はばたくひと #15

伊藤千絵美

学部卒ながら地元山形で研究職。
グローカルな仕事で活躍。

2020.05.30

学部卒ながら地元山形で研究職。グローカルな仕事で活躍。

 「大学時代は、人生の夏休み」と振り返る理学部物理学科(当時)卒業の伊藤千絵美さん。しかし、それは遊んでばかりいたということではなく、勉強や友達との交流、アルバイトなど、大学生にしか経験できない時間を有効に使い、まさに青春時代を謳歌した日々という意味。地元志向で本学を目指し、宇宙への興味から高校時代は大の苦手だった物理の世界に敢えて飛び込んだ。大学での授業を通して、手を動かして実験をすることが楽しくなり、研究室は物性物理学分野へ。ナノ粒子を作製し、蛍光物質を作るという実験、研究に取り組んだ。

石英ガラス素材

純度が高く、耐熱性、光透過性にも優れた石英ガラス素材。透明・不透明・ブラックの3種類があり、用途別に最適な素材を選択し、加工する。半導体製造、通信、液晶パネル製造などに使用される。

 大学院に進む学生が多い理学部だが、伊藤さんは就職を希望し、東日本大震災直後の大変な時期に就職活動に奔走した。「できれば地元で就職したい」と願ってはいたが、選択肢を増やすために東日本エリア内で就活を展開。それでもなかなか内定がもらえず、疲れ、焦り始めた頃、合同説明会で東ソー・クォーツ株式会社に出会い、とても明るく心地よい社風を感じ、入社を希望した。役員面接でもその印象は変わらず、不思議なくらい自然体で自己アピールができ、それまでの苦戦が嘘のようにすんなりと就職が決まった。地元山形の企業で、しかも学部卒では難しいとされている研究職。この時、“就活は縁”を実感したという。

後輩へ指導する伊藤さん

新技術開発グループのリーダーとして後輩に指導を行う伊藤さん。高精度ガラスの開発・実用化に向けて進捗状況の管理、データの確認等、プロジェクト全体をまとめている。

 東ソー・クォーツ株式会社は、スマホやタブレット、テレビなどに使われる半導体の製造装置に欠かせない石英ガラスを加工する会社。台湾に製造子会社を持ち、山形・東京・岩手・富山・ソウル・台湾にも営業部門を構えている。伊藤さんは、新技術開発部で、新技術開発グループのグループリーダーとして新素材の開発に取り組んでいる。2019年はその進捗状況等の報告のために米国のグループ企業に赴き、英語でのプレゼンテーションも経験した。山形でも世界とつながる仕事ができ、専門外の分野だったとしても、学生時代に培った論理的な考え方やデータの見方などが今を支えている。伊藤さんのイキイキとした仕事ぶりは、後輩学生たちの希望の道標になりそうだ。

いとうちえみ

いとうちえみ●山形県出身。2012年理学部物理学科卒業。東ソー・クォーツ株式会社新技術開発部新技術開発グループのグループリーダー。昨年は米国出張を経験。趣味は温泉、カラオケ、ライブ等。

※内容や所属等は2020年3月当時のものです。

みどり樹

この内容は
山形大学広報誌「みどり樹」
Vol.77(2020年3月発行)にも
掲載されています。

[PDF/4.7MB]

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