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令和7年度 新入生に対する告辞

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、皆さんをこれまで支えてこられたご家族のみなさまにも、心からお祝い申し上げます。山形大学教職員、そして皆さんの先輩となる在学生一同、皆さんを同じ学びの場に集う新たな仲間として、心から歓迎します。

 これから皆さんの学び舎となる山形大学についてお話します。山形大学の歴史は、今から147年前の明治11年に開校した山形県師範学校まで遡ります。当時は、日本がさまざまな動乱を乗り越え、近代国家の建設へと歩み始めた時代でした。その後、明治から昭和にかけて山形県内で設置された5つの高等教育機関を母体として、山形大学はいまから76年前、日本が第二次世界大戦の惨禍から復興を始めた昭和24年に開学しました。その後、医学部を昭和48年に設置し、さらにデジタル時代のあらたな教育組織として今年、社会共創デジタル学環と大学院数理情報システム専攻を開設し、いまでは7つの学部・学環と6つの大学院を擁する東日本有数の総合大学として大きく発展してきました。

 このように、山形大学と、その母体となった高等教育機関は、いずれも社会が大きく揺れ動いた歴史の転換期に創設され、そこで学んだ10万人を超える学生たちがそれぞれの時代を切り拓く主役となって活躍してきました。山形大学の歴史を見ればわかるように、大学は、社会が大きな困難に直面したときに、既存の概念にとらわれない新たな思想や知識、技術を生み出して、より良い未来への道を拓くために存在しています。言い換えれば、大学は、社会が暴力的手段に拠らず自己変革するために自ら作り出した社会的装置と言えます。

 そのような使命を持った大学において、皆さんはこれから、まだ解き明かされていない問題や未知の領域に挑戦する学びを行うことになります。

 これまで皆さんが小学校から大学入試まで学んだことは、その多くが教科書や参考書に書かれたこと、すでに知られていることであり、それらを、どれだけ覚えたかが学びの中心であったと思います。それに比べて、大学の学びは、身に着けた知識を駆使して、これまで明らかになっていない事象や現象を解明するという点で、大きく異なります。さらに、学生の皆さんの学びが生み出した成果が、世の中を大きく変えることがあります。

 その具体例をあげましょう。元山形大学工学部教授で、現在山形大学フェローの城戸先生が開発した白色有機ELは、現在の高機能スマートフォンや有機ELテレビなどの基盤となった重要な発明です。また、山形大学人文社会科学部の坂井教授によるナスカの地上絵の新たな発見は、世界中で大きなニュースとなりました。これらの研究は、いずれも、先生だけで行ったのではなく、山形大学の学生の皆さんが大きな役割を果たしています。このような大きな発明や発見でなくても、皆さんが大学で取り組んだ成果は、確実に社会や人に伝わっていきます。取り組む課題は学部によって異なりますが、皆さんが本学で多くのことを学び、そこから世の中を変える新たな知識や技術を生み出していくことを大いに期待しています。

 大学は、知識の探究だけでなく、自分自身をもう一度発見し、成長していく場でもあります。その意味において、大学は皆さんにとって社会に出るための通過点ではありません。大学で勉強したあとで、社会に出て活躍する、という考え方はすでに過去のものとなっています。18歳を過ぎた皆さんは社会的にも独立した個人として行動することが認められています。自分がやりたいと思うことを、大学卒業まで待つ必要はありません。自分が思い描く夢を実現するために、失敗を恐れず、勇気をもって自分がやりたいことに挑戦してください。

 実際に、皆さんの先輩の中には、早くからアントレプレナーシップを学び、自分の研究成果をもとに学生として起業した方もおります。また、自分たちがやってみたいことと、地域がやってほしいことをマッチングして、子供たちの学習支援など地域に密着した活動をしている先輩たちもいます。大学時代は多くの時間を自分の思う通りに使える貴重な時期です。二度とないこの時間を大切にして、これまで興味を持っていなかったこと、別の世界だと思っていたことにも積極的に挑戦して、自分の可能性を大きく広げてください。

 いま、私たちが生きる社会は、かつてない速さで変化しています。戦争や自然環境の大きな変化で、世界の安定が揺らぎ、私たちの生活にも大きな影響を及ぼしています。さらに、AIの発展は、人の働き方や企業の在り方を大きく変え、これまでの常識が通用しない場面も増えていくでしょう。このような時代に、新たな生活を始める皆さんには期待とともに不安もあるかもしれません。

 しかし、大学の中で、皆さんは一人ではありません。必ず、自分の存在を気にかけてくれるたくさんの人が皆さんの傍らにいます。これから多くのことを経験する中で、時には自分一人では解決できないことや、苦しいこと、つらいことに直面するかもしれません。そんな時は、友人やご家族、そして私たち教職員に声をかけてください。私たちは、皆さんとのつながりを何よりも大切に考え、どのような場でも、皆さんが安心して大学生活を過ごせるように、全力で支えてまいります。
 
 皆さんが、山形大学で充実した日々を過ごされ、本学での学びにより明るい未来への道が開けることを心より願い、私からの歓迎の言葉といたします。本日はご入学誠におめでとうございます。

 

令和7年4月4日 山形大学長 玉手英利

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