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折に触れて

(16:2022年11月20日)

               山形大学の大学祭 ―1.小白川キャンパスの八峰祭―

 現在、山形大学の大学祭は、飯田キャンパスを除く3キャンパスで個別に行われている。これらの大学祭を、小白川キャンパスでは八峰祭(やつみねさい)、米沢キャンパスでは吾妻祭(あづまさい)、鶴岡キャンパスでは鶴寿祭(かくじゅさい)と呼んでいる。このうち、吾妻祭は米沢に近い名峰吾妻山から、鶴寿祭は鶴岡の鶴に縁起のいい寿を添えた名称だろうと理解できる。では、小白川キャンパスの大学祭「八峰祭」はどこから来たのであろう。8つの峰は具体的にどの山を指すのだろうか。

 八峰祭という名称の由来を本部事務部総務部総務課の齋藤靖副課長にお聞きしたところ、校友会事務局長の樋口浩朗さんへ問い合わせてくれた。そして樋口さんはさらに先輩の方に聞いてくださったのだという。その結果、八峰とは、山形県の高峰である鳥海山(2237メートル)、月山(1980)、蔵王山(熊野岳、1841)、朝日岳(大朝日岳、1870)、飯豊山(大日岳、2128)、吾妻山(2024)の6座に、羽黒山と湯殿山を加えた8つの山を指すのだそうだ。

 上記6座は、深田久弥の『日本百名山』(新潮社、1964年:文庫本は新潮文庫1978年)で取り上げられた山形県の名峰である。山名の後ろのカッコ内の数字は、この本に記された山の高さであるが、現在認定されている高さとは少し異なるようだ(末尾の注参照)。これら6座に、羽黒山(414:国土地理院)と湯殿山(1500)を加えたのは、月山とともに出羽三山と呼ばれる信仰の山であり、本県の山の中ではもっとも知られた山だからであろう。八峰祭なる名称が決まるまでどのような議論がなされたのかは分からないが、本学の諸先輩方は、8つの高峰・名峰を持つ山形県の大学、山形大学ということで、小白川キャンパスの大学祭に八峰祭の名称を与えたのだろうと推察する。

  ところで、一昨年と昨年の2回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延により中止された。八峰祭は今年第56回としている。インターネットで調べたところ、2019年は第53回であることが分かった。すなわち、中止になったのだが、2020年は第54回、2021年は第55回と数えているのである。このような数え方をこれまでずっとしているのであれば、第1回八峰祭は1967年に行われたことになる。

  1967年と言えば、反戦運動や学生運動が盛んで、社会的に騒然とした時代である。当時の山形大学の状況は分からないが、そんな中にあって、学生や教員と保護者、そして地域の人たちや高校生、他大学の学生との交流を目指した大学祭が計画され、その大学際に八峰祭の名称が与えられたのだろう。

  1964年に出版された深田久弥の『日本百名山』はすぐにベストセラーになり、同年、読売文学賞を受賞している。(私の推測が正しければ)上記のように八峰祭の第1回は1967年であるから、本の出版後3年目にあたる。八峰祭の命名には『日本百名山』から大きな影響を受けた、と考えるのは自然ではなかろうか。また、山形県民になじみ深い羽黒山と湯殿山という2座を加えて8座にすることで、末広がりの縁起のいい‘八’を使えるようにしたのであろう。

 「山形大学五十年誌」を紐解いてみたのだが、残念ながら小白川キャンパスの大学祭についての記述から、第1回がいつ行われ、名称がどのようにして決まったかなどの情報を得ることができなかった。山形大学のOB・OBの皆さん、八峰祭の名称のことや第1回八峰祭がいつ行われたなどに関して、情報をお持ちの方は提供して頂けないだろうか。

 【注:現在認定されている山の高さ】
 国土地理院のウェブサイト(*)から現在認定されている山の高さを示す。日本百名山に記載されている高さと多少の違いがあるが、この差異は測量した時の精度の問題であると考えられる。なお、日本百名山の数値が間違っていると主張するものでないので注意されたい。
https://www.gsi.go.jp/kihonjohochousa/kihonjohochousa41139.html

山名

最も高い場所

『日本百名山』(1964)記載の高さ

現在国土地理院が認定している高さ

鳥海山

新山

2237

2236

月山

1980

1984

蔵王山

熊野岳

1841

1841

朝日岳

大朝日岳

1870

1871

飯豊山

大日岳

2128

2128

吾妻山

西吾妻山

2024

2035