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折に触れて

(20:2023年3月20日)

                    ラーメン消費額、山形市首位奪還


 山形のラーメンは本当に美味しい。私は大の麺好きであり、連れ合いがいるときの土曜や日曜の昼は、連れ立ってラーメンやお蕎麦を楽しんでいる。新しくラーメン屋さんが開店したときには、一度は行ってみようと計画を立てる。

 さて、先月(2月)7日(火)の朝は、多くの山形市民はソワソワしていたのではなかろうか。朝のテレビでは、「今日は8時半に総務省から家計調査が発表される日で、ラーメンの消費額で山形市が新潟市から1位を奪還するかどうか注目されます」と報じていた。

 地元紙山形新聞のウェブサイトでは、8時53分のタイムスタンプで、「山形市ラーメン消費額1位奪還」の見出しを付け、「総務省の2022年の家計調査の結果が7日に公表され、1世帯当たりの中華そば(外食)消費額で山形市は1万3196円で1位となった。山形市のトップは2年ぶり」との速報を流した。そう、あの忌々しいプーチン戦争ではないが、今回山形市は首位の座を「奪還!」したのである。

 この「ラーメン戦争」は、昨年2月に勃発した。一昨年までの8年間、1位を堅持していた山形市が、新潟市にその座を奪われたのである。その時の消費額は、新潟市が13,734円、山形市が13,434円で、その差はたったの300円であった。

 この総務省の調査は、県庁所在地と政令指定都市が対象である。また、山形新聞では単に‘1世帯’という表現であったが、正確には‘2人以上の世帯’である。ともあれ、この話は山形市や山形市民だけではなく、もう山形県、山形県民の問題でもあった。

 人気番組に「秘密のケンミンSHOW極」がある。食べ物に関するテーマが多く、番組の流れはいつもワンパターンの展開ではあるが、その県ならではの食べ物とそれに対する熱い県民の思いが紹介される。芸達者な司会者のテンポもよく、私も毎回ではないが楽しんでいる。

 新潟と山形のラーメン戦争は、昨年(2022年)10月28日(木)のこの番組で、「新潟には負けない!日本一を奪われた山形県民が奪還に燃えている!」として取り上げられた。双方の県の美味しいラーメンと、県民の消費額1位へのこだわりが詳しく紹介されていて楽しめた。

 ところで、この番組の中でのこと、山形県のあるテレビ局のニュースで、山形県は「3年平均の数字」ではラーメン消費額は今年も1位であると報じたことを取り上げた。番組では、このニュースの内容は捏造されたもの、すなわちフェイクニュースと断じていた。ラーメンのことになると、山形の人は‘捏造’までするのか、と面白、おかしく冷やかしていた。しかし、このニュースはフェイクでもなんでもなく、「3年平均」であればまったく正しい情報なのである。もっとも、どうして3年平均値を使ったこのニュースが、この時期に報じられなければならないのかは、まったく理解できないのであるが・・・。

 さて、1位奪還を果たした山形市であるが、翌8日には、「ラーメンの聖地、山形市」なる宣言を出した。8日付の毎日新聞記事によると、昨年首位を陥落したため、ラーメン店主らが危機感を持ち、「『ラーメンの聖地、山形市』を創る協議会」を結成していたのだそうだ。市内の約100店のラーメン屋さんが加盟しているらしい。山形市にお店を持つ店主さんたちの心意気、これもさすがですね、感服します。

 ここで水を差すつもりはまったくないのだが、私はこの「聖地」の使用には違和感を覚える。デジタル版『日本大百科事典(ニッポニカ)』は、聖地を以下のように説明する。「宗教的あるいは伝説的に日常の空間とは異なる神聖さをもち、通常タブーとされる区域」と。この本来の聖地が意味する観点からは、さてどうなのだろうか。

 山形市の栄屋本店さんが考案した‘冷やしらーめん’にちなみ、「冷やしラーメンの聖地、山形市」ならば納得もするが、私には「ラーメンの聖地、山形市」のキャッチフレーズはピンと来ないのである。「ラーメン天国、山形市」宣言ならばどうだろうか。ラーメン好きにとっては天国のような山形市だし、日本一のラーメン好きに食べられるラーメンにとっても、天国のような山形市というわけである。

 ところで、このラーメン戦争、どの程度全国的な話題なのだろうか。毎年この調査で有名なのが餃子戦争である。実際、発表の翌日(8日)の毎日新聞は、宇都宮市、浜松市、宮崎市の三つ巴による餃子戦争を全国欄で紹介していた。今回は宮崎市が2連覇とのことである。全国的には三つ巴で熾烈な戦いをしている餃子戦争に注目が集まっているのですかね。

 さて、次の機会には、どのラーメンを味わうことにしようか、迷うところです。