まなぶひと #17
上里有紀
小学生時代から地学や海洋学に興味
第一人者に学びポスター賞受賞。
2019.06.15
まなぶひと #17
上里有紀
2019.06.15
何がきっかけということもなく、気がつけば地学や海洋学への興味が強かったという上里有紀さん。高校選びも地学が勉強できるかどうかが基準だった。当然、大学選びも該当する大学の中から、在籍する先生方のプロフィールや研究内容を精査し、地元・沖縄から遠く離れた山形大学理学部を志望した。決め手は、北極や南極での海底掘削の経験を持ち、今も最前線で活動しているリチャード・ジョルダン教授の存在。ジョルダン先生の専門は微古生物学と海洋生物学で、珪藻化石の分析も研究テーマの一つ。学部生時代にジョルダン先生の授業で微化石を顕微鏡で見て以来、微化石の世界に興味が大きく傾いた。
ジョルダン先生の研究室に配属してからは、珪藻の一群であるProboscia(プロボスシア)属に特化した研究に勤しんでいる。珪藻とは、珪酸の殻を持った藻類の一種で、殻が化石として残ることから地層年代決定、その時代の環境の復元などに有効とされている。上里さんは、国際掘削プログラムで採取されたサンプルを取り寄せ、Proboscia属の1500万年前から現在までの化石を地道に観察し、これまで考えられていた以上に多様な形態の化石を発見した。その研究成果をドイツ・ベルリンで開催された「第25回国際珪藻シンポジウム」でポスター発表を行ったところ、見事学生ポスター発表賞(2位)を受賞した。この受賞によって、博士後期課程への進学の意志をより強固にした上里さんは、別の時代のProboscia属の観察を行い、新種の発見を目指す。
珪藻化石の研究者自体が少ない中、上里さんの指導教授はその第一人者であり、国際珪藻学会の会長でもあるという恵まれた研究環境。「観察できるサンプルはたくさんあるし、質問にはすぐに的確な指示やアドバイスがもらえます」と幸せそうな上里さん。2年に1度開催される「国際珪藻シンポジウム」、次回2020年の開催地は山形市。これを機に、一般には馴染みのない珪藻化石の世界に少しだけ想いを馳せてみよう。
うえざとゆうき●理工学研究科博士前期課程2年。沖縄県出身。リチャード・ジョルダン研究室で珪藻プロボスシア属を観察研究。第25回国際珪藻シンポジウムで学生ポスター発表賞を受賞。
※内容や所属等は2019年3月当時のものです。