はばたくひと #09

伊藤永夏

アナウンサーの道をチョイす!
頑張り続ける人にチャンスは来る。

2019.01.30

アナウンサーの道をチョイす!頑張り続ける人にチャンスは来る。

栄養士を目指して地域教育文化学部食環境デザインコース(当時)に入学した伊藤永夏さんだったが、東日本大震災を機に放送業界への関心も密かに高まっていた。最終的には、アナウンサーを目標に就職活動を展開。内定をもらえず挫けそうにもなった時も、周囲に支えられて挑戦を続け、山形の放送局に就職。現在は、さくらんぼテレビの看板番組やニュースのアナウンサーとして「伝える」最前線で活躍している。

栄養士を目指して進学するも、
もう一つの夢だった放送業界へ。

 秋田市出身の伊藤永夏さんは栄養士を目指して進学先を探す中で、国立大学で栄養士の資格取得が可能だった隣県の山形大学を選んだ。食環境デザインコース(当時)で栄養学、食品学、調理学や栄養教育学など「食」に関する学びを深め、実際に栄養士の国家資格と教員免許も取得している。しかし、伊藤さんには新たな目標とも言える、もう一つの思いが芽生えていた。それは、高校2年の時に起きた東日本大震災をきっかけとして「伝える」仕事、放送業界に身を置きたいという熱い思いだった。特に、自分の言葉で直接伝えるアナウンサーの仕事が、伊藤さんの中で魅力を増していった。
 栄養士になるか、アナウンサーになるか、結論を持ち越したまま迎えた就活シーズン。伊藤さんは仙台のアナウンススクールにも通い始めていたが、資格を生かして安定した職業についた方が、両親を安心させられるだろうとも考え、悩んでいた。そんな時に周囲からの「今しかできないことをやった方がいいよ」というアドバイスで、気持ちは大きくアナウンサーへと傾いていった。しかし、なかなか取れない内定。折れそうになる心を支えてくれたのは両親や先生、友人たち。周りが着実に就職先を決めていく中で、諦めることなく挑戦を続け、ようやく就職が決まったのは4年生の冬のことだった。

番組のナレーション録り

番組のナレーション録り。顔が出ない分、声の表情がとても重要。そのため、発声練習も特に念入りに行っている。作り手の意図に沿ったナレーションができるように日々練習。

全国放送のロケ

この日は全国放送のロケで山寺へ。山形在住6年目でも、新しい発見が絶えない毎日。地域の人々と関わることが大きな財産になるので、ロケは大好きな仕事のひとつ。

自ら険しい道を選び、 
オンリーワンを目指した日々。

 そんなガッツがある伊藤さんの学生時代は、やはりとてもパワフルだった。まず、ゼミは研究に没頭できるように、と小酒井研究室を選んだ。これには理由があり、伊藤さんがオープンキャンパスで初めて本学を訪れた際に、模擬授業で小酒井先生が語った「ナンバーワンを育てようとは思っていない。他と比べたり競ったりするのではなく、オンリーワンを育てる大学です」という言葉に感動し、この先生についていこうと決めていたのだ。また、卒業研究では吾妻連峰に生息する白ザルの毛が白い理由を、栄養学の面から解明する研究に励んだ。米沢に何度も足を運び、動物実験にも挑戦した。これは学生に代々引き継がれている研究で、その成果が2017年に「吾妻の白猿の体色が白いメカニズムを一部解明」として発表された。伊藤さんもこの研究成果の一端を担っていたことになる。また、少人数のゼミだったため、学生同士の結束が固く、卒業後も集まって気兼ねなく何でも話せる仲間に出会うこともできた。
 さらに、部活動はソフトテニス部に所属。週4〜5日練習を行う中で、塾やスーパーでのアルバイトにも精を出した。「結構がんばっていました、私。アナウンススクールの学費は自分で出していたし」と当時を振り返り、改めて自分自身を労った。

やまがたチョイすの打ち合わせ

MCを務める番組「やまがたチョイす」の打ち合わせ風景。台本にないことも「こんなことを伝えよう!」などと、お互いにアイデアを出し合って番組を盛り上げるため常に一生懸命。

ニュース原稿の執筆

アナウンサーの仕事だけでなく、記者として取材をしてニュース原稿も書く。時には自らカメラで撮影し、一人で何役もこなして「伝える」多才な仕事ぶり。

学びや経験をプラスに昇華、
目標に向かって諦めない気持ち。

 さくらんぼテレビに就職して丸2年。伊藤さんは、情報番組やニュース番組でアナウンサーとして活躍している。県民からの認知度もアップし、街に出れば「いつもテレビ見てるよ、がんばってね!」そんな言葉をかけてもらえることも増えてきた。仕事を通して、学生時代には気づかなかった山形の魅力を改めて知る日々でもあるという。では、大学で学んだこと、体験したことがどのように今に生かされているのだろうか。「ピンポイントで答えるのは難しいですね。むしろすべてが自分自身の力になっていると思います。無駄だったことはひとつもない」という伊藤さん。就職活動の面接では、白猿の話で盛り上がり、畑違いの栄養士志望だったという話題でも関心を持ってもらえたことなど、すべてをプラス要素に転化できているところが凄い。
 今後は、さらに取材力を磨いて「伝える」能力を極め、結婚や出産を経てもこの仕事をずっと続けていきたいと抱負を語る。そのためにも体調管理は重要。責任が重い分、やりがい、手応えも大きい仕事だ。後輩たちにも、もっと放送業界に興味を持ち、チャレンジしてほしいと願っている。諦めずに頑張り続ける人に、チャンスは必ずやって来る、と進路に悩む学生たちの背中を力強く後押ししてくれる。テレビ画面越しに見る伊藤先輩の活躍が、これからも大きな励みになりそうだ。

大学時代、ゼミのメンバーと

大学時代、ゼミで苦楽を共にした同期のメンバーたち。県外に就職してしまった仲間も多いが、今でも定期的に集まるほど大の仲良し。相談し合い、励まし合ってリフレッシュ。

いとうひさか

いとうひさか●秋田県出身。2016年地域教育文化学部卒業。当初は栄養士志望。東日本大震災を機に、放送業界に興味を持ち、現在はさくらんぼテレビのアナウンサーとして、情報番組やニュース番組で活躍中。

※内容や所属等は2018年当時のものです。

他の記事も読む