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平成27年度卒業生に対する告辞

告辞

 本日、学士の学位を授与された1,689名のみなさん、修士の学位を授与された424名のみなさん、博士の学位を授与された30名のみなさん、そして、 別科の修了書を授与された38名のみなさん、卒業・修了、誠におめでとうございます。山形大学を代表しまして、心からお祝いを申し上げます。
 ご列席のご家族のみなさんにとりましては、卒業生を社会に送り出すに至った長い年月のことを考えますと、そのお喜びはいかばかりかと拝察いたします。心からお祝いを申し上げます。

 さて、我々をとりまく社会情勢を、3つの観点から考えてみます。
 まず1つ目ですが、「みなさんは世界の人口について考えたことがありますか?」。日本では少子高齢化による人口減少が始まっていますが、アフリカ、東南 アジアやインドなどでは人口増加が著しく、地球全体では人口増加が続いています。そして新興国の経済成長とグローバル化による世界経済の平準化から、先進 国はデフレ経済に陥っています。日本も経済的に不安定な状態にあります。みなさんにとって、なすべき役割は、新しい知的価値の創造によって、人類の課題を 解決し、世界の人々を魅了することです。

 2つ目ですが、「みなさんは日本が安全な国だと思っていませんか?」。テロリストによるリスクや、サイバー攻撃によるリスクは確実に高まっており、それ らは世界のどこで起きても不思議ではなくなっています。日本人のリスクに対する感覚・意識は、世界の中では異常に低いのです。多くのリスクがあることは、 既に世界の常識です。グローバル化によって、国内もリスクが高まる方向にあります。これからは、リスクをいかにして回避するかについての対策はもちろん必 要ですが、同時に、リスクが起きた時のことを常に想定しておく必要があります。

 さらに、「みなさんは『2045年問題』について考えたことはありますか?」。3つ目は、人工知能、ビッグデータ、IoT、ロボットなどの科学技術がど んどん進歩していることです。それら科学技術の進歩と、少子高齢化社会の「ニーズ」とが、あいまって、20年後の社会が、大きく変わっていきます。 2045年には、現在の職業の多くが存在しなくなり、そして、新たな職業が必要になるなど、今とは、社会の状況が大きく変わっていくことでしょう。

 このように、みなさんは、経済が不安定で、リスクが増加し、職業が変化する中で、社会人となります。それでも決して不安に思わないでください。みなさん はこれまで、山形大学で、学位を取得するのに必要な研究、専門教育、基盤教育などに主体的に取り組んできました。それら、山形大学でのすべての学びの経験 は、みなさんが社会人として、たくましく生きる基盤となるでしょう。

 山形大学で学んだ専門がそのまま職業として役に立つこともありますが、専門が必ずしも活かせない職業に就くこともあります。しかし、それでも大学での学びのすべては、みなさんが社会で生きる上で、職業人として働く上で、必ず役に立つはずです。
 大学の授業での学びは、知識自体も重要なのですが、その「知識を吸収する過程での考え方」、「知識の収集方法」、「知識と知識との関連づけ」、「知識の応用」など、いわゆる「人間としての知恵」を会得するための学びがもっとも重要なのです。
 卒業研究においても同様です。1つの研究テーマを追い続けるときに、「アプローチの方法」、「資料の調べ方や実験方法」、「研究成果のまとめ方」など、 幾度も幾度も、迷いや挫折を経験したことと思います。それら経験のすべてが、知恵となって、みなさんの身体に染みついています。その知恵が、社会人とし て、大いに活躍するための、「礎(いしずえ)」となります。さらに、社会人として迷ったときにも、逆境に陥ったときにも、その知恵がみなさんを支え、助け てくれるはずです。

 改めてみなさんに言います。山形大学で学んで、学位を得たことに、誇りを持って下さい。そして、自信をもって社会に出て下さい。みなさん1人1人が、今後の日本、あるいは世界の、新しい社会作りに、大きく貢献してくれることを、私は確信しております。

 それでもなお、社会に出て「困ったこと」や「挫折すること」があるかもしれません。もし、自分の生き方に、あるいは自分の仕事に行き詰まったときには、 ここ山形に戻ってきて下さい。山形大学の教職員はいつでも相談相手になります。相談相手から「直接的な解決策」は聞き出せないときも、あるかもしれませ ん。それでも、相手に話すことによって、自分をより客観的に捉えることができ、自分で解決方法を見つけ出す「ヒント」が得られるはずです。

 そして、そんな社会の荒海を、生き抜くことこそ、「充実した人生」そのものであり、みなさんのような若者の特権なのです。

 最後に、学位記を手にされたみなさんが、今後、健康でますます活躍されることを祈念しまして、学長の告示といたします。

 

平成28年3月25日 山形大学長 小山清人

平成27年度 卒業・修了者数

 学部大学院養護教諭特別別科
山形地区 915 131 38
米沢地区 615 291  
鶴岡地区 159 32  
合計 1,689 454 38