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キャンパスから

(No. 07:2022年2月10日)

AA制度の効果

 昨年(2021年)12月20日(月)のお昼ごろ、私たち役員が詰めている部屋を、人事課の柏倉弘喜副課長に連れられて、この(2022年)4月から本学で勤務を始める人たち9名が、挨拶のために訪問してくれた。皆さん、とても初々しく、本学での勤務を楽しみにしているように見えた。自己紹介を聞いて驚いたのは、9名中5名が本学の学生だったことである。その後、柏倉副課長から資料を頂いたところ、今年の採用者は11名で、うち転職する2名はすでに昨年10月から勤務しているという。その2名のうちの1名も本学出身者であった。すなわち、採用者11名中6名が本学出身者なのである。  

 本学で学んだ人が、本学を就職先に選んでくれたというのは、本学関係者の一人として、とても嬉しいことである。職業として大学の事務職を選び、かつ職場として自分が学んだ大学を選んでくれたというのは、本学の事務の方々の働いている姿を見て、やりがいを感ずると評価しての事だろう。

 さて、このように本学学生を本学の事務職に誘う状況を作り出した要因であるが、その一つに ‘アドミニストレイティブ・アシスタント制度’(AA制度)があるのではなかろうか。この制度は、本学が他大学に先がけて導入した制度である。私が本学のAA制度を知ったのは前の大学にいた2010年12月のことで、日本学生支援機構が出している月刊誌「大学と学生」(現在は廃刊)に掲載された、当時総務部におられた奥山利弘さんによる紹介記事(奥山、2010)を読んだからである。当時、私はこのAA制度は大変良い制度であると思う、とのエッセイを書いている(花輪、2016:末尾に採録)。

 奥山さんの記事によると、AA制度は、当時の結城章夫学長による「結城プラン2009」において提案されたものだという。その趣旨は、「この制度は、国立大学法人山形大学が行う学生支援の業務に、就学に支障のない範囲において本学の学生を参加させることにより、学生の視点に立ったサービスも取り入れるなど学生支援業務の充実を図るとともに、学生の就業意識の向上を狙ったものですが、併せて学生に対する経済的支援も目的としている」(26ページ)とある。その結果、「大学内で職員とともに働く学生への期待としては、スタッフの一員として本学の学生支援業務や各種事業に参画願う中で、(中略)実際にAAを経験し大学職員の業務に興味を持った学生が、将来の職業として大学職員目指したいと職員採用試験にチャレンジする例も出てきている」(30ページ)のだという。2009年2月に導入したAA制度であるが、導入直後から、所期に目的とした効果は現れていたのであろう。

 私は奥山さんの記事を読み、前の大学でもぜひAA制度を導入したいと思い、何度か本部にお願いしたことがあった。しかし、なかなか導入されず、結局制度化されたのは2014年4月のことであった。本学は先がけてAA制度を導入した大学として、この制度を大事に運営していけたらと思う。本学で学ぶ優秀な学生に、本学事務部を就職先として選んでもらうために。

 参考文献

○奥山利弘,2010:山形大学における学生との協働による経済支援~アドミニストレイティブ・アシスタント制度~.『大学と学生』,2010年12月号,日本学生支援機構,pp.26~30.
https://www.jasso.go.jp/gakusei/publication/dtog/__icsFiles/afieldfile/2021/02/16/daigaku562_07.pdf

○花輪公雄,2016:アドミニストレイティブ・アシスタント.『続 若き研究者の皆さんへ ー青葉の森からのメッセージー』,東北大学出版会、pp.87.

【アドミニストレイティブ・アシスタント】
 地球物理関係では最大の研究大会であるIUGG(国際測地学・地球物理学連合)総会に私が初めて参加したのは、1987年、カナダのバンクーバー、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)で開催されたときである。私は期間中、大学構内にある国際交流センターに滞在した。そこで気づいたのは、建物内の清掃や、部屋でのベッドメイキングなどを、学生たちがやっていることだった。

 アドミニストレイション(administration)とは、管理や運営といった意味であるので、標題のアドミニストレイティブ・アシスタント(AA)とは、管理運営補助者のことである。奨学金の貸与事業などを行っている日本学生支援機構が編集している月刊誌「大学と学生」の最新号(2010年12月号)で、山形大学がAA制度を積極的に導入していることを知った(26-30ページ)。学生に、大学管理運営業務の一部を行ってもらうことで、それに対して賃金を払い、結果的に学生へ経済支援をする事業である。

 具体的には、図書館の学習サポート、大学訪問者への案内や説明、海外留学生フェア等への参加、託児サポーター(保育士の補助)など、多くの業務補助の例が挙げられていた。山形大学は「スタッフの一員として本学の学生支援業務や各種事業に参画願う中で、大学の仕事を知ってもらう(興味を持ってもらう)とともに就業意識の向上を期待」しているという。そして、AAを経験した学生が大学職員を目指したいと、職員採用試験にチャレンジする例も既にでているという。

 最初に記したUBCの例は山形大学のAA制度と同一のものであろう。カナダでは、このような制度を20年以上も前から導入していたのであった。本学や本部局でも、AA制度とは名乗っていないが、似たようなことをティーチング・アシスタント(TA)の一環として行ってきた。私は山形大学の記事を読んで、本部局もAA制度を導入することは有効であると考えるようになった。TAやリサーチ・アシスタント(RA)に加えて、AAはどうだろうか。皆さん、これに協力してくれますか。(2010年12月28日)