はばたくひと #26-②

坂本明美&三原法子

教員として活躍する卒業生に
恩師がエール!
地域に根づく教員の輪 vol.2

2023.05.15

教員として活躍する卒業生に恩師がエール!地域に根づく教員の輪 vol.2

2回にわたりお届けする「地域に根づく教員の輪」。vol.1では、山形県高畠町立糠野目小学校で教員として活躍する2人の卒業生の活動を紹介した。vol.2では、それぞれの山形大学在学中の所属ゼミ指導教員から当時の思い出やメッセージを語っていただいた。

vol.1はこちら

バトンを渡しつないでいく
それこそが食育

最初に話を伺ったのは、地域教育文化学部の三原先生。山形大学卒業生で、現在は糠野目小で栄養教諭として活動する鈴木梨菜さんの恩師だ。

三原先生

※ 画像をクリックすると過去の三原先生の記事をご覧いただけます。

――教え子の活躍をご覧になって、率直な感想をお聞かせください。
三原 鈴木さんの栄養教諭としての専門性を充分に生かした活躍を見て、大変嬉しく思います。小学校の給食は、子ども達の健全な成長と将来にわたる食の位置付けを決定するものです。彼女たちが糠野目小学校で行っている活動は、食育そのものだと思います。食育は一人でできるものではありません。在学中に彼女が「栄養士と違い栄養教諭は授業ができる」と言っていたことをよく覚えています。数年をかけて組織的に食育を進めようとしている鈴木さんの行動力を高く評価したいと思います。

――鈴木さんは、どんな学生でしたか?
三原 彼女は私のゼミ4年生で、6名の中のひとりでした。この学年はやる気のある生徒が多く、学生の課外活動の活性化を目指し学生を支援する「山形大学元気プロジェクト」に挑戦していました。3年次には新入生向けのレシピ集「食環ごはん」をつくり配布したり、4年次には高齢者対象のフレイル(虚弱)予防のレシピ本「元気さんさんごはん」をつくり、山形大学医学部附属病院や県立中央病院などに配布し好評を得ていました。
 実習授業で作った、学生が作る学生のための「創作弁当」(300円)は、下級生(1.2年生とその他希望者)からは、おいしいと人気でした。この経験から、安全安価な弁当を作るために必要な高いレベルの衛生管理や食材を見る目を学んだのだと思います。
 

10年後に
「先生、私ここまで登ったよ」と
言える人生を

――鈴木さんは先生方からの教えの大切さを社会に出てより実感しているようでした。
三原 「創作弁当」作りでは、栄養士役、調理師役と役割を決めて行動することで、その立場の仕事内容と時間配分、衛生管理のポイントを学びます。実際の厨房内では、司令塔の役割の若い栄養士が、ただ命令を下しても動いてもらえません。この授業によって学んだ経験が、糠野目小のベテラン調理師さんたちとの関わり方に良い影響を与えたと感じています。

――ほかにも、社会人としてのマナーについての指導が、現場で活きているともおっしゃっていました。
三原 研究室内では、挨拶や電話の受け方、目上の人への言葉使いなど、社会人としてどんな仕事においても初日から必要不可欠なマナーを厳しく教えました。
 「基本ができれば、何事も協力者が出てくる。全速力で、自分の目指す道に向かって欲しい。10年後に『先生、私ここまで登ったよ』と言える人生を送って欲しい。学生時に劣等生だった私ができたことだから、必ずできる。」それが私の口癖でした。
 卒業時には、彼女に「山形県内にいると卒業生の活躍の状況が耳に入るから、頑張るようにね」と、ちょっと脅しのようなエールを送ったことを覚えています(笑)。彼女は見事に、その言葉通りに邁進してくれましたね。

社会人として
第三者から評価される人材に

――先生は普段、どのような信念やテーマを持ち学生を指導されているのでしょうか?
三原 私が大学教員になった背景には、私自身が病院栄養士だった時代に、社会に出ても全く動けない新卒生が多く困ったという実体験があります。大学教育で社会とは何たることかを教えれば、動ける卒業生の割合が多くなるはずと考え「できる社会人として、第三者から評価してもらえる人材となる」ことを主として指導してきました。
 未熟な学生にとっては厳しさから苦手意識を持つ生徒もいるでしょう。しかし、卒業して社会に出てから、学生時代に私から聞いた言葉を思い出し納得する生徒が多く、卒業後に連絡をくれる学生が多いのは確かです。彼女もその言葉を思い出してくれたのだと思います。

