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折に触れて

(08:2022年3月20日)

プーチンの戦争 -ロシアのウクライナ侵攻-

 日本のメディアでは、新聞でもテレビでも、圧倒的にロシアによる‘ウクライナ侵攻’あるいは‘ウクライナ侵略’なる表現を使っている。一方、Youtubeで海外メディアの表現を見ると、確かに侵攻や侵略を意味する‘invasion’も使ってはいるが、‘War in Ukraine’や’War in Europe’と、ほとんどが‘war’なる表現をとっている。さらには、もっとどぎつく、‘Russia’s War’、さらには、‘Putin’s War’と表現しているメディアもある。

 今回の出来事は、確かに‘Putin’s War(プーチンの戦争)’ではなかろうか。ロシア国民も望んでいない、「プーチンによる、プーチンのための戦争」である。私にはそう思えてしょうがない。

 朝、目が覚めると、ウクライナの状況が気になってしょうがない。ロシア軍は侵攻を止めたのか、キエフは攻略されたのか、ウクライナのゼレンスキー大統領は無事なのか、ロシアのプーチン大統領はまだその地位にあるのか、・・・・・・。

 しばらく前からその噂は流れていたものの、実際にロシア軍がウクライナに侵攻するとは思ってもみなかった。大国ロシアが、同じ歴史的ルーツを持つ、言わば兄弟の国であるウクライナに、どうして武器を持って押し入り、無差別に一般民間人を殺戮することができるのだろうか。

 この戦争の背景はいろいろと分析されている。ロシアは、「プーチンは」と言ったほうが正しいかもしれないが、NATO(北大西洋条約機構)はロシアの最大の敵対勢力であるとし、その東方への勢力拡大を容認できなかった。そのため、ロシアはNATO加盟国とは距離を取ることができるよう武力を用いて画策してきた。実際これまでも、ソ連崩壊後に独立した多くの国々と軋轢を生じてさせていた。また、ウクライナにおいても、2014年にクリミア半島を武力により強制的に併合していた。

 今回のロシア軍のウクライナ侵攻も、このままではウクライナはNATOへ加盟することになるとし、これに断固拒否するがための行動であるとされる。ロシアの首都モスクワは、ウクライナ国境からわずか500キロメートルの位置なのである。直接国境を接するウクライナのNATO加盟は、いわば、のど元に刃を突き付けられる状態である。

 ところで、第2次世界大戦後、局地的な戦争状態は枚挙にいとまがないものの、世界大戦への発展には、確かにある程度の‘隔たり’があったのではなかろうか。また、イランや北朝鮮と、最近に至るまで核兵器開発が多くの国に広がってきたものの、それは抑止力としての核兵器であり、現実の使用には、これも超えるべき‘溝’があったのではなかろうか。

 しかし、今回の‘プーチンの戦争’は、その双方の隔たりや溝を越える危険が存在していると指摘されている。今のところ(20日現在)、NATO諸国は、ロシアへの経済的制裁と、ウクライナへの支援は行うものの、参戦はしないとしている。しかしながら、ウクライナの徹底抗戦で戦争が長引くと、その予告通り、プーチンは戦術核の使用に踏み切るのではと心配されている。その時、NATO諸国はどう対応するのだろうか。NATO諸国の参戦により第3次世界大戦への道を、そしてそれは核戦争の道を辿るのであろうか。

 21世紀となった今でもこのような事態になるとは・・・。過去の歴史から学べないとは、なんと人類は愚かなのだろうか。まずは、一刻も早い戦争状態の終結と、話し合いによる紛争課題の解決である。このプーチンの戦争は、ロシアの人たちにとってなんの益もない。

【追記】
 3月20日(日)の午後9時からのNHK総合テレビ、「NHKスペシャル ウクライナ 深まる危機」の冒頭に、「プーチンの戦争」なるテロップが使われていたが、番組内でこの表現が出演者の発言の中では使われることはなかったと思う。