まなぶひと #11
今俊基
山形大生まれ・新アルファ化米粉の
美味しさ、知名度アップが目標。
2018.07.30
まなぶひと #11
今俊基
2018.07.30
米粉100%パンの製造技術とそれを可能にした新アルファ化米粉の開発者として知られる西岡昭博教授の研究室では、アルファ化米粉の普及を目指してレシピコンテストを実施している。第3回となった2017年度は、社会貢献活動や学内外行事活動等での活躍が認められた個人・団体に贈られる米沢工業会賞を受賞。その学生実行委員会のメンバーとして今回2018年も活躍するのが今俊基さんで、第4回の開催に向け準備を進めている。
今さんは、大学院有機材料システム研究科の博士前期課程1年生。西岡研究室に所属し、セルロースに関する研究に取り組んでいる。研究分野は違っていても西岡先生が開発した新アルファ化米粉は、常に身近にあり馴染みのある存在。研究室内にはベーカリーオーブンや精米機など、工学部としては珍しい機材が実験装置として並んでいる。そんな環境もあって、今さんもアルファ化米粉の普及を目的に開催されている「アルファ化米粉レシピコンテスト」への関心は高く、有志として実行委員を買って出た。昨年に引き続き2018年もメンバーとして活動するほど熱心に取り組んでいる。
それまでのアルファ化米粉は、コメを炊いてすりつぶした後に水分を抜く工程が必要だったためにコストが高く、一般に普及するまでには至らなかった。その点、西岡先生が開発した製法は、プラスチック工学を応用し、加熱した臼で米粒を粉砕するだけでアルファ化米粉が製造できるという画期的なもの。食品業界では不可能と言われていた米粉100%パンの開発にも成功した。小麦アレルギーでパンやお菓子が食べられなかった人々にとっての福音となったほか、介護食や離乳食など、さまざまな食品への応用も期待されている。
そんなアルファ化米粉の存在や特性をより多くの人に知ってもらい、より美味しい食べ方を追求していきたいとの思いから、西岡研究室では香田智則先生の発案で2015年度から「アルファ化米粉レシピコンテスト」を開催している。年々応募数も増え、今さんが代表を務めた2017年度の第3回には、県内外から43作品の応募があり、書類審査で12作品が本選に進出。12月に山形県立米沢栄養大学の調理実習室を会場に本選が行われ、最優秀賞、優秀賞、優良賞などの各賞が決定した。また、コンテストに先駆けてアルファ化米粉の特徴を知ってもらうための料理教室も開催しており、2017年度は100%米粉パン作りを行った。
代表を務めた今さんの役割は、15人ほどの実行委員会メンバーとミーティングを重ねてスケジューリングやイベントの進め方などをまとめたり、先生方と打ち合わせを行ったり、コンテストが他大学や企業・団体から協力や協賛を得ていることから、外部との交渉なども担っている。さらに、応募者からの問い合わせや申し込みなどにも実行委員メンバーとともに対応にあたる。「普段、学生はさまざまな場面でお客様側の立場にありますが、このコンテスト運営では迎える側、もてなす側として色々な経験をすることができるので、今後に向けてプラスの経験になると思います」と、今さん。
第3回アルファ化米粉レシピコンテスト学生実行委員会は、アルファ化米粉の普及を図るために学生主体で取り組み、成果を上げた点が認められ、2017年度の「米沢工業会賞」を受賞。これが今年度の実行委員会メンバーのモチベーションになり、さらに盛り上げていこうと気運が高まっている。
取材に訪れた日、今さんはメンバーとともに今年の料理教室で作るレシピの検討のため「お湯で簡単!!米粉シチュー」の試作に取り組んでいた。2017年度のコンテストで優良賞になった作品で、お湯に溶けやすいというアルファ化米粉の特性を生かし、団子状にしたルーを食べる直前にお湯で溶かしながら具と混ぜて仕上げる、お弁当にもぴったりのレシピ。学生実行委員会には女子学生もいるが、この日参加できたのは男子学生のみ。途中でハプニングもあったものの、考案者のレシピをもとにシチューの試作を行った。学生実行委員会では、アルファ化米粉の特徴を知ってもらうためのレシピの検討と試作をさらに進めるという。このコンテストを通してアルファ化米粉の知名度アップだけでなく、工学部の研究の多様さ、おもしろさを高校生をはじめ広くアピールしていきたいと、今さんは第4回大会により高い目標を掲げている。
こんとしき●山形県出身。大学院有機材料システム研究科博士前期課程1年、有機材料システム専攻。2年連続で「アルファ化米粉レシピコンテスト」学生実行委員を務める。西岡研究室での自身の研究テーマはセルロース。
※内容や所属等は2018年当時のものです。