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キャンパスから

(No. 23:2023年6月10日)

世界史の中に生きている-感染症・戦争・人工知能-

 私たちは日頃、歴史の中に生きている、などとはちっとも感じないのであるが、それでもある時、自分もこの時代に生きているのだ、と思えることがある。私の場合、過去の例を挙げれば、年号が昭和から平成に、そして平成から令和に変わった時、自分も日本の歴史の中に生きていることを実感した。それがここ数年、‘世界で起こっている出来事’から、日本史どころか世界史の中で自分が生きていることを感じている。皆さんは如何だろうか。

 ‘世界で起こっている出来事’とは、2019年から始まり現在も続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻(プーチンの戦争)、そして2023年になり広く認識された生成AI(または、対話型AI)の登場のことである。いずれも、世界中を巻き込んでの出来事となった。

 これまでも人類とウイルスとの闘いは何度も経験してきたが、COVID-19 はその規模から、1910年代後半のスペイン風邪以来の出来事となった。WHOのウェブサイトには6月初め現在、感染者7億人、死者700万人との数字が出ている。感染者の全数把握には程遠い国や地域が数多くあるので、この数字はかなり控えめなものに違いない。致死率は当初よりはるかに低くなったものの、現在もまだ収束も、ましてや終息も見通せていない。

 人類は‘争い’の歴史であり、現在も紛争は世界各地で起きており、止むところを知らない。しかしながら、国連などの世界平和実現に向けた地道な活動の結果、少なくとも国家間での全面戦争の事態は避けられてきた。それがどうであろう、2022年2月24日、ロシアは「特別軍事作戦」と称してウクライナに侵攻した。しかし、ウクライナへのNATO諸国の全面支援もあり、1年以上経った今でも戦いは続き、プーチンもこの状態は「戦争」であると認めざるを得ない事態となっている。

 人工知能(artificial intelligence:AI)という言葉は1950年代に生まれたという。そして2回のブームを経て、現在は第3次ブームなのだそうだ。2022年11月、OpenAI社は生成AIの一つであるChatGPTを公表した。その後、その能力の高さから、生成AIの社会への影響についての論争がとどまることを知らず、現在も続いている。5月30日には、OpenAI社のCEOなどの開発会社の責任者や、「AIの父」と称される大学研究者たちが連名で、「AIが人類を滅亡させるリスクの軽減は、核戦争と並び世界的な優先課題であるべきだ」との警告を発するまでに至った(時事通信社)。

 これら3つの出来事は、大学の教育・研究現場においても影響の大小や、直接・間接の違いはあれ、「転機」になる(なった)出来事である(あった)。ICT環境の整備の下、オンラインで大半の授業を行う形態が出現したこともその一つ、戦争が改めて資源の偏在を顕在化させ、エネルギーの高騰や危機を招いたのもその一つ、考える力と表現する力など、現代人して持つべき力(コンピテンシー)をどう養うのか、そしてそもそも、教育とは何かを突きつけたのもその一つである。

 これらの事態にどう対処すべきなのか、現在‘大学の実力が試され、今後の在り方’が問われている。私たち大学人の喫緊の大きな課題である。