――学科全体でどのような「人」を育てていきたいと思いますか?
三原 社会に貢献できる人、人のために行動できる人を育成することに加え、強さとやさしさの両面を持った学生を増やしていきたいと考えています。強さの中のやさしさ、その両面の出し方を憶えることが、社会の荒波を渡っていくための重要な要素だと考えています。

――最後に、鈴木さんにエールをお願いします。
三原 鈴木梨菜さん、これから母となられるとの事おめでとうございます。今後は、母親の視点からも子どもたちを見ることができるようになりますね。大きな視野に立った食育ができるよう、無理せずに進んで行ってください。

   

 

坂本先生

 糠野目小の教員として活動する木村優香さんは、児童教育コース坂本研卒の卒業生。恩師・坂本明美先生にお話を伺った。

教師として
大きく成長した姿を見て

――教え子の活躍をご覧になって、率直な感想をお聞かせください。
坂本 木村さんが教師として大きく成長し、生き生きと頑張っている姿を知ることができ大変嬉しいです。子どもたちが自分たちで育てた食材が給食となり、皆でいただくという経験は、子どもたちにとって大きな喜びとなり、達成感・成就感が生まれます。子どもたちも先生方も、とても貴重な経験をされていますね。

――木村さんはどんな学生でしたか?
坂本 木村さんはとてもしっかりとした学生でした。自分が研究したい具体的なテーマを持ち、卒業研究はスムーズに進んだ印象があります。資料を調べたり本を読んだり、自分で研究を進めていく力を持っていました。自分の意見をしっかりと持ち、わかりやすく丁寧に、落ち着いて話をする姿を見て、将来教師になっても、しっかりと自立し自分なりの実践を進めていくだろうと感じていました。

――社会に出て、先生方からの教えの大切さをさらに実感しているようでした。
坂本 卒業生から話を聞く機会は少ないので、本学で学んだことが何らかの形で少しでも役に立っているのでしたら、嬉しく思います。当たり前のことかもしれませんが、私ども教員は、授業やゼミでの内容はもちろんのこと、発言や関わりも学生たちのその後の将来や生涯にも影響を与え得る、ということを自覚しなければならない、と改めて思いました。

一人ひとりの思いや
願いの実現を目指して

――先生は普段、どのような信念やテーマを持ち学生を指導されているのでしょうか?
坂本 授業やゼミでは、学生一人ひとりの興味・関心を大事にすること、そして学生たちの思いや願い、やりたいことを可能な限り実現できるように努めています。また、学生同士の表現とコミュニケーションの場と時間を設けることも、心がけていることのひとつです。「自分が学生の立場だったら」という視点で物事を考え、学生たちと関わる中では、一人ひとりの良い面に目を向けるようにしています。

――学科全体でどのような「人」を育てていきたいと思いますか?
坂本 人との関わりや、人とのつながりを大事にする人。相手の立場になって考え、行動できる人。他者の話をしっかり聴く人。自分の思いや考えを表現できる人を育てていきたいです。

――最後に、木村さんにエールをお願いします。
坂本 お仕事はお忙しいと思いますが、ご無理などなさらず、木村さんらしく、子どもたちと歩んでいってください。

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みはらのりこ

みはらのりこ●地域教育文化学部講師/管理栄養士臨床栄養師。山形県出身。病院勤務を経て本学に着任。多年にわたる栄養指導業務等の功績が認められ、令和2年度山形県知事表彰、令和3年度厚生労働大臣表彰を受賞。

さかもとあけみ

さかもとあけみ●地域教育文化学部 准教授。教職研究総合センター兼任。教育方法学。鳥取県出身。関東地方での非常勤講師(複数の大学、小学校[ティーム・ティーチング]、高等学校看護専攻科)を経て本学に着任。

※内容や所属等は2023年5月当時のものです。

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