はばたくひと #16

佐東俊輝

材料工学の知識を生かして恩返し、
あふれる地元愛、ものづくり愛。

2020.07.30

材料工学の知識を生かして恩返し、あふれる地元愛、ものづくり愛。

 

地元東北で高分子材料について学びたい、と本学工学部への進学を決めた佐東俊輝さん。大学としては希少な射出成形技術を用いた実験や高分子材料に関するビッグプロジェクトへの参加、さらにソフトテニス部では国公立大学の団体戦で優勝するなど、学業でも部活でも充実した日々を過ごした。現在は、山形カシオ株式会社に勤務し、大学で得た知識や経験を応用しながら山形のものづくりを全国、そして世界へ発信している。

研究とソフトテニスの日々、
粘り強く続けて成果につなげる。

 「ラケットのガットは何でできているんだろう」。佐東さんが材料工学に興味を持ったきっかけは、小学生の頃から続けていたソフトテニス。そのガットに使用されている材料の研究が工学部の機能高分子工学科(現在は高分子・有機材料工学科)で行われていることを知り、プラスチックなどの高分子材料への関心へと発展していった。山形県出身で地元東北での進学を希望していた佐東さんにとっては、理想的な進学先に出会えたと言える。
 大学の研究では、プラスチックなどの高分子材料に実際に触れながら、その特徴などを実感を伴って学ぶことができた。また、他の大学ではほとんど導入されていない射出成形技術で、実験試料を作成できたことも大変貴重な経験となった。さらに、高分子材料に関する大きなプロジェクトに関わる機会にも恵まれ、知識の幅が広がっただけでなく、完成品を目にした時の達成感と大きな感動を体感できたことで、ものづくりへのモチベーションが一層高まっていった。
 一方、部活動ではソフトテニス部に所属し、4年間ともに練習に励んだことで一生のつき合いになるであろう仲間に出会い、国公立大学の団体戦で日本一という結果にもつながった。研究と部活動、その双方から継続すること、粘り強く最後まで諦めずにやり通すことの大切さを学んだ。

完成の出来を確認する佐東さん

時計を見つめ、完成の出来を確認する佐東さん。現在取り組んでいる業務は、主に新技術・製品の開発。ふとした瞬間にも、大学時代の経験や学びが生きている。

地元企業で、世界の中核拠点。
山形カシオに見た魅力と可能性。

 大学院有機材料システム研究科に進学し、修士課程を修了した佐東さんは、就職先を決めるにあたって、2つの思いがあった。ひとつは、研究でプラスチックの射出成形技術に触れて芽生えた、プラスチック部品の製作に携わりたいという思い。もうひとつは、生まれ育った山形県への恩返しとして、山形のものづくりの知恵や技術を世界へ発信したい、という思いだった。そこで、世界に向けて身近なプラスチック部品を製造している県内企業、山形カシオ株式会社への就職を希望した。加えて、実際に触れたことのある射出成形機が山形カシオにもあったことで親近感を覚え、ここで働きたいという気持ちはより強くなった。
 山形カシオは、カシオグループのものづくりを担う中核拠点、つまりマザーファクトリー。山形で生まれた生産技術が世界中のカシオ工場で活用されることになる。まさに、佐東さんの思いをかなえるには絶好のフィールドだ。また、大学時代、実験方法を一から確立し、結果と評価を出すことまでを一貫して行ってきた経験は、山形カシオの特徴であるパーツの金型設計、製作、成形および華飾による加工処理から製品の組み立てまでを、すべて社内で行う「垂直統合型生産」と相通ずるものがある。ものづくりの醍醐味を存分に感じられるシステムだと受け止めている。

時計にタフネスという新たな概念を築き上げたG-SHOCK

時計にタフネスという新たな概念を築き上げたG-SHOCK。2017年には世界累計1億本出荷を達成。どこまでも強く、その先の強さを目指して。G-SHOCK、その挑戦に終わりはない。

ハイエンドモデルの製造に特化した“Premium Production Line”

山形カシオが誇る生産ラインの中でも、ハイエンドモデルの製造に特化した“Premium Production Line”。匠の技術と感性が、妥協のない品質を追究している。

大学でのすべての学びや経験が、
様々なカタチで将来につながる。

 大学で過ごした日々がまだ鮮明な今、その頃を振り返ると「いい思い出ばかり」という佐東さん。素晴らしい先生方や先輩、同期の仲間にも出会え、前述の通りビッグプロジェクトにも参加し、ソフトテニスでは全国優勝、学業でも部活動でもかなり密度の濃い6年間であったことがうかがえる。そんな自身の体験を踏まえて、これから大学進学を考えている高校生に向けてはこんなメッセージを寄せてくれた。「山形大学の工学部では幅広い分野の最先端知識を学ぶことができ、必ず将来のためになる時間を過ごすことができます。そして、研究だけでなく、部活動やサークルなど、何かひとつでも夢中になれるものを見つけて大学生活をさらに有意義なものにしてください」。
 現在、佐東さんは直接プラスチックを扱う仕事に携わっているわけではないが、実際にプラスチックなどの高分子材料について学んだことに少しでも関係していれば、学んだ知識がこんなところに生きてくるのかと感じることも少なくないという。これまで経験したことは今後もすべて何らかのカタチで生かされ、つながっていくのだろうと確信している。地元で学び、地元で働きながらも見据えているのは世界市場。メイドインヤマガタを支える一員として、佐東さんの挑戦は始まったばかりだ。

上司とコミュニケーションする佐東さん

上司とコミュニケーションする佐東さん。ものづくりには、仲間で進むチーム力が不可欠。先輩たちから多くを学び、今日も成長を続けている。

さとうとしき

さとうとしき●2018年度大学院有機材料システム研究科修了。山形県出身。プラスチック等の高分子材料に興味を持ち、工学部に進学。在学中は高分子材料に関するビッグプロジェクトへの参加、ソフトテニスの国公立大学団体戦での優勝などで活躍。現在、山形カシオ株式会社に勤務。

※内容や所属等は2020年当時のものです。

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