まなぶひと #52

布尾航誠

7人制サッカー日本代表に選出。
メキシコで世界の舞台を経験。

2024.12.30

7人制サッカー日本代表に選出。メキシコで世界の舞台を経験。

 10歳からサッカーを続けている本学大学院理工学研究科化学・バイオ工学専攻1年の布尾航誠さんが、7人制サッカーの日本代表チーム「ムラッシュFC」のメンバーに選出された。チームは2024年5月、6月にメキシコで開催された国際大会「キングス・ワールドカップ」に初参加。初戦に出場した布尾さんは日本代表メンバーの最年少で、唯一の学生選手。世界の舞台を経験し、「改めてサッカーが好きだと感じました」と晴れ晴れとした表情を見せる。

大学やアルバイト先など、
山形の人々の温かい応援に感謝。

 国際大会「キングス・ワールドカップ」には世界の32チームが参加した。7人制サッカーは11人制サッカーに比べてマイナーな競技で、日本が国際大会に出るのは初めて。布尾さんはウルグアイ代表「Raisa FC」との初戦に出場したが、残念ながら日本は4対10で負けた。
 「僕自身、身長が163cmと小柄な上に足が遅いので、海外選手の体格の良さやスピードに圧倒されました。フィジカル、技術、スピードなど、相手チームの方が格上ですが、戦術を練れば、勝てなくはなかったと思います」と海外デビュー戦の手応えを語る。
 セカンドステージの敗者復活戦は、ウクライナ代表「UA Steel」に9対1で日本が勝利。決勝トーナメント進出をかけたラストチャンスラウンドは、トルコ代表「Limon FC」に0対2で敗れた。
 布尾さんは全試合にベンチ入りすることができたが、初戦以外は出場機会を得られず、悔しさを感じながらも「貴重な経験になりました」と言う。
 通常のサッカーはフィールドプレイヤー10人、ゴールキーパー1人の1チーム11人。それに対して、フィールドプレイヤー6人、ゴールキーパー1人の7人編成で戦う「キングス・ワールドカップ」では、ボードゲームのような要素が加わった大会で、コートの広さやルールも異なる。20分ハーフ の計40分、18分にサイコロを振って出た目の人数で残り2分を戦う、38分からはダブルゴールで1ゴールが2得点になるといった高いゲーム性も特徴だ。「11人制サッカーとは別の思考でポジショニングをしなければなりません。どのタイミングでパワーを使ったらいいのか迷いましたが、7人制ならではの面白さがありました」と説明する。
 「またチャンスがあれば、より多くの試合に出てチームに貢献したいです」と、今も自主的に体づくりに励み、日本代表メンバーのアドバイスも参考にしながら、食事にも気を配っている。
 今回、日本代表入りが決まり、大学の友人など周囲からの応援に感謝する。「特に山形の人は温かいです。居酒屋でアルバイトをしているので、帰国後も常連さんから『応援していた』と声を掛けてもらいました」と顔をほころばせる。

日本がウクライナに勝利し、ベンチ入りしていた布尾さんも喜びを爆発。「めちゃめちゃ嬉しかったです。カメラマンが目の前に来たので、思わず両手を挙げてポーズを取りました」とはにかむ。

