はばたくひと #25

松本達也

県の天然記念物
イバラトミヨを新種と確認
“カクレトミヨ”と
生息地を守る活動加速へ。

2022.11.30

県の天然記念物イバラトミヨを新種と確認 “カクレトミヨ”と生息地を守る活動加速へ。

 山形県天童市と東根市の湧水域にのみ生息するイバラトミヨ特殊型は、県の天然記念物として地元の人々によって保護されているが、温暖化に伴う渇水などの影響で絶滅のリスクが高まっている。環境省のレッドリストで「絶滅危惧IA類」に分類されながらも、正式な学名が付いていないため国の重点的保全対策の対象外となっている。よって、学名命名は地元保存団体等の数十年来の悲願となっていた。当時、本学大学院博士前期課程2年だった松本達也さんは、修士論文研究としてイバラトミヨ特殊型の分類学的研究を取り上げ、生息地整備、個体数調査といった保全活動に取り組みながら世界中の保存機関にある他のトミヨ属の種と比較解析。結果、国際的に認められた他の種とは明らかに形態的特徴が異なり、ゲノム解析でもこの地域固有の新種であることを確認。松本さんを筆頭著者に半澤直人本学理学部教授(当時)等と共著した論文を国際的動物分類学専門誌Zootaxaに投稿し、受理された。

採取風景

イバラトミヨの採取風景。何度も現地に出向き、生息地整備や個体数調査を行った。

 学名は「Pungitius modestus」、和名は常に水草に隠れている性質から「カクレトミヨ」と命名。学名が認定されたことで環境省の緊急指定種、国の天然記念物に指定される可能性が高まり、カクレトミヨとその生息地の保全対策が進展するものと期待されている。
 すでに修士課程を修了し、魚類分類学が盛んな鹿児島大の大学院博士課程に進学していた松本さんのもとに学名認定の知らせが届くと、「研究成果によってカクレトミヨの保全対策が進むことや関心が高まったことは嬉しいし、論文共著の先生方や保存に懸命な地元の人々に心から感謝したい」と喜びを語った。

カクレトミヨ

松本さんが論文を発表した新種「カクレトミヨ」。

 現在は、海水魚カサゴの仲間の新種発見を目指して研究を続けている。カクレトミヨの新種認定は、今後の研究活動の大きな自信となったに違いない。将来は、地元新潟県あるいは山形県に帰り、希少生物の保護などに関わっていきたいと思いは一途。数年後、たくさんのカクレトミヨが清流を泳ぎ回る、そんな光景で松本さんを迎えられたら素晴らしい。

まつもとたつや

まつもとたつや●新潟県出身。2021年3月大学院理工学研究科理学専攻修了。新種カクレトミヨを論文発表。鹿児島大学大学院在学中。

※内容や所属等は2022年9月当時のものです。

みどり樹

この内容は
山形大学広報誌
「みどり樹」Vol.82
(2022年10月発行)にも
掲載されています。

[PDF/3.9MB]

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