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キャンパスから

(No. 24:2023年7月11日)

週に1日を研究の専念日に

 我が国の研究力が相対的に著しく低下しているとの指摘がなされてから久しい。実際、論文数やインパクトの高い論文数(Top10%やTop1%の論文数)のランキングで、日本の順位はこの間急激に降下している。論文数などはほぼ横ばいであるのだが、他の国々の伸びが大きく、研究力強化競争において日本は置き去りにされている状態である。

 研究力は、研究者数と研究費の積(掛け算)に比例する(と私は思っている)ので、ここ20年、研究者数も研究費も顕著に増えていない今の日本が、他国から置き去りにされるのは必然の結果である。この状況の中でも研究力強化のためには、若手研究者への安定した研究環境の提供と、研究費のデュアルサポート(経常的研究費と競争的研究費)体制の二つが本質的に重要であると考えている。特に前者は、研究者予備軍である博士課程学生の確保の観点からも、喫緊に行うべき必須の事であろう。

 さて、日本の研究は企業よりも大学が主であるので、大学教員の‘研究パフォーマンス’向上の観点からも要因分析がなされている。端的に分析結果を示せば、教員の管理運営や教育に関わる時間の増加→研究に割ける時間の減少→研究パフォーマンスの低下→大学の研究力の低下、そして日本の研究力の低下、というストーリである(末尾のURL1参照)。

 このような分析に基づき、研究時間を確保する観点から、大学内外でも様々な議論がなされている。実際、科学技術・イノベーション会議(CSTI)有識者会合でも議論され、研究時間の確保のために‘URA’の増員などの方策が種々提案されるに至った(URL2)。

 本学の(2023年)6月の教育研究評議会の最後の議題は、「質の高い研究時間の確保について」であった。この議題は、数か月前、学長から戦略本部企画・戦略室(室長は筆者)に、研究時間の確保についての方策を考えるように、との指示があったことに対する私たちの回答であった。提案の骨子は、可能な限りまとまった時間を確保することが重要であるとし、少なくとも1週間に1日は、会議などのない教育や研究に専念できる日を設けよう、などというものである。細切れでない、このまとまった時間を指して、「質の高い研究時間」と呼んでいる。

 この提案を受け法人本部では、隗より始めよということで、金曜日に入っていた会議をできるだけ他の曜日に移すこととした。既に決まっている本部以外の方が出席する会議はすぐに移すことは無理であるが、今後この取り組みは進んでいくことになるだろう。なお、研究専念日にとしているが、何に集中するかは教員によって異なるかもしれない。教育に集中したい教員は教育専念日になるかもしれない。その意味では、時間の使い方を自分で決めることができる日と言い換えてもよい。また、この措置により事務職員への負担も軽減されよう。事務職員にとってその日は、業務に専念したり、企画立案に集中したり、あるいは研修に当てる日とすることができるのではなかろうか。

 この施策が全学の理解と協力の下で行われれば、本学構成員の教育や研究、業務の遂行に大きなポジティブな効果が生まれるのではないか、と大いに期待しているところである。

【参考となるURL】
1.令和5年版 科学技術・イノベーション白書   
  https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa202301/1421221_00014.html

2.科学技術・イノベーション会議有識者会合:研究に専念する時間の確保-
  研究力強化・若手研究者支援総合パッケージフォローアップ-:
  最終まとめ(案)と「大学の評価疲れ申請疲れに関する方策」アンケートについて(2023年3月30日)
  https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20230330/siryo1_1.pdf