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折に触れて

(10:2022年5月20日)

この4月から・・・、プラスチック新法の施行

 4月という月は、日本人にとって1月と並び、もう一つの‘始まり’の月である。この大きな要素は、‘予算年度’(会計年度)が4月から始まることであり、また、同期してほぼすべての学校が入学式や始業式を迎える‘学校年度’(学事暦)の開始の月でもあるからである。世界的には予算年度と学校年度は一致していない国も多いのだが、日本では一致している。

 新年度が始まったこの4月、様々なことで変更があったり、新しい取り扱いが設定されたりした。中でも社会的にもっとも大きな影響があったのは、改正民法(新民法)の施行ではなかろうか。すなわち、「成年(成人)年齢」を今までの20歳から18歳にしたことである。既に2016年6月に、先行して18歳以上の人には選挙権は与えられていたものの、成年年齢の切り替えはこの4月であった。

 18歳で成年になったとはいえ、タバコとお酒が許されるのは以前と変わらず20歳になってからである。ある調査によると、タバコとお酒は20歳からという認知度は、同世代のおよそ80%とのことであった。この認知度を、高いとみるのか低いとみるのか、どちらにせよ、18歳、19歳の皆さんにはきちんと守ってほしい。

 さて、4月1日に新しい法律が施行されたものに、プラスチックの使用に関するものがある。「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が正式名称であるが、通常「プラスチック新法」とか、もっと短く「プラ新法」などとも呼ばれている。

 この新法の趣旨は、海洋プラスチックごみ問題と気候変動問題(地球温暖化抑制)をにらみつつ、「製品の設計からプラスチック廃棄物の処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewal)を促進するための措置を講じる」ことである(環境省のウェブサイト)。

 この法律の下で、プラスチックの資源循環の促進を総合的かつ計画的に推進するため、主務大臣、すなわち環境大臣は今後1年以内に、基本方針を策定することになっている。

 この法律の施行を前に、既に多くの企業が今後の対応を公表している。いくつかの企業の対応は新聞等で紹介されている。3月18日の日本経済新聞は、「小売りや外食、『脱プラ』対応/スタバは蓋なし提供 4月の新法施行受け」(/は改行の意味)と題する記事でいくつかの企業の対応を紹介している。

 プラ新法では、年間5トン以上のプラスチックを使う業者に対し計画的な削減を求めている。記事の見出しに取り上げられたスターバックスでは、プラ製の蓋を付けずに提供したり、持ち帰りのスプーンには植物由来の素材に切り替えたりするという。また、帝国ホテルでは歯ブラシなど10品目をプラ代替え製品に順次置き換え、年間のプラ使用量を、2019年度の約7割に当たる11トンを削減するという。

 5月17日(火)の毎日新聞は、「コンビニ大手/プラ削減加速/促進法施行で」との見出しを持つ記事を掲載した。それによると、「ローソンは、オリジナル商品のお茶6種類でペットボトルのラベルを半分にした」のだそうだ。「ファミリーマートは『たまごサンド』などサンドイッチの包装を削減」したという。また、スプーンやフォークに使うプラスチックの量を減らすアイデアとして、柄のところに穴をあけることで使用量を減らす対応をしているという。

 確かに、上記のような対応でプラスチックの使用量は削減される。このような細かな、いわゆる‘かゆいところ’まで配慮した対応は、いかにも日本らしい対応ではなかろうか。もちろん、そのようにすることは大事であるし、私たち一人ひとりが意識して対応しなければならないことを気づかせるには最適な対応である。しかし、米国に次いで2番目に多くプラスチックを消費している日本人にとって、この施策による削減量は微々たるもので、抜本的なプラスチック削減には程遠い対応と言わざるを得ない。

 個人的には、樹木や竹、そして植物(の繊維)を活用することがプラ問題解決のキイ・プレイヤーとなるのではと思っている。すなわち、材料としての‘木材’や‘竹材’、そしてこれらから加工された‘紙’などへの積極的な切り替えが重要なのではなかろうか。

 例えば封筒の中には透明な窓を設けて、中に入れた印刷物に書かれた住所で代用し、封筒に住所を書く手間を省いているものがある。これまでは窓にポリプロピレンが使われていたが、最近はグラシン紙が使われるようになってきた。グラシン紙を使った封筒であれば、そのまま古紙として出せることになる。

 このような方向での工夫や開発は既に始まっており、驚いたことに ‘紙’でできたカミソリなども出来ているという。発想次第で、‘紙’(もう紙とは呼ばないかもしれないが)は幅広い可能性を秘めているのではなかろうか。

 また、竹は極めて生育の場所を選ばず、また、成長が著しく速いので、大きな可能性を秘めたものとして注目を集めている。これもアイデア次第で現在の石油由来の製品に置き換えることができるのではなかろうか。

 産業用として長期に使用されるプラスチック製品は、代替えが難しく、急には変えられないものが多いかもしれない。しかし、たった1度の使用で廃棄される、いわゆる‘使い捨て’のプラスチック製品は、一刻も早く根絶するべきであろう。