まなぶひと #18

佐藤雅士&佐久間春奈

山形大ならではの花笠サークルで
地域貢献につながる国際交流。

2019.07.30

山形大ならではの花笠サークルで地域貢献につながる国際交流。

「ヤッショーマカショ、ライラック!」2019年11月、こんな掛け声がイタリア・フィレンツェの街にこだまする。「第21回フェスティバル・ジャポネーゼ」というイベントで花笠踊りが披露されるのだ。日伊友好協会LAILACの依頼を受け、2019年2月に花笠サークル「四面楚歌」の佐藤雅士さんと佐久間春奈さんが現地に赴き、踊りを指導。イベント当日もイタリアの人々と一緒に踊り、日本を、山形をアピールする。

花笠サークル「四面楚歌」で
山形でしか経験できないことを。

 佐藤さんも佐久間さんも宮城県仙台市出身。隣県ではあるが山形のことをあまり知らなかったという2人は、それぞれ山形でしか経験できないことに挑戦したい、山形のことをもっと知りたい、そんな思いで花笠サークル「四面楚歌」に入った。紅花をあしらった華やかな笠を手に、「花笠音頭」の曲に合わせて躍動感たっぷりに花笠踊りを踊る。8月初旬に山形市で開催される東北四大祭りの一つ『山形花笠まつり』に毎年参加しているほか、全国各地の祭りやイベントへの出演依頼も多い。また、大学の入学式でも毎年、踊りを披露しており、多くの新入生が花笠踊りにはじめて出会い、このサークルを知るきっかけにもなっているようだ。そのPR効果もあってか、メンバーは年々増え、現在では180名にも上る人気サークルとなっている。
 一口に花笠踊りと言っても、踊りの種類は優雅な女踊りや勇壮な男踊り、ダイナミックな笠回しなど様々あり、四面楚歌のメンバーは先輩から後輩へと教え継いで14種類の踊りをマスターする。また、踊りを披露するだけではなく、学校や各種施設、イベント会場などで踊り方を指導する機会も少なくない。しかし、まさか花笠踊りを教えるためにイタリアに渡ることになるとは予想もしていない展開だった。

「安久土行進」を披露する様子

2017年5月に茨城県で開催された「第14回常陸国YOSAKOI祭り」に初参加し、身体をくの字に曲げて踊る「安久土行進」を披露。よさこい踊りのイベントで山形の花笠踊りが異彩を放った。

花笠踊りを披露する様子

「第14回常陸国YOSAKOI祭り」に招待され、花笠踊りを披露する四面楚歌のメンバー。花笠を番傘に持ち替えて、大きく振ったり回したり、より華やかにダイナミックに踊る。

「東北絆まつり2017仙台」に参加した際の画像

「東北絆まつり」には、前身である「東北六魂祭」の時から参加している。この写真は、「東北絆まつり2017仙台」に参加した際の一枚。他県の人々との交流も大きな楽しみの一つ。

日伊友好協会会長の目に止まった
四面楚歌のダイナミックな踊り。

 四面楚歌に花笠踊りの指導を依頼してきたのは、「日伊友好協会LAILAC」というイタリア・フィレンツェで日本文化普及のために様々な活動を行っている団体で、日本舞踊や家庭料理、書道などの体験教室をイタリア人向けに開催している。その協会の会長が山形県の伝統舞踊である花笠踊りに興味を持ち、山形花笠まつりで四面楚歌の踊りを目にして、より関心を高めたということで接点が生まれた。特に、佐藤さんは西洋美術史を専攻し、ローマでの学術調査のためにイタリア留学を予定していたこともあって、会長との間で話が盛り上がり、イタリアで花笠踊りを指導してほしいとの打診を受けた。佐藤さんは2018年8月に予定通りイタリアへ留学。その1カ月間で実践的にイタリア語を学び、日常会話には困らないレベルまでマスターしたという。
 その後、イタリア・フィレンツェで花笠踊りを指導してほしいという依頼が、徐々に具体化し、1人だけでは指導が難しいということで佐藤さんと佐久間さん、2人の渡航が決まった。「地元志向ですが、大学時代に一度は海外へ行きたいと思っていたのでとてもラッキーでした」と佐久間さん。初めての海外がイタリア・フィレンツェ、しかも、観光ではなく踊りの指導者として招待されての渡航となり、幸運とも言える希少な経験となった。

現地での指導の様子

イタリア留学で体得したイタリア語で、細かい所作を指導する佐藤さんと、実際に踊って見せながら指導する佐久間さん。イタリアの人々の熱心さに2人の指導にも熱が入る。

日伊友好協会のみなさんとの集合写真

佐藤さんと佐久間さんが花笠踊りを指導した、日伊友好協会のみなさん。幅広い年齢層の方々が日本の文化に親しんでいる。2人の間でやさしくほほ笑む女性は協会会長の佐々木さん。

熱心なイタリアの人々とともに
11月の本番は元気に笑顔で。

 2019年2月、約10日間の日程で、2人はイタリア・フィレンツェの日伊友好協会で花笠踊りの指導を行ってきた。11月に開催される「第21回フェスティバル・ジャポネーゼ」で花笠踊りを披露するために、イタリア人10名と現地在住の日本人4名の計14名に4種類の花笠踊りを指導。20代から70代まで幅広い年齢層の方々が、とても熱心に真剣に練習に励んだという。その熱意に応えようと2人の指導にも熱が入り、イタリア人には難しい所作についてはアレンジするなど工夫もした。「ヤッショーマカショ、ライラック!」と、日伊友好協会の名称を盛り込んだ掛け声をかけながらの練習で一体感は高まり、言語や文化の違いを越えた心の交流を実感することができた。
 次は11月、2人は再びイタリアに渡り、踊りの最終指導を行い、フェスティバルでも一緒に踊る予定になっている。フェスティバル・ジャポネーゼは、柔道や剣道、日本舞踊や茶道など、さまざまな日本文化をイタリアの人々に紹介する、来場者1万人を超える人気イベント。そこで日本の伝統文化の一つとして「花笠踊り」を元気に笑顔で披露し、国際交流の一翼を担う。2人にはその貴重な経験を大いに楽しみ、社会人となる今後の人生にも存分に生かしてほしい。

放課後に行われる練習風景

放課後に行われる練習風景。1年生は上級生からの指導を受け、6月までに14種類ある踊りのうち4種類のマスターを目指す。花笠まつりが近づくと、練習はさらに厳しさを増す。

個人の練習風景

一つひとつの動きをより正確に体得してもらうために、マンツーマン指導も熱心に。腕や脚を上げる高さ、角度など、群舞としての美しさを追求する上でも、個の踊りが重要になってくる。

山形大学花笠サークル
「四面楚歌」からのメッセージ

さとうまさし

さとうまさし●人文学部4年。宮城県出身。西洋美術史を専攻し、イタリア人画家を研究。2018年8月イタリアへ留学。花笠サークル「四面楚歌」に所属し、県内外の活動にも参加。日伊友好協会の依頼で花笠踊りを指導。

さくまはるな

さくまはるな●人文学部4年。宮城県出身。花笠サークル「四面楚歌」メンバー。2019年2月、佐藤さんと共に花笠踊りの指導のためにイタリア・フィレンツェへ。初めての海外経験で深めた交流と見聞を生かして、地域貢献を目指す。

※内容や所属等は2019年当時のものです。

他の記事も読む