学びましたが、その当時は新型コロナウイルスの検出で用いられるPCRという技術はありませんでした。卒業後、10年ほどたってPCRが実用化され、自分の仕事で使うことになって、はじめてその原理から応用までを学びました。その時に役に立ったのは、大学で学んだ知識よりも、大学で身に付けた「学び方」でした。それは自分にとっての課題が何かを理解し、それを解決する方法をみつけるという、みなさんが実践した学びの方法です。私と同じように、みなさんにとっても、大学で「学ぶことを学んだ」、言い換えれば、「学ぶ力」を身に付けたことが、大学教育で得た最大の財産であると言えます。

現代のような変化が激しい時代においては、学校で学んだ知識は急速に陳腐化し、社会で必要とされる知識や技能は次々と新しいものに置き換えられていきます。しかし、どのような変化がおこったとしても、山形大学でみなさんが身に付けた「学ぶ力」によって、自分自身をアップデートして、自分が目指す道を歩み続けてほしいと願っています。

みなさんは、これから新しい生活がはじまり、しばらくは自分のことで精一杯になるかもしれませんが、そのなかでも日々において、日本の社会、そして世界で何が起こっているのか、常に関心を持ってください。さまざまな情報が社会に溢れ、価値観が多様化する一方、ウクライナでの戦争をはじめ世界的な対立や分断も深まっています。何をよりどころにして、何を正しいものと考えるのか、私たち一人ひとりの判断が一層難しくなりつつあると言えます。またみなさんの長い人生のなかでは、社会全体が大きな選択を迫られる状況も来るかもしれません。そのような時代を生きるみなさんに、私が期待するのは、社会の大きな変化に対して受け身になるのではなく、自分自身で社会が向かうべき未来を考え、その実現に向けて、様々な人との信頼関係を築きながら、自らの役割を果たしてほしいということです。

長い人生のなかでは、たくさんの喜びがありますが、時には、苦境に陥り、なにもかも投げ出してしまいそうになることもあるかと思います。そのような時は、一人で抱え込まず、いろいろな人に相談してみてください。どのような激動の時代においても、社会は人のつながりで成り立っています。みなさんの力になってくれる人が必ずいます。母校である山形大学も、同窓会と校友会を通じて、みなさんと繋がり続けています。みなさんが充実した人生を過ごすことを、これからも山形大学が応援します。

ここで、私から卒業・修了するみなさんへお願いがあります。それは、みなさんの大学生活を支えてくれた方々に、卒業・修了の報告と感謝の気持ちを伝えていただきたいということです。みなさんがこの日を迎えることができたのは、友人やご家族をはじめ、たくさんの方々の支えがあってのことで、自分の力だけでは決して成し得なかったことと思います。人とのつながりで成り立つ社会において、誰かに感謝するということはそのつながりをさらに深めるうえで最も大切なことです。

コロナ禍などで経済状況が厳しいなかでも、各学部同窓会をはじめ地域の方々から、みなさんの学生生活を支えるためにたくさんのご支援をいただきました。いかにみなさんに多くの「期待」が寄せられているかということを、私自身あらためて強く感じました。

その期待に応えて、すべての卒業生・修了生のみなさん一人一人が、明るい未来、そしてより良い社会の実現を目指して、それぞれの場で活躍することを心から願い、私からの告辞といたします。

令和5年3月24日 山形大学長 玉手英利

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