研究するひと #06

安藤耕己

地域に飛び出し、地域と連携。
実践的な学びの場を創出。

2017.11.30

地域に飛び出し、地域と連携。実践的な学びの場を創出。

大学院修士課程までは民俗学を専攻していたという安藤耕己先生は、インタビューを駆使して研究を進める民俗学的手法を、専門である社会教育学の研究に取り入れている。また、南陽市の「クリスマスだがしや楽校」や山形市のNPO法人との連携によるフィールドプロジェクトなど、活発な学外活動との関わりが目を引く。子育て支援から青年教育事業まで、幅広い地域貢献と学生たちの社会参画を融合させている。

南陽若者コンペを通して
第三領域の居場所づくり

 社会教育学が専門の安藤先生は、2011年から南陽市の青年教育事業に深く関わり、ワークショップやイベントの講師・アドバイザー、シンポジウムのコーディネーターなどを務めている。南陽市で2008年から2010年に実施され、今年、市制施行50周年記念事業として復活した「南陽若者コンペティション」にもアドバイザーとして協力している。南陽市が元気になる、まちづくりアイデアを競うこのコンペにエントリーするためには、6回のワークショップに参加しなければならない。実は、このコンペの真の狙いはワークショップを通して若者たちに企画力や提案力、プレゼン力を身に付けてもらうことにある。さらには、サークル活動への発展や仲間づくりにつながることが期待されている。
 以前から学校教育を終えた若者たちの家庭と職場以外の〈第3の生活領域〉「居場所づくり」に関心を持っていた安藤先生にとっても、非常に興味深い取り組みと言える。こうした南陽市と安藤先生の連携に、少しずつ学生たちも関与させることを試みている。本年度のコンペでは、学生がワークショップにオブザーバー参加するところにとどまったが、年末の恒例行事となっている「クリスマスだがしや楽校」には研究室のゼミ生たちが出店者として本格的に関わっている。

南陽市クリスマスだがしや楽校

南陽市クリスマスだがしや楽校毎年12月に開催されている「クリスマスだがしや楽校」に安藤先生のゼミの学生たちが出店者として参加。自分たちで考えた工作を子どもたちと一緒に作っている。

出店者として実践で学ぶ
「クリスマスだがしや楽校」

 「クリスマスだがしや楽校」は、青少年と地域の大人との交流・コミュニケーション、世代を超えたつながりを築くことを目的に開催されている、南陽市の志立だがしや楽校主催の恒例イベント。出店者がモノづくりワークショップやパフォーマンスを展開し、来場者にさまざまな体験や交流を提供する。地域の子どもたちには豊かな心と夢を、出店する若い世代にはコミュニケーション力の向上や地域住民同士の関係づくりを、そんな思いが込められている。そこに、安藤先生のゼミ生たちも出店者として参加している。

学生たちが手掛けた試作品

学生たちが手掛けた試作品クリスマスだがしや楽校のワークショップで子どもたちと作る作品の試作品。紙コップで作るけん玉や飛び出すカードなど。小学校低学年でも作れるものを目安にしている。

 あまりお金をかけずに身近な材料で作れるもの、小学校の低学年でも作れるもの、クリスマスにふさわしいものなど、制約も多い中、どんなワークショップを企画するか、学生たちでアイデアを出し合い、決定し、準備を進める。指導する児童教育コースの学生は小学校教員免許必修のため、子どもと接することには慣れているもののワークショップの運営経験はない。そこで、外部からワークショッププランナーを招いての授業も行っている。地域の子どもや大人たち、そして出店者同士、さまざまな交流の中で学生たちの気づきは大きい。

外部講師を招いてのワークショップ

外部講師を招いてのワークショップ県立高校の美術講師でワークショッププランナーのイシザワエリさんを大学に招いて開催したアートワークショップ。対話や学び合い、ものづくりのプロセスの大切さを学んだ。

子育て支援NPOとの連携
フィールドプロジェクト

 安藤先生は、地域教育文化学部で実施している地域連携型授業「フィールドプロジェクト(まちづくりと社会参画)」も江間史明先生、佐藤慎也先生とともに担当している。幼稚園や小学校の教諭、まちづくり等に関わる行政職、NPO法人職員等をめざす学生を対象とした、地域社会における子育て支援の現状や課題を理解するとともに、子育て支援施設がまちづくりに果たす役割について考察することを目的としたプログラムだ。具体的には、山形市のNPO法人「やまがた育児サークルランド」が運営している「子育てランドあ〜べ」と山形市児童遊戯施設「べにっこひろば」を主なフィールドに、事前学習としての講義と見学、子育て支援ボランティア研修としての座学と施設実習を行った上でボランティア活動を体験し、最後にふりかえりワークショップを行う。通年型のかなりハードな講座ながら、2017年度も多くの受講生数を抱える人気講座。特に、「子育てランドあ〜べ」おやこ広場での実習では、子育て中の親と接する機会も多く、子育ての楽しさ・大変さをよりリアルに体験的に学ぶことができる点に価値を見いだしている学生が多いという。
 とかく教育は学校にウエイトが置かれがちだが、安藤先生は学卒後の成人教育および学齢児童・生徒を対象としたフリースクールやフリースペースにも着目。そうした場面での、行政職員やNPO法人の役割を伴走(奏)者と位置づけて研究を行っている。社会教育学は今後さらに重要性が高まるであろう分野。安藤先生のますますの行動力、指導力に期待したい。

「べにっこひろば」の施設見学

「べにっこひろば」の施設見学事前学習の一環として山形市児童遊戯施設「べにっこひろば」を見学する学生たち。遊具やスタッフとしての配慮などを学んだ上で、後日、子育て支援ボランティアを体験。

せおかずや

あんどうこうき●准教授/専門は社会教育学、生涯学習論。筑波大学大学院博士課程教育学研究科、単位取得退学、修士(文学)。高校教諭、吉備国際大学准教授等を経て、2010年本学着任。南陽市の教育行政に関わり、行政とNPOの連携についても研究。

※内容や所属等は2017年当時のものです。

みどり樹

この内容は
山形大学広報誌「みどり樹」
Vol.72(2017年10月発行)にも
掲載されています。

[PDF/3MB]

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