はばたくひと ♯32

小林廣樹

業界経験8年で
代表取締役社長に就任
再生型M&Aの
マーケット拡大に意欲

2024.04.30

業界経験8年で代表取締役社長に就任再生型M&Aのマーケット拡大に意欲

昨春、34歳の若さで「みらいエフピー株式会社」(東京都)の代表取締役社長に就任した小林廣樹さん。同社は資金繰りの悪化や後継者不足などから、存続が危ぶまれる中小企業に対する再生型M&Aを専門に扱っている。山形銀行に約5年間勤務し、企業の経営コンサルティングなどに携わった経験を生かし、2016年にM&Aの業界に飛び込んだ。現在は社長業の傍ら、アドバイザーとしても前線で活躍している。「どんなに難しい案件もあきらめず、事業が存続できる道を探っていく。責任も大きく大変な仕事だがそれだけのやりがいがあります」と笑顔を向ける。

自力再生が困難な企業を救う
スポンサー探しに奔走

「みらいエフピー株式会社」は、M&A仲介業大手「M&Aキャピタルパートナーズ(以下MACP)」のグループ企業。過剰債務や資金繰りの悪化などで、自力再生が困難になった中小企業に対し、買い手となるスポンサー探しや債務整理の手続きといった再生型M&Aを中心に業務を行う。昨春、34歳で代表取締役社長に抜擢された小林さんは、経営計画の作成や業績管理、経営の意思決定といった社長業に加えて、アドバイザーとして現場に赴く忙しい毎日を送っている。
 「債権者集会で出席者から罵声を浴びせられるなどの修羅場は何度もあります」と話すが、その言葉とは裏腹に明るい表情が印象的だ。「会社が破産すれば従業員や取引先などたくさんの人が困ることになります。事業の譲渡先を見つけることができれば、雇用は維持でき連鎖倒産も防げる。私たちが地域経済の一端を担っているというプライドを持って仕事をしています」ときっぱり。
 経営破綻が懸念される企業が全国で30万社に上るといわれるなか、再生型M&Aができる人材は全国でも多くないのが実情だ。同社の社員数は現在13人と少数精鋭だが、将来的には60人体制を目指しており、2027年までに再生型M&Aのマーケット拡大、そしてシェアナンバーワンを目標に掲げている。

 

みらいエフピー3

債務超過に陥った企業の場合、単純なM&Aで買い手を見つけることは難しい。みらいエフピーでは全国45行の提携金融機関やMACPとの豊富なネットワークを強みに過去累計80社以上の成約実績を持つ

みらいエフピー4

コロナ融資後倒産の増加などで、今後再生型M&Aのニーズがさらに高まることが予測されるなか、27年9月期までに市場占有率26%以上の獲得と日本最大級のネットワークの構築を目指す

ベンチャー企業の立ち上げに参加
ビジネスの面白さ知るきっかけに

 金融分野に関心があった小林さんは、人文学部法経政策学科の経済・経営コースへ進学。山口昌樹教授のゼミで論理的思考やプレゼンの仕方などを学び、金融を通して社会を見る目を鍛えた。大学1年生の秋からは自ら貯めた資金を元手に株式投資にも挑戦した。
 大きな財産になった出来事が大学4年生で参加したインターンシップ。当時、小林さんが大学内で立ち上げた就活支援サークルが縁で、都内にあるベンチャー企業の新規立ち上げの手伝いをした。
 「学生向けに就職情報などを提供するものでしたが、パソコンとホワイトボード1つで始まった事業が徐々に拡大し、自分たちが構築したサービスが多くの人に利用されることがうれしく、ビジネスの面白さを知るきっかけになりました」と振り返る。当時の創業者とは仕事を通して現在も交流があり、経営者の先輩としても心強い存在だ。
 就職活動では業界最大手の人材会社から内定を受けたが、大学で培った経営や金融の知識を発揮したいとの思いで地元の山形銀行を選んだ。入行に当たっては銀行の花形とも呼ばれる法人営業部を志願。しっかりと結果を出すことが条件の配属だったが、株式投資の経験を生かした営業力と持ち前の積極性で成約を積み重ね、同期入社のメンバーの中で売り上げトップを獲得し期待に応えた。

社会のフィールドは無限大
リスクを恐れず挑戦しよう

 入行から5年。法人営業部の主力として活躍していた小林さんは、MACPへの転職を決意する。「これまで利益優先が当たり前と思っていた自分にとって、同社の掲げる『クライアントファースト』の考えが新鮮で感銘を受けた。M&Aはより専門性の高い知識や経験が求められ、誰もができる業種ではない所にも魅力を感じました」と動機を話す。
 MACP初の銀行出身者として入社した小林さん。最初に手掛けた案件は特に印象に残っているという。「グループ内での債権債務が複雑であり、大幅債務超過かつ資金ショートが半年後という状況で、上司からも手を引くよう勧められましたが、銀行時代に同じようなケースを見てきたことや、簡単には諦めたくないとの思いがあり、オーナーと膝を突き合わせて、時には深夜になるまでM&Aのストラクチャー(譲渡方法)について話し合いました」。
 その結果、資金ショート一歩手前でのM&Aに成功。この成果は社内でも高く評価され、以降銀行出身者の積極採用につながるなど、小林さんにとっても大きな自信になった。
 「働くことにマイナスのイメージを持つ人もいるかもしれませんが、社会には自己実現できるフィールドが無限に広がっています。リスクを恐れず自分のやりたいことに挑戦する醍醐味を味わってください。大学で経験したことや人間関係はこれからの人生で大きな糧となります。大いに遊んで学んで、悔いのない学生生活を送ってください」と後輩たちに温かいエールを送ってくれた。

 

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こばやしひろき

こばやしひろき●山形県南陽市出身。2012年人文学部法経政策学科経済・経営コース卒(現・人文社会科学部経済・マネジメントコース)。16年「M&Aキャピタルパートナーズ」に入社し、約5年間で20件余りの成約に貢献。「みらいエフピー株式会社」のグループ傘下入りに伴い、21年10月より同社取締役に参画、23年4月1日付で代表取締役社長に就任。

※内容や所属等は2024年3月当時のものです。

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