まなぶひと #06

サムエル・ムニャカ・キマニ

地球環境にもやさしい稲作を探求
研究発表でベストポスター賞受賞。

2018.01.30

地球環境にもやさしい稲作を探求研究発表でベストポスター賞受賞。

ケニアからの留学生サムエル・ムニャカ・キマニさんは、地球環境に配慮しながらアフリカ地域での稲作を発展させるための研究に取り組む大学院農学研究科の2年生。2017年9月にオーストラリアで開催された「第23回国際環境生物地球化学シンポジウム」では、ベストポスター賞を受賞。2018年3月に修士課程修了後は金沢市での企業研修を経て、9月に帰国の途に着く。近い将来、本学での学びがケニアの地で実を結ぶ。

JICAの人材育成プログラムで留学
ケニアで環境問題に配慮した稲作を。

 キマニさんは、本学と学術交流協定を締結しているケニアのジョモケニヤッタ農工大学の卒業生。すでに土地利用計画の仕事に就いていたものの、本学国際交流担当の大崎直太教授が同大学に駐在した際に大学の恩師に紹介され、留学を勧められた。独立行政法人国際協力機構JICAが実施しているアフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)「修士課程およびインターンシップ」プログラムを活用し、2015年9月に来日。半年間は研修員として活動し、その間に試験、面接に合格して正式に本学大学院農学研究科生物資源学専攻の学生となった。植物栄養学・土壌学が専門の程為国(てい いこく)准教授の指導のもとで、稲作に関わる水と土壌に関する研究に取り組んでいる。
 現在のケニアの主食はトウモロコシで、稲の生産量は少なく、ずっとアジアからの輸入に頼ってきたが、国としても稲作の普及・拡大を目指している段階だという。そんな母国のためにキマニさんは、生産性と環境保護を両立できる稲作農業を追求している。地球温暖化を引き起こしている温室効果ガスは、石油・石炭を燃やした時に出る二酸化炭素だけの問題ではない。実は、水田から放出されるメタンも強力な温室効果ガス。その抑制にAzolla(アゾラ)という熱帯の水生浮遊植物が有効なのではないかと着目している。

イネをポット栽培をするキマニさんとゼミ生

月山や鳥海山を望む農学部の屋上。2017年夏、イネをポット栽培し、そこから放出されるメタンの量などを計測する実験を行った際の様子。程先生のゼミの仲間といっしょに撮影。

熱帯の植物アゾラを水田に投入
温室効果ガスの抑制、節水を図る。

 水生浮遊植物アゾラで水田の水面を覆うことで、メタンの放出が削減される上、水の蒸発も抑えられて節水効果が期待できるというのだ。水資源の豊かな日本では、水田の水を節水するという感覚はあまりないようだが、ケニアにおいては重要な問題。さらに、アゾラによって雑草の繁茂も抑えられるとも考えられている。そのための実証実験として大学の演習用圃場や屋上でイネを育てて特殊な装置で放出されるメタンの量を測定するとともに、アゾラ投入のメタン削減効果についても研究を進めている。 
 これらの研究をまとめたものを携えて2017年9月にオーストラリア・ケアンズで開催された「第23回国際環境生物地球化学シンポジウム」に出席。俵谷圭太郎教授、程為国准教授等との連名でポスター発表を行った。国際環境生物地球化学学会が主催するこのシンポジウムは、1973年にアメリカで始まり、2年おきに世界各地で開催されている国際会議で、キマニさんの発表はベストポスター賞に輝いた。受賞の要因として、程先生は「地球温暖化対策として稲作におけるメタン発生の抑制に着目している点がタイムリーということと、キマニさんの英語力、伝える力が優れていたからではないだろうか」と分析。とはいえ、この研究はまだ完全に結論づけられたものではなく、次の段階としてイネとアゾラを一緒に生育させて実用化に向けた実験を行うことを目標としている。

ポスター発表を行うキマニさん

オーストラリアで開催された「第23回国際環境生物地球化学シンポジウム」でポスター発表を行うキマニさん。ポスターの内容に興味をもった来場者に丁寧にわかりやすく説明した。

賞状を手にしているキマニさん

キマニさんが菅野孝盛さん、俵谷圭太郎教授、程為国准教授らと連名で行ったポスター発表がベストポスター賞を受賞。賞状を手にして笑顔のキマニさんと程先生(写真右)。

公私ともに充実の鶴岡ライフ
再来日し、博士号の取得を希望。

 来日して2年と2カ月、「鶴岡の人はとてもフレンドリーで、ショッピングモールをはじめいろいろなものが揃っていて生活するにも便利。稲作地帯でもあるのでイネの研究をするにも最適」とキマニさん。週末には、出羽庄内国際村で英会話の指導をしてプライベートでも国際交流に努めたり、温海さくらマラソン(30km)に出場し、2時間12分という好成績を収めるなど、鶴岡での留学生活を満喫している。2018年3月には修士課程を修了し、その後、半年間は金沢市で企業研修を積んで9月に帰国する予定。鶴岡を離れる前に一度スキーに行ってみたいという。基本的に年中暑いケニアでは経験できない冬を、楽しい思い出として持ち帰ってほしいものだ。
 ケニアと鶴岡、栽培されるイネの品種も気候条件も異なるが、本学で学んだことをさまざまなカタチで応用することでアフリカ全体の農業の発展に役立てられるはず。これからますます深刻化する環境問題、地球環境になるべく負荷をかけない稲作は、まさに今後目指すべき農業の姿。母国の農業に貢献した後に、再び日本に戻って博士号を取得したいと意欲を見せるキマニさん。また、鶴岡でこの優しい笑顔に会える日を楽しみに待ちたい。

研究室の学生とキマニさん

程先生の研究室の学生たちが、東京大学小林和彦教授が代表を務めるプロジェクトに参加。栃木県の有機農家で水田圃場の土壌調査を行った。後列左端がキマニさん。(撮影者:程先生)

キマニさんにとっての
山形大学とは?

さむえる・むにゃか・きまに

さむえる・むにゃか・きまに●ケニア出身。大学院農学研究科生物資源学専攻2年。ABEイニシアティブプログラムで2015年9月に来日。生産と環境の両面を考えた稲作が研究テーマ。ボランティアで英会話を教えるなど、国際交流にも積極的。

※内容や所属等は2018年当時のものです。

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