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キャンパスから

(No. 14:2022年9月10日)

学長補佐制度の導入

 米国では、大学の学長や学部長は、学内の教員から選ばれるのではなく、公募で学外から選ばれることが多い。中には、学長や学部長として大学を渡り歩く人もいるという。活発に研究を行っている人が大学の管理者に移行する例は、そう多くはない。それでもそのような一人として米国ウッズホール海洋研究所のJ.ルイテン博士を挙げることができる。彼は研究で活躍中の1980年代半ば、同研究所の海洋物理学部門のヘッドに就任し、以後研究からは遠ざかった。同氏は1983年に、J.ペドロスキー、H.ストンメルと共著で「ventilated thermocline theory(通気水温躍層理論)」を提案した論文を出版した。これまで1000回以上も引用された本論文は、海洋物理学の研究者なら誰でも知っている論文となっている。

 さて、日本では、大学運営のトップは、その大学に勤めていた教員が中心となって行うのが通例となっている。学長であれば部局長経験者が、部局長であれば副部局長経験者が選ばれることが多い。しかしながら、下位役職の経験を積んでいるとはいえ、役職者として知っておくべき知識などをシステマティックに学ぶ機会がきちんと付与されていることは少ない。

 このような背景を踏まえ、本学は昨年11月に「経営人材育成方針」を学長裁定で定めた。「経営人材」とは企業の言葉のようだが、将来大学運営を担う(大学を経営する)人たちを育成しようとする方針のことである。本学はこの中で「学長補佐」制度を新たに導入し、年度プログラムの下で、計画的にこのような人たちを育成することを決めた。今年度は各部局から推薦された7名の方が「学長補佐」として任命された。

 学長補佐としての勤務日は、教育研究評議会の開催日(8月は休会なので1年で11日)と、8月と3月の各1日を加えた計13日である。勤務場所は法人本部棟とし、対面での活動を重視した。プログラムは、①学長・役員による研修(講話)、②役員会や役員朝の会、そして教育研究評議会への陪席、③与えられる諮問に対してグループ討議で答申をまとめること、の三項目からなる。一言で言えば、本学は今、どのような重要課題を持っているのか、どのようなプロセスで意思決定を行っているのか、課題に対してどのような考慮から施策が決定されているのか、を具体的に体験してもらうプログラムである。

 先月(8月)の10日(水)、今年度前期の活動のまとめとして、学長補佐と学長・役員の間で、諮問に対する答申の発表会と懇談会が開催された。今年度前期の諮問は、「本学のカーボンニュートラルに向けた姿勢と具体的方策について」と、「学術研究院に置く学系の在り方について」の二つであった。発表の内容から、双方の課題とも大変丁寧に議論していただいたことが分かった。前者のカーボンニュートラルの課題では、教育分野や研究分野で、すぐにでも採用できる施策の提案がなされていた。後者の学術研究院の課題では、学系を置くにあたっての問題点や検討すべき課題が、極めてよく整理されていた。この諮問・答申の項目は、後期にも課題を変えて行われる。学長補佐の人たちの議論に大いに期待したい。