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平成28年度卒業生に対する告辞

告辞

 本日、学士の学位を授与された1,685名のみなさん、修士の学位を授与された433名のみなさん、博士の学位を授与された49名のみなさん、そして、 別科の修了書を授与された39名のみなさん、卒業・修了、誠におめでとうございます。山形大学を代表しまして、心からお祝いを申し上げます。

 また、この会場にご列席のご家族のみなさん、誠におめでとうございます。
 小学校から数えると、学士で16年、修士で18年、さらに博士で21年という長い学生生活を、ご家族のみなさんは、物心両面から支えてこられたことと存じます。その長い年月を思いますと、今日のこの良き日を迎えられましたこと、お喜びもいかばかりかと拝察いたします。

 本日、学位記を手にされたみなさんの多くは、学生生活を終え、社会人としてスタートされます。これから、みなさんの活躍の場となる社会は、いま大きな転換期を迎えています。

 地球全体では、人口増加が問題となり、情報や経済そしてテロなどのグローバル化が進んでいます。一方、昨年はイギリスの国民投票でEUからの離脱が決まり、アメリカ大統領選挙ではアメリカ第一主義の主張が認められました。いわば、国と国との国境をより強固なものにする方向に、世界は舵を切り始めています。それまでのグローバル化の進展とは、一見して、逆行しているようにも感じます。
 日本国内に目を転じますと、地球の人口増加とは逆に、少子高齢化による人口減少が進んでいます。消滅する集落も出始めています。
 また、もののインターネット、IoTや人口知能、AIに代表される科学技術は、急速に社会に普及しています。それに伴い、既に無くなった仕事、さらに、これから無くなる仕事も予想されています。

 そういう社会に、みなさんはこれから足を踏み出すのです。このように言いますと、あまり良い社会ではないと思うかもしれませんが、決してそうではありません。みなさんがこれまで山形大学で培った力とみなさんの能力と努力をもってすれば、社会が直面する課題を克服できます。めまぐるしく変化する社会のなかで、みなさん自身で新しい仕事をつくり出し、より良い社会を築き上げることができるはずです。

 みなさんは、ここ山形の地で、多くのことを学ばれたことと思います。基盤教育と各分野の専門教育、ゼミや卒業研究、さらには課外活動などを通して、職業に就く上での専門知識と知恵を、生きていく上での人間力を、身につけられました。身につけた力は財産であり、必ずや、みなさんの人生の糧となります。

 さて、みなさんは、これから新たな人生への旅立ちを迎えます。わたくしから、みなさんにこれからの人生で大切にしてほしいことを、三つお話しさせていただきます。

 一つ目は、「他者の理解」であります。みなさんは山形大学で友人、教職員、留学生、地域の方など様々な人と交流してきました。それらの人々は互いに育った環境が大きく異なります。多くの人との会話や共同作業を通して、色々な考え方、価値観、文化、宗教、習慣などを持つ人との接点を持ちました。そのような経験によって、他者を理解し、尊重する能力を培ってきています。異文化を持つ人と接したときには、その新鮮さを楽しみ、お互いに共存できる道を、みなさんは探せるはずです。これらの能力は今後の生活において、とくに、グローバル化の進展が著しい今日(こんにち)の社会において、必要なことです。

 二つ目は「自分の立ち位置の理解」です。立ち位置というのは、空間的に、そして時間的に、いま自分がどの状態にあるかということの理解です。空間的とは、地域のコミュニティーにおいて、さらに日本や世界の中で、どんな立場にいるかという意識です。時間的とは、社会が歴史とともに変化してきたなかで、自分の立場について認識することです。言いかえれば、今の社会の中で自分がどのような立場にいるのか、そしてその立場が今後どう変わるかの認識です。その認識の理解ができれば、自ずと自分の取るべき道が見えてくるはずです。 

 三つめは、「学び続けること」です。学びは人生に深みを与えてくれます。みなさんは山形大学での学びの生活を通して、学びの習慣を身につけています。常に生活のなかで、疑問を持ち、その解決に向けて学び続けてほしいのです。
 学びに悩んだとき、社会で挫折したときには、ためらわず、山形大学にもどってきて下さい。山形大学はいつでもみなさんを待っています。 

 以上「他者の理解」、「立ち位置の理解」、「学びの継続」。この三つを、是非心に留めてください。 

 人口減少が進んでいる日本において、社会全体が幸せになるには、一人一人が新しい価値を創造することが重要です。新しい価値を創りだすことによって、みなさん一人一人が、今後の社会作りに大きく貢献してくれると、私は確信しております。みなさんが山形大学で学位を得られたことを大いに誇りとし、自信を持ってください。 

 結びに、学位を取得されたみなさんが、今後、健康でますます活躍されることを祈念しまして、学長の告辞といたします。

 

平成29年3月24日 山形大学長 小山清人

平成28年度 卒業・修了者数

 学部大学院養護教諭特別別科
山形地区 909 169 39
米沢地区 618 282  
鶴岡地区 158 31  
合計 1,685 482 39