チーム最年少、唯一の学生。
元プロら仲間から刺激を受ける。

 布尾さんは本学工学部化学・バイオ工学科4年生の時に、7人制サッカー日本代表のセレクションに応募した。大学4年間はサッカー部に所属し、3年生の時には副キャプテンを務めた。ポジションはDFとMFを兼任したが、試合への出場機会に恵まれなかったことが動機の一つ。
 「ベンチ入りができてもスタメンにはなれなくて。試合に出ないのに、なぜかいつもベンチに座っていました。勉強以外のことも成し遂げたいと思いました」と打ち明ける。
 11月に本学のサッカー部を引退した後も個人練習を継続。大学院への進学を決め、本学の大学院理工学研究科1年になって間もない4月にセレクションを受け、ゴールデンウイーク前に合格通知が届いた。
 「合格通知はメールで突然届いたので、詐欺のメールかと思いました」と、最初は合格に半信半疑だったという。44人が受け、選出されたのは、13人。その中には、日本代表経験のある那須大亮さんなどの元プロサッカー選手もいる。布尾さんはDFのポジションで通過し、MFも兼任。今回の日本代表メンバーでは最年少で、唯一の学生だ。
 選出された選手とLINEのグループを組んで連絡を取り合うようになり、「本当に代表に入ったんだと実感が湧いてきました」とはにかむ。
 合格してから大会までは週1回程度、東京での全体練習に参加。「世界大会に出るチームの練習は、やっぱりすごいと思いました。日本代表経験のある元プロの選手もいて、技術面以外でもいろいろと勉強になりました」と糧にできたようだ。

大学4年生の引退試合でサッカー部の仲間と撮影。「あまり試合に出られませんでしたが、サッカーはとても楽しかったです」。工学部のキャンパスは米沢市にあるため、練習のために山形市へ週3日通った。

火力発電の発電効率を研究。
サッカーに関わるものづくりに興味。

 布尾さんは小学4年生の時にサッカーを始め、最初は小学校が運営する課外活動に参加した。小学5年生から地元の愛知県のクラブチームに入り、中学校は小学校とは別のクラブチームに所属。大阪の興國高校へ進学し、プロの選手を多数輩出しているサッカー部に入部した。
 「レギュラーになれず、個人的に何の実績も残せなかった」という高校時代。「卒業後もサッカーを続け、試合に出たい」と考え、本学を志望した。私立大に比べて学費を抑えられる国公立大の中から進学先を探し、本学のサッカー部が、Jリーグのチームと練習試合をしていることを知ったことで、「後悔なくサッカーができる環境」と受験した。
 工学部化学・バイオ工学科の志望理由は「数学が好きだから。父親が理系出身で車関係の職業に就いていることもあり、山形大の工学部が一番合っていると思いました」と明かす。
 さらに、「『大学院に行っておけば良かった』と後悔したくない」と本学大学院理工学研究科に進み、化学・バイオ工学を専攻。主に木と石炭で燃料を作り、火力発電の効率を上げる研究を行っている。

布尾さんが所属しているのは、2つの研究室による合同研究室。大学4年生から大学院2年生まで3学年の約20人の学生で分担し、火力発電の効率などを分析、検証している。

 「以前は父と同じような車関係の仕事に就こうと考えていましたが、キングス・ワールドカップを経験して、サッカーと関わっているのが自分らしいと思うようになりました。例えばスパイクなど、サッカーに関係する開発に携われたらいいです」と将来の夢は変わりつつある。
 「サッカーを続け、試合に出たい」と本学に入学するも、レギュラーになれなかった大学4年間。大学院に進み、より専門的な研究に励みながら7人制サッカーにも挑戦し、見事日本代表の招集をつかみ取った。諦めず挑戦し続ける姿勢と行動力で、学生生活を充実させている。

布尾さんの拠点は米沢キャンパス。「故郷の愛知県はあまり雪が降らないので、雪が多い山形県で生活して精神的に強くなれたと思います。米沢市は自然が豊かで、自転車で走ると気持ちがいいです」。

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ぬのおこうせい

ぬのおこうせい●愛知県長久手市出身。大学院理工学研究科化学・バイオ工学専攻1年。2024年に7人制サッカーの国際大会「キングス・ワールドカップ」に日本代表として出場。ポジションはDF(ディフェンダー)、MF(ミッドフィルダー)。大阪の興國高校を経て、本学工学部化学・バイオ工学科に入学。将来はサッカーに関わるものづくりへの興味が高まっている。

※内容や所属等は2024年7月当時のものです。

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