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折に触れて

(21:2023年4月20日)

                    ゴミのこと、あれこれ


 今回はゴミに関する3つの話。一般には「ごみ」と平仮名で書かれることが多いが、「ゴミ」と書いた方が私にとってはゴミらしい(!?)ので、前回(No.11、2022年6月)に続き今回も多くのところでゴミと片仮名書きにする。

1.仙台市のプラスチックゴミへの取り組み

 今年(2023年)の2月に仙台市を訪問した折、地下鉄の中で「プラは全部赤い袋へ」というポスターを見た。全面赤が基調のポスターで、仙台市のゴミキャンペーンのキャラクターである「ワケル君」が大きく印刷されている。「製品プラスチック分別収集 令和5年4月スタート!」の文字もあった。私はこのポスターの意味するところがその場では理解できなかったので、山形へ帰ってからインターネットで調べてみた。

 プラスチック類は、大きく「容器包装」類と「製品プラスチック」類に大別できる。製品プラスチック類とは、ハンガーやストロー、フォークなど、プラスチック100%の製品を指す。仙台市では、これまでも容器包装のプラスチックはリサイクルされていたが、製品プラスチック類は他の家庭ゴミとともに、焼却処理されていた。

 それが、昨年4月1日に施行された「プラスチック資源循環促進法」の下で、市町村がプラスチックゴミの再商品化計画を策定し、環境大臣と経済産業大臣の認可を受ければ、リサイクルが可能となる仕組みができたのだそうだ。

 仙台市は、他の政令都市に先駆けて再商品化計画を作り、昨年(2022年)9月30日に両大臣の認可を取得した。全国で第1号とのことである。計画期間は令和5年4月1日から令和8年3月31日の3年間。なお、再商品化は「J&T環境株式会社」が行うことになっている。仙台市は回収のみを行い、業者は選別・洗浄、ペレットやフラフ(破砕物)等を作成し、最終的には物流パレットを製造する計画である。

 仙台市のウェブサイトによると、処理過程の中に洗浄工程があるので、容器などの汚れは固形物が残らない程度に拭き取るか、軽いすすぎ等で十分だとのことである。また、チューブ類も中身を使い切った状態で出すことができるという。さらには、容器のラベルやシールを無理に剝がさなくとも構わないという。このような取り扱いでいいのであれば、市民はずいぶんと気が楽になることだろう。

 なお、仙台市のウェブサイトによると、この取り組みは5つある区でそれぞれ2地域を選び、この1月から先行実施しているという。

 国連環境計画(UNEP)の2018年6月の調査報告書によれば、プラスチック類の全生産量の中で容器包装類は、2015年の統計では36%ともっとも多いという。また、2014年の統計によれば、国別に一人当たりに換算すると日本は1年間に32キログラムの包装容器プラスチックを消費しているという。この量は米国に次いで2位の多さである。

 日本の‘使い捨てプラスチック’(single use plastic)ゴミ(プラゴミ)の処理については、比較的うまくできているという評価である。すなわち、陸上での回収量が多く、海域に流出するプラゴミ類は、使用量に比べて少なくなっている。国全体での流出量は数万トンレベルで、この量は世界で30位という。しかしながら、回収したプラゴミは大半が焼却処理されるので、焼却熱を発電に使っているとはいえ、温室効果気体を増やさないという立場からは、もろ手を挙げて賛同されるものでなかった。

 今回の仙台市の取り組みは再利用(reuse)を積極的に推し進めようとするもので、その成果が期待される。今後、この事業の検証を行い、その成果を公表してほしいものだ。


2.燃えるゴミ、燃やすゴミ、それとも燃やせるゴミ?

  ゴミは大別して家庭から出る「家庭」ゴミと、企業活動から出る「事業系」ゴミに分けられる。家庭ゴミもその種類によりいくつかに分別のうえ、収集されるのが普通である。分別されるゴミの名称は、地方自治体によって異なっている。

 表題に挙げたものは、家庭ゴミの中でも日常的にもっとも多量に出る生ゴミなど、最終的に焼却場へ行くゴミの呼称である。多くの自治体では、これら3種類の中のどれかを取ることが多い。

 まずは、山形県内から。山形市の表記は平仮名で「もやせる」ゴミであるが、対となる「もやせない」ゴミの区分はない。米沢市は「可燃性」ゴミと「不燃性」ゴミの区分。鶴岡市は「もやす」ゴミであるが、対となる「もやさない」ゴミの区分はない。

 次に主な都市での表現。札幌市は「燃やせる」ゴミと「燃やせない」ゴミ、横浜市は対になっていないのだが「燃やす」ゴミと「燃えない」ゴミ、神戸市や福岡市は「燃える」ゴミと「燃えない」ゴミ、東京都や名古屋市は「可燃」ゴミと「不燃」ゴミ。一方、仙台市は「家庭」ゴミ、大阪市は「普通」ゴミの表現である。自治体によって実にいろんな表現をしていることが分かる。

 さて、どの自治体も、具体的にはこのようなものが焼却するゴミで、このようなものが焼却しないゴミであると、詳しく解説した冊子を配布している。自治体によっては、物や製品の名称を入れるとゴミの種類を検索できるウェブサイトを準備しているところもある。

 したがって、住んでいる人にとっては、表題に挙げた表現のどれでも構わない、紛れはないのであるが、それでも「燃える」ゴミや「可燃」ゴミの表現に私は違和を感ずる。燃えるものであれば何でも燃えるゴミとして出していいのですか、と突っ込みたくなるのである。その点、私たちの‘意思’(!?)が入っている「燃やす」ゴミ、あるいは「燃やせる」ゴミの表現がはっきりしているように思える。

 前に住んでいた仙台市では、焼却するかしないかの観点からの区別はなく、「家庭」ゴミと「資源」ゴミと区分している。仙台市では、「『資源になるか、ならないか』を基準に分別しています。『燃やせるごみ』『燃やせないごみ』の区別はありません。資源物を分別し、残ったものが家庭ごみです。」と説明している。これはゴミ処理に対するポリシーの一つの表れであろう。

 何が‘ゴミ’で、何が‘資源’なのだろうか。ゴミ問題は難しい。
 

3.「燃やすしかない」ゴミと「埋め立てるしかない」ゴミ

 この(2023年)3月27日(月)の朝日新聞に、「呼び方変えて ごみ削減目指す」、「『燃やす』→『燃やすしかない』 京都・亀岡市が4月から」、「処理費用増 分別ルールを徹底」の見出しを持つ記事が掲載された。

 京都府亀岡市がこの4月から、「燃やすごみ」を「燃やすしかないごみ」、「埋め立てごみ」を「埋め立てるしかないごみ」に名称を変更するとの記事である。その狙いは、見出しにあるように、分別を今以上にきちんとしてもらうことで、焼却炉で燃やすゴミを減量し、焼却炉を長持ちさせ、埋め立てるゴミを減量し、埋め立て処分場を延命化させることにあるという。

 この名称変更には先行事例があるとのこと。福岡県柳川市は、2年前の2021年11月から「燃やすしかないごみ」に変更したのだそうだ。この改称とともに、指定のゴミ袋は値上げし、一方で、プラスチック類とペットボトル専用のゴミ袋を新たに作り、燃やすしかないごみの袋よりは安く提供した。このような変更の結果、「燃やすしかないごみ」は年間で10%減少し、一方でプラスチック類の量は2倍以上に増えたという。

 狙い通りの結果となったことで、柳川市の担当者は「分別することが、市民の中で習慣になったのではないか。地球環境にも良く、市にとってもありがたい」と話しているという。

 記事の中で、北海道大学の石井一英教授は、「呼び方を変えるのは名案」と評価し、「ホームセンターやスーパーなど民間企業が、段ボールや牛乳パックを集めるなど、資源化のルートが増えれば市民も出しやすくなる」としている。

 石井教授のこのコメントは確かに頷ける。私もアルミ缶や新聞紙・古紙類などは、毎週市で行っている収集の方ではなく、月一回地域で行っている資源回収の方に出している。そうすることで、地域の活動や地域の小学校の運営資金に充当されることになるし、一方で市の収集の負担を軽くすることに貢献している、と思うからである。

 「燃える、燃やす、燃やせる」ゴミから、「燃やすしかない」ゴミへの名称変更、今後考えてみてもよさそうである。