まなぶひと #33

大山喜久&佐藤麗水

勉強も学外活動も全力で。
コロナ禍を経て、山形の魅力を発信。

2022.07.15

勉強も学外活動も全力で。コロナ禍を経て、山形の魅力を発信。

山形市中心部で毎年8月に開催される「山形花笠まつり」は、県花の紅花をあしらった笠を手にした踊り手が舞う夏まつり。本学工学部高分子・有機材料工学科4年の大山喜久さんと佐藤麗水さんが「第60回ミス花笠」として2022年のまつりを盛り上げる。コロナ禍の影響で2020年は中止になり、2021年は会場をスタジアムに変更し規模を縮小。開催60回の節目を迎える2022年は、従来の目抜き通りでのパレードが3年ぶりに復活する。「ミス花笠の活動を通して、山形の魅力を全国や世界へ発信したい」と二人は張り切っている。

市中心部で3年ぶりに開催
「山形花笠まつり」を盛り上げる。

 山形花笠まつりは山形県で生まれ育った二人にとって、身近でありながら特別なもの。山形市出身の佐藤さんは小学校低学年から踊り手として参加し、大学1年生の時は「花笠サークル四面楚歌」のメンバーとして出場した。長年参加していたまつりが従来通り開催できない2年間を経験し、「山形花笠まつりの魅力をミス花笠として伝えたい」と立候補した。
 コロナ禍で2、3年生の時の授業の多くがオンライン配信になり、サークル活動は休止に。新庄市の実家で授業を受け、制限のある大学生活を余儀なくされた大山さんは「新しいことに挑戦したい、家族を喜ばせたい」と応募。姉の勧めも後押しになった。
 二人は選考会に備え、山形花笠まつりの歴史や特色を改めて勉強。踊りの唄は、最上川沿いの観光名所を紹介する歌詞になっている。唄は共通でも、踊り方は幾通りもある。例えば、ミス花笠が舞うのは最も伝統的な「正調花笠踊り(通称:女踊り)」で、優雅かつ華麗な動きが特徴。豪快に花笠を振り回す「笠回し系花笠踊り」、団体ごとの個性が光る「創作花笠踊り」などもある。調べれば調べるほど、奥深さに感銘を受けたという。
 最終選考会は県花笠協議会の審査員による面接。当日すぐに4人のミス花笠が決まり、衣装を着て文翔館で記念撮影。新聞社などの取材に応じた。

最終選考会を終え、ミス花笠の衣装に身を包んだ大山さん(写真左)と佐藤さん(写真右から2番目)は「うれしさと身が引き締まる思いがある。一緒にミス花笠になれて良かった」と笑顔を見せる。(写真提供:山形県花笠協議会)

アルバイトやボランティアで
社交性やコミュ力を磨く。

 まつり当日は例年、ミス花笠は山車に乗ってパレードを先導する。さらに最後尾では飛び入り参加者と一緒に踊る(2022年は飛び入りコーナー中止)。5月に就任し、本番に向けて週1回、工学部がある米沢市から山形市に通い、踊りの練習に励んでいる。衣装は他の踊り団体と比べて複雑な構造のため、着付けの練習もしている。
 ミス花笠として最後の舞台は、2023年初夏に青森県で開催される「東北絆まつり」だ。山形県を代表する観光大使の役目も担い、県内外でイベントがあれば出向き、観光や文化の魅力を伝える。
 大山さんはケーキ屋のアルバイトとNPOが主催するイベントの司会進行も担当し、人前で話す機会が多い。佐藤さんは演劇経験に加え、中学生の頃から山形市のボランティア団体に所属して落語を披露している。ともに備える社交性やコミュニケーション力を生かした活躍が期待されている。

工学部のある米沢で大学生活を送る2人。

航空機や米粉パンに活用
高分子の未知なる可能性を探る。

 大山さんと佐藤さんが在籍する工学部高分子・有機材料工学科は、国内でトップレベルの研究が評価されている。特に高分子の分野は著名な教授陣が名を連ね、「高分子を学びたい」と全国から学生が集まる。高分子は分子量の大きい分子で、身近なものではペットボトルの原料のプラスチックがある。
 高校の理系学科で学んだ大山さんは「手を動かして実験するのが向いている」と高分子・有機材料工学科を志望。大学3年生の夏から高橋研究室に所属し、金属に代わる素材としても注目されている炭素繊維複合材料を担当。炭素繊維複合材料は樹脂に炭素繊維を混ぜた軽量素材で耐性に優れ、航空機や車、産業用機器の素材に用いられている。身近なところでは、カメラボディーやラケットにもなっている。
 地道な実験の日々。配合を少しずつ変え、素材の強度の数値を測定する。「平均値が高くなれば、より頑丈なものが作れる。期待する数値が出て、可能性が見えた時はうれしい。いろいろな分野で使える素材というのが面白い」とやりがいを話す。

強度を測定するための引張試験機を準備する大山さん。

研究に使う試薬をスポイトで取って計る。本学は設備が整い研究に専念できる環境だ。

 佐藤さんは地元にある本学のオープンキャンパスに参加し、さまざまな工学部の研究室を見学。その中で、米粉をテーマにした研究の説明を受け「工学部なのに食べ物?」という意外性と、山形県特産の米に着目している点に興味を持ち受験した。
 大学3年生の夏から西岡・香田・矢野研究室に所属し、特殊なバイオマス素材を用いた米粉パンの研究をしている。佐藤さんが目指すのは型を使わず成形できる米粉100%のパンを作ること。通常、米粉100%の生地はどろどろとした液状のため、型に流し込まないと形状を保つのが困難だ。そこで特殊なバイオマス素材を添加し、生地の保水性や粘度を高め、型を使わずに成形する方法を実験している。小麦粉と米粉を配合していたものを米粉だけで仕上げられれば、米粉の利用率は上がる。「米の消費量は全国的に減少しているので、米どころ山形に貢献できる」と考える。

米粉100%の生地を丸く成形し、焼き上げたパンをオーブンから取り出す佐藤さん。

特殊なバイオマス素材を加えると保水性は上がる。配合量を少しずつ変え、水分量を記録する。

 工学部高分子・有機材料工学科は大学院進学者が約7割。大山さんも佐藤さんも大学院で研究を続ける予定だ。大山さんは環境問題を考えながら、さまざまな分野で使われる複合材料の強度向上を分析。研究や開発の分野での就職を目標にしている。佐藤さんは米どころの山形で米粉100%パンの開発を進める。山形の多彩な魅力を全国や世界に発信し、地域の活性化に携わる仕事を考えている。

おおやまきく

おおやまきく●工学部高分子・有機材料工学科4年。山形県新庄市出身。第60回ミス花笠。高橋研究室に所属し、航空機や車の素材になる炭素繊維複合材料について研究。

さとうれいみ

さとうれいみ●工学部高分子・有機材料工学科4年。山形県山形市出身。第60回ミス花笠。西岡・香田・矢野研究室に所属し、特殊なバイオマス素材を用いた米粉パンを研究。

※内容や所属等は2022年6月当時のものです。